【動画付】行政改革~構造改革などの流れと照らし合わせてみた2019年度大田区の決算についての奈須りえの評価

行政改革~構造改革などの流れと照らし合わせてみた2019年度大田区の決算についての奈須りえの評価 [parts:eNozsjJkhIPUZENDA6Nks3DDoCjzcmOTEB8TJjMTAyZjMwMmAyYEcHBwAAD0uggp]

 

第75号議案 令和元年度大田区一般会計歳入歳出決算
第76号議案 令和元年度大田区国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算
第77号議案 令和元年度大田区後期高齢者医療特別会計歳入歳出決算
第78号議案 令和元年度大田区介護保険特別会計歳入歳出決算

 
の認定に反対の立場から討論いたします。
 
決算は予算と違い、首長が監査の意見を付けて決算を議会に送付すれば、その時点で決算は成立したことになります。 使ってしまったものについて、議会がいい悪い言ったところで、予算で認めたのだから、という理屈かもしれません。
だからこそ、フェアな民主主義奈須りえは、区長へ政治的責任を問うという強い意味あいを込めて、本決算の認定に反対をいたします。
 
今回の討論は、多選を批判しながら、自ら多選自粛の区民との約束を破棄して再選した初めての決算です。
レームダックに陥ることを恐れるあまり放漫会計にならないよう警告の意も込め討論いたします。
 
初の民間区長に期待したものの、民間の民が区民ではなく、民間投資家だった流れを止めたいと願った区民の代表として、
 
・国政や都政に無批判に追従する松原区政、
・松原区政において加速した、民営化や企業利益の増大を経済効果とする税金の使い方の問題
・今期、多選自粛を破棄して首長という権力についたことによりさらに見えてきた弊害
 
などについて総括して、反対討論としたいと思います。
 
この間、行政分野が、行政改革、規制改革、構造改革、地方分権などという名目で変化を続けてきました。小泉構造改革からみても20年ほどが経過し、土光臨調行革から言えば、40年になろうとしています。
一貫して、行政分野の構造的な変化が求められ、官尊民卑ならぬ、官より民間が優れているという思想のもと、徹底した民尊官卑による民営化がすすめられ行政分野を民と言っても営利企業に開放してきました。
 
松原区長になってから、この民営化が加速し公共分野の意義について確認・議論することもなく、民営化の効果と弊害の検証も不十分なまま、安易な営利企業への市場開放が続けられてきました。区民が支払った税金や利用料・使用料の一部があらたな市場を獲得した営利企業の余剰利益・株主配当・投資利益に流れる事業・金額がどんどんと増えてきたのが、2007年からの松原区政の税金の流れです。
 
日本の税金は徴税の段階で格差是正の機能が低いことを厚生労働省自身が認めていますから、集めた税金を使う税の再分配により、低所得層に厚い税の支援を行わなければ広がる格差が是正されません。
ところが、松原区政は、民営化を加速させ、税の一部を富裕層である企業の株主利益に流し、格差の是正効果を弱め、その分格差を拡大してきたわけです。
 
 
私は10年くらい前から、こうした民営化が、人件費、物件費あわせ、経費削減効果が無いことを検証し、税の一部が投資利益にまわる上、低賃金労働、不安定雇用をまねく致命的な問題を抱えていることを指摘し続けてきました。
 
 民営化したことで、透明性も確保できなくなり、ノウハウも、提案書で示すことはできても、不安定な雇用では、実際にスキルを持った人を継続的に雇用することができる保証はなく、公務員のみなさんが蓄積してきたノウハウの維持・蓄積も非常に不安定です。
 
 そもそも地域独占事業は市場経済競争になじまないと指摘しましたが、当然経済競争で価格が下がるわけでもありませんでした。
こうした民営化の課題について指摘し続けてきましたが、それでも、松原区政は、そして大田区は、民営化を推進し続けてきました。
 
