市場経済に福祉を委ねて起きている、やっぱり神の見えざる手は無かった(認可保育園の場合)

保育園を株式会社など民間にゆだねたことで、保育士の賃金がさがり、保育士のなり手が不足して問題になっていますが、保育園の定数が足りてくると同時に、定員割れの保育園が出始めています。

大田区では、4月4日現在、1453人の欠員が出ています。

私立11614、区立4532人、合わせて16146人の定員のうちの1割弱ですから、転出入などの移動も考えると、やむを得ない数字の範囲なのかと思います。 

しかし、欠員が多ければ、その分、公定価格と言われる補助金が入ってこないため、大田区は、民営化保育園に保育士を確保するための補助金を出すようになっています。

公立保育園は、欠員の多い少ないに関わらず、定められた定員に応じた保育士を配置していますが、民間保育園は、欠員が生じれば、その分収入が入らないので、保育士を雇い続けることができない、というわけです。

市場の経済競争で、価格が安くなり、質が良くなると始まった市場化=民営化ですが、

完全に市場に委ねれば、定員を確保できなければ、廃業する保育園が出るかもしれず、
保育を安定的に提供することができません。

保育サービスを市場経済に委ねることに、無理があったということだと思います。

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欠員に補助金を出すくらいなら、公共が保育を担った方が
安定的なサービスと雇用と費用負担で、保育を担えるのではないでしょうか。

結果として、保育士と言う仕事も、定員の増減に大きく左右される不安定な仕事に
なってしまっています。

公立と私立を比べてみると、

・かかる経費はほぼ同じ。
・私立園の保育士お賃金は公務員に比べて低い。
・そのため、職員が定着しにくい、勤続年数の浅い保育士になりがち。
・余剰利益が株主利益になるが、公立保育園で仮に予算が余ったら
 翌年以降の区民サービスに使われる
・公立の保育園は、土地も建物も、購入すれば区民の財産ですが
 企業が担う民営化園の場合は、株主の資産。廃業すれば、余剰資産は株主で分配

これまで、大田区のような都市部では、子育て世代が転入してきて、人口が増えていましたが
ここにきて地価があがり、若い世代が家を買う地域が、都市部から周辺部に変わってきています。

2021年1月1日に固定資産税評価額が大幅に引き上げられました。

コロナを理由に、住宅地では1年間評価額が据え置かれ、実際の課税への影響は今年からですが、3年で段階的に引き上げられる商業地の事業者は、敏感にそれを感じ取り、一足早く値上げに踏み切った可能性があります。

昨年4月から企業物価指数が上がりましたが、固定資産税の評価替えの影響もあったのではないでしょうか。

昨年は、企業の収益が過去最高でしたが、一足先に地価の引き上げを察知できたのも理由の一つ、という見方はできないでしょうか。

昨年の公示地価は下がっていましたから、固定資産税の大幅な引き上げの評価替えは、極めて政治的な判断だと思います。

市場経済と、市場経済利益を優先する政治に私たちの暮らしが大きく左右される時代になり、
将来の見通しが立ちにくい時代に入っています。

人口推計の見直しも、5年に1度から、毎年に変わりました。

将来を見通せない社会は、私たちの暮らしをさらに不安定にさせます。

市場経済と言う神の見えざる手が無いことは、明らかだったはずなのに、公共という私たちの大切な社会基盤を、市場経済に委ねたことは、多くの国民住民に不利益をもたらしたのではないでしょうか。

市場化、民営化により、マーケットを拡大する事ができ、利益を確保した、一部の投資家を除いては。