財務事務次官の「バラマキ合戦のような政策論」発言に想う国や地方の財政の「出ずるを量って入るを制す:量出制入」

昨年雑誌に財務次官が「バラマキ合戦のとような政策論」と発言したことが話題になりました。

財務事務次官「バラマキ合戦のような政策論」と月刊誌で批判 | 新型コロナウイルス | NHKニュース

講演の内容は、現在の財政分析で、財源論なのですが、「出を量って入るを制す」と発言しているのを聴いて、行政の国会批判、やわらかく言えば、国民への説得?だと感じました。

以前、財務省のHPに掲載されていたコラムを想いだしたからです。

今は、削除されてしまっていますが、議会質問で取り上げたので覚えています。

量出制入を取り上げた時の議会質問↓

【地方分権・三位一体の改革で起きたこと】保育園待機児の本当の理由と問題点 – 大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から! (goo.ne.jp)

財務省のコラム 

「市場経済では、企業であれば企業の売上げ、家計であれば賃金収入、 というように、収入がまず決まり、その収入にもとづいて支出を決める。 というのも、企業の売上げは生産物市場、賃金収入は労働市場というように、市場が収入を決めてしまうからである。

そのため市場経済は、「量入制出りょうにゅうせいしゅつ(入るを量って出ずるを制す)の原則」で運営されている。  

  ところが、財政では収入が市場によって決められるわけではない。

 財政は市場メカニズムによってではなく、政治過程で決定されるからである。そのため必要な支出を決めてから、それを賄う収入を決めることになる。政治過程で収入を決めるには、必要な支出が決まらない限り、収入の決めようがないからである。したがって、財政は「量出制入の原則」で運営されることになる。

当時、この発言を取り上げたニュースには、財務大臣の了解を得ていると書いてありますから、予算を編成した一員が、自ら編成した予算と議決した国会が作り上げてきた現状を指摘(批判)しているという風にもとれます。

政治過程で必要な支出をまず決め、その財源をどうするか政治が決める。
これが、財務省にあったコラムの説明です。

1】政治が、欲しいと言いながら、その財源を国民に求めることができない。
2】国民もサービスを享受しているのに、その負担を避けていて、
  税の対GDP割合は諸外国に比べて非常に低い=18.5%(この数字の根拠を現在財務省に確認中です)

結果、税負担出来ないから、(過剰な)国債発行になっているではないか、、、(良くないのではないか)

というお話だったと理解しました。

政治過程で必要を決めたら、その負担を国民・住民がそれを負担するのが大前提、という原則はその通りだと思います。

しかし、どれくらいの安心や利便性や快適性を、いくらで負担するか、と言う説明責任を国や自治体は十分行ってきていません。

国民が欲しいと言ったではないか、と言える状況を今の政治はつくれていないと思います。

説明責任を行政が果たしていないのに、欲しいと言ったから払えというのは無理があると思います。

 

説明は、社会保障費が原因で国債発行が増えたように説明していましたが、
国債発行は、建設国債が原則です。

社会保障負担が大きくなるのに、国債発行の説明責任を果たさず、見えないように建設国債で将来世代への借金を増やしてきたというのが

1990年前後以降の日本の構図だと思います。

1990年くらいから、日本の鉄道が地下に入ったり、乗り入れたり、新線ができたり、再開発が行われたり、ということが始まっていきます。

バブル崩壊前後1990年ごろから、国債発行が、景気の悪い時だけでなく好景気でも発行されるようになるのも、こうした利便性や快適性の下で進められてきた開発と無縁とは言えないでしょう。

これらすべてが、負担の程度とあわせて考え、真に必要かどうかの合意形成が行われてきたでしょうか。

 

一方で、低い国民負担率ですが、ここには、隠れ負担があります

【1】医療費の負担

医療費の負担は、私費扱いで国民負担率に入りません。
1割りから3割負担になり、3割負担の方が増えるなどしています。
国民負担率に相当する負担ですが、統計上入っていません。

【2】介護のサービスを受けた支払い

介護保険を使った特養やデイサービスなどの施設使用料やヘルパー代も
国民負担率にはカウントされていません。
特養は、公立だと国民負担率に入りますが、
民営化されて私立になると国民負担率から除外されます。

採用している制度で、国民負担率に入るかどうかが分かれますが、
国民が負担している事実に変わりはありません。

 

【3】民営化された国鉄などの鉄道、郵政
【4】公のプールや駐車場などの施設で指定管理者制度を採用している場合の利用料金

民営化により、財政の外=私費扱いになっててきた負担は他にもあります。
かつては、歳入に計上されていた負担です。

【5】病院、施設の食費、給食費

かつて、病院の食費は公費負担でしたが、私費になりました。
こういう負担も国民負担率に相当する負担だと思いますが
今は、私費扱いです。

学校の給食費も日本では、私費扱いですが、国によっては公費負担にしています。

国民負担率を海外と比較しますが、

●所得も違い
●食費や住居費などの負担も異なり
●行っている政策も違います

低い所得、高い家賃、高い食費、教育費を私費で負担する国で
税率が高くなれば、公費と私費の負担で生活のゆとりはなくなるでしょう。

単純に海外との国民負担率での比較が乱暴だということがお分かりいただけると嬉しいです。

 

これから折に触れて

何を所得とするか
どれくらいの安心、安全、快適、、、をどのくらいの負担で、の合意形成
民営化=市場化の影響
所得水準の低下

などについてもふれたいと思います。