民でできることは、民で、というスローガンのような方針で民営化が進みましたが、
同じ人間がやることですから、できるできないでみれば、できないことはありません。 
 
公とは、民とは、の議論なしに民営化が進んだことで、営利と非営利の違いを理解し、意識する人が減り、あらゆる公共分野が、投資家の投資の対象として法改正、規制緩和されてきました。
その結果、公園まで民間投資家の投資の対象で、誰もが無料でいられるはずの公園で投資利益をあげる金儲けを積極的に推奨するのが今の大田区です。
 
また、学校法人など非営利法人の設立要件は、土地と建物は、自己所有です。ところが、学校設置認可行政である大田区は、大森の学校法人が、何平米の土地をいくらで売却し、何平米の建物を年いくらで、どういった条件でリースバックしているか知っていながら、認可をそのまま認めています。
 
大田区は、決算委員会での質疑に対し、認可行政としての責任問題についての言及をあえて避けて、責任の所在をあいまいにしましたが、学生や職員、他の非営利福祉法人への影響が心配です。
いま、大田区内の学校法人社会福祉法人などが運営する幼稚園や福祉施設は、各種の法改正と営利企業の教育福祉分野への参入で厳しい経営を強いられています。
区長や大田区が、所管行政として学校法人等の設置要件を守る責任を放棄することで、今後、大田区の非営利学校法人社会福祉法人が経営難に陥った場合に、乗っ取りに利用されないか心配しています。
 
こうした、営利企業の投資利益を拡大させてきた流れによる問題とともに、特に区長が再選した昨年度以降、あらたな問題が顕著になってきたと思います。
 
①     ひとつが、意思決定、合意形成、説明責任の手続きの形骸化に拍車がかかっている問題です。
 
2019年度第二回定例会の補正予算で、池上図書館移転による賃借ビル(床面積1,026㎡)の内装工事の債務負担行為(5億1,454万円)は、本来、予算計上、入札、議決を経なければならない事業ですが、協定を締結したことで内装工事は、駅ビル施主が依頼する事業者に行わせることになり補正予算の債務負担行為に計上しただけで、入札も契約議案の議決も行いませんでした。
 
第三回定例会の補正予算では、平和島公園水泳場施設改修工事基本計画策定委託事業者の選定方法を入札から、プロポーザルしていまうす。プールで使う夏季2か月間以外の活用方法を提案させるため、入札ではなく、プロポーザルにしたのです。10か月間プールを使うのは区民なのに、区民の要望はきかず、そこを使って収益を上げようとする事業者に提案させると大田区は判断しました。
誰をみて区政を執行しているのか、よくわかります。
 
入札は、競争することで安い価格で質の良いものを入手すること、そこに、公平性が担保されるために行っていますが、こうやって昨年度、議決や入札を省略し、既成事実化されて慣れてしまったのか、その後、コロナの特別定額給付金で区長の専決処分、当初予算計上せず防災システム導入を予備費から使うなど、議決を経ずに区長や行政組織だけで決定する案件が増えています。
 
田園調布せせらぎ公園の樹木を大量に伐採したのは、せせらぎ館の建設のためですが、利用方針を合意なく変更したことに住民は憤りを覚えるとともに、区政に落胆しています。
 
そもそもの一連の開発の発端は、雨の日に中止になってしまったグリーンフェスタで、雨の日のためのグリーフェスタ開催の場所が欲しくて、区長に要望したことで決まったと、要望した町会役員の方から直接うかがいました。他の町会役員も町会の広報誌にそう書いて地域に配布しています。そこで田園調布小学校出身の隈研吾さんに頼めばよいという話になり、連絡のつく方がいたので、隈研吾の設計も決まったと話されていました。
 
町会関係者のご提案もよいと思いますが、なぜ、町会の会員は知らされなかったのでしょう。大田区は、どうして町会役員の提案を区民の提案だと思ってしまったのでしょう。
 
ここにも意思決定、合意形成、説明責任の問題が見えてきます。
 
こうした手続きが省略されることで、税金の使途の正当性、価格の妥当性、選定の公平性、区民意見の反映、などに疑義が生じます。
 
②     もう一つが民間との力関係で、民間のほうが強くなってきていることです。
 
公務員は全体の奉仕者であるはずなのに、こうして、大田区は一部の人や事業者の要望で動くようになっています。しかし、それでも、大田区という公平中立な立場の公務員が、適正な選考や決定の下でおこなっているというのが、大田区の主張だと思います。
 
ところが、大田区はいつの間に、公民連携をうたい、包括連携協定を締結するようになっていて、指定管理者のように議決するわけでもないのに、企業と大田区とが協定を結んでパートナーのようになって、大田区の政策立案にかかわらせることを可能にしています。
 
今年、国家戦略特区法が改正され、企業の立案する事業を内閣総理大臣が認めると、データ基盤をみたり、公表したりが、行政のチェックや、国会や地方議会の議決前にできるようになりました。
 
これまで大田区と協定を結んでいた事業者たちは、より、深く、大田区の情報にアプローチし、政策立案に関われるようになります。
 
区長も行政のみなさんも私たち議会も、少し前までは、決めるのは、お金を出すのは大田区だから、企業より力があると思ってきたと思いますが、急激にその力関係が変わってきていると感じます。
 
そして、そのことを区長も職員のみなさんも、私たち議会も、うすうす感じているのではないでしょうか。
 
大田区では、特別定額給付金の給付を急ぐからと区長の専決処分で議決無しに決めた業者により行った事務処理が他区に比べ非常に遅く、特別定額給付金の支給は、民間でやるより、職員が入って行ったほうが速いことがあきらかになりました。
 
作業の人員配置などの契約内容が十分詰められていないのが原因ではないかと大田区に指摘したところ、契約は双方の合意なので、という意味のことを言われました
 
専決処分で契約を急げば、足元をみられて思うような契約内容にならなかったことは想像に難くありません。
 
受ける事業者の数が限られると、交渉の余地が狭くなり、力の強いはずのお金を払う側が弱くなってしまう良い事例だと思います。
 
最近では、各分野でビッグ5、7など、事業者の寡占が進んでいます。
 
保育でも、認証保育所で、こどもたちの受け入れ先の確保を大田区や都と条件に配合するのに、保護者が知らないのをいいことに知らんふりで、受け入れ先を確保する責任を果たそうとしていない事業者がいたことが明らかになっています。
 
この力関係を改善するためにも、民営化の在り方を変える、全体の奉仕者である公務員の直営比率をあげる、といった具体的な方策を早急に講じる必要があると思います。
 
 民間の力がさらに強くなると、価格も民間にコントロールされるようになるでしょう。
そのうち、クレームを言った区民は記録され、サービス提供しないようにされるのではないかと心配です。
 民間が行政の指導など、軽視するようになってきている、と感じるからです。
 
 大田区と民間事業者の関係以外にも、大田区と国、大田区と東京都など、不安な要因は増えこそすれ減りません。
 
 
 不合理な税制改革は、23区域の脆弱な人間関係や家族関係からみても、住民の需要を正しくとらえているとは言い難く問題があります。
 
しかし、一方で、こうした23区域をターゲットにしたといって良い税制改正で、23区は社会保障の責任主体でありながら、財源が減っているのに、東京都と23区は、財調算定において、区民の生活需要を踏まえた議論を行えているでしょうか。
 
2019年における大田区と東京都の財調算定における社会保障分野の交渉内容で目立ったのは、都の事務だった児童相談所事業を区の事務とすることでの、財調割合が0.1%区側に大きくなった部分だけでした。
 
0.1%しか増えないなど区側の主張が十分聞き入れられず、もともと強い都がさらに強くなったと感じます。
 
格差が拡大し、じわじわと低所得者層が増えてきていますが、そのための社会保障基盤の充実のための要望が極めて小さく、聞こえてくるのは蒲蒲線や蒲田駅前のまちづくりなどのインフラ整備ばかりです。
 
基礎自治体は社会保障の責任主体ですが、都からの55.1%は、インフラ整備のための算定が増えてきていると感じます。
 
先日、期の途中で東京都が収入額ではなく、基準財政需要額を減額したことによる特別区交付金の減額30億円が計上されました。これでは計画的な財政運営はできません。
 
他にも国の国保の診療報酬単価の算定ミスなど、無謬といわれてきた行政の信頼が壊れはじめ、無秩序が始まっているように感じます。
法治国家において秩序を亜盛るのは法令で、規制緩和で法令を廃止してきたのですから、当然だと思います。
自己責任、弱肉強食は私たちの人権を守ってきた法の支配が、規制緩和で失われてことによるのだと思います。
法による秩序の維持がむずかしくなったとき、人による支配や全体主義に陥ることを危惧します。
 
期の途中で、特別区交付金が大田区だけで30億円も減額されるような基準財政需要額の減額も問題ですが、日常から、都と区の協議において、住民福祉の基礎自治体としての交渉が十分行えていないことに問題があるのではないかと思います。
 
 特別区という特殊な財政構造もあり、経常収支比率の割合で適否を判断することは避けますが、経常収支比率が上がっていて、昨年が83.3%で今年はさらにあがって85.9%で、金額で、388億円くらいを自由に使えたことになっています。
 
多くの新規事業の使途をみると、多くの新企業が土木建設に使われています。
しかも、その後5回にわたって行われた補正予算で計上された金額のほとんどが、土木建設費でした。
インフラが立派になっても、直接的な区民生活の向上には、なりません。本当にこれで良いのでしょうか。
 
ただ最終補正で、乳幼児医療助成に84、96万円6千円増額していることには注目すべきだと思います。乳幼児医療をどうするかの議論がではじめていますが、それだけ、乳幼児医療で、なんとか健康を守ろうという暮らしぶりがみえてきますし、これを大田区が守っていることはとても大切だと思います。 
 
 財政構造の弾力性、健全性などをはかる財政指標の一つに実質収支比率があります。基金や公債などの影響もあり、一概には言えませんが、予算執行後の処理の仕方としてみると、大田区は、実質収支比率が非常に小さく昨年特別区平均で5・2%のところ、大田区は2.8%。今年はさらに2.2%と減らしています。
 
決算から3%の違いを計算すると、55億円になります。
 
たとえば、大田区が、最終補正で計上した
公共施設積立金10億円 
防災積立金10億円 
新空港線衝立金10億円 
羽田空港対策積立金2487万千円   
を積み立てなければ、実質収支比率は、他区平均と同じくらいになります。
 
 基金に積み立て財源確保しなければ、翌年に繰り越し、財政基金に繰り入れて、コロナのための医療や衛生にも、また、福祉や教育など社会保障財源にも使えたはずですが、大田区が最終補正でひっそりと色のついたお金にしたことが、実質収支比率の23区平均との比較で見えてきます。
 
最後に気になるのが、私たちの長い歴史的な経緯の中で、積み上げてきた文化や伝統や社会の構造を、新型コロナで、抜本的に変えようとしていることです。
 
しかし、これは、コロナ後に始まったわけれはなく、区長が積極的に進めてきた国家戦略特区の平成25年7月に行われた有識者等からの「集中ヒアリング」で取り上げられていることが少なくありません。
 
企業の投資利益を最大化するために制度から変えようとしているということです。
 
情報化、データベース化、遠隔教育、在宅医療、医療情報化、などは、言葉は違いますが、すでに、コロナのコの字も無い、2013年にすでに、新しい生活様式を示す具体的な要望となっていました。
しかもその中には、地方議会もまた規制改革の対象となっていることを私たち議会も知るべきだと思います。
 
外国投資のための経済政策である国家戦略特区は、制度の改廃権を企業利益の代弁者にあたえるしくみですが、今ある議会制民主主義まで、形骸化させようとしているということだからです。
 
これまで大田区が歩んできたみちが、決して区民のためではなかったことを総括し、変えてきた投資家利益それも外交投資家の利益のための区政からの転換と、区民のための区政に立ち返ることをもとめ反対討論といたします。