【議会質問】大田区議会第一回定例会において、待機児問題の原因について質問しました。

特に都心部に顕著な保育園の待機児問題はなぜ起きているのか、その構造について解明してみました。ほとんど忘れてしまった地方分権、三位一体の改革が、こういうところに波及しています。質問持ち時間20分間ですので、およその流れを理解していただけると嬉しいです。

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フェアな民主主義 奈須りえです。

【カラー刷り、写真満載、大田区の予算概要】

カラー刷りで挿絵や写真をふんだんに使っている平成28年度予算案の概要をみながら、税金の使い方が大きく変わってきていることを実感しています。


【相変わらずの待機児、大田区は1800人】

認可保育園申請者4300人に対し、今年も1800人が不承諾だということが明らかになりました。

今年の大田区予算編成における4つの重点課題のひとつは「少子高齢化の進行など人口構成の変化への対応」で、その中に子育て、教育、健康、福祉、医療の充実と書かれてはいますが、具体的な保育施策は、民間建物(土地)を一括借り上げした事業所内保育所開設支援にとどまっています。

平成24年の第四回定例会で待機児の問題について質問したときに、大田区は財政と土地の不足を理由にしていました。その後、3年が経過し、大田区も、待機児対策に取り組んできていますが、それでも待機児は解消しません。
認証保育所定員1850人ほか保育ママなど、多様な運営主体の民間保育施設があるから最終的には100人程度になるということですが、だったらいいと言うことでしょうか。

そこでうかがいます。

今年の大田区の待機児の問題ですが、原因は何でしょうか。財政とは税収が少ない問題でしょうか。それとも、使い道の優先順位の問題でしょうか。いったいいくらあれば、大田区の待機児は解消されるでしょうか。

【忘却の彼方?地方分権・三位一体改革】

 最近すっかり耳にしなくなった「地方分権」ですが、私は、地方分権は、保育園の待機児の問題と密接な関係にあると考えています。地方分権を理由に行われた三位一体改革により、保育が国から大田区の責任にかわったからです。
地方分権は「地方にできることは地方に」という理念の下、国の関与を縮小し、地方の権限・責任を拡大するため「国庫補助負担金改革」「税源移譲」「地方交付税の見直し」の3つを一体として行う三位一体の改革とセットで進められました。

【国から地方へ3兆円の税収が移動】

納税者が国へ納める国税を減らし、都道府県や区市町村に納める地方税を増やすことで、国から地方へ税源を移す税源移譲により、国から地方へ、3兆円の税源移譲が実現しました。

三位一体の改革の税源移譲は、大田区の歳入構造を変え、保育のために国からおりてきていた国庫負担金の代わりに、自由に使うことのできる特別区民税の歳入が増えました。

【平成19年に国と地方の大きな財政構造変化】

特に、松原区長が初当選された平成19年の影響は大きく、個人住民税所得割が都道府県4%、市区町村6%の一律10%と定率化と定率化され大田区分は6%になり、都区財政調整制度における23区の割合が52%から55%に引き上げられました。大田区の歳入は前年にくらべ特別区民税で33億1千万円、財政調整交付金で100億6千万円増収になっています。

地方分権とは直接関係はありませんが、平成23年には、年金から個人住民税を天引きする年金特徴がはじまり、扶養控除廃止が行われ、所得税・住民税ともに区民の負担が増えました。平成26年には消費税が8%に引き上げられ、20億円の負担増になっています。

【保育が大田区の責任になったとたん、大田区の待機児対策は安上がりの認証保育所に】

保育が自治事務化したこともあり、区民の負担は大きくなりましたが、財源と権限が大田区になって以降の待機児解消のほとんどを区の負担の少ない認証保育所で解消してきています。大田区の「小泉政権の時に三位一体の改革があり、私立保育園については補助金が入ってきているが公立の保育園については一般財源化され見えなくなって保育料以外のものは区が負担しているという見方となる」という発言に理由があるのではないかと思います。
平成15年に330人だった認証保育所の定員は、平成28年度予算案では1850人です。

【地方の不作為を擁護する国の待機児基準変更】

国は三位一体の改革で保育が区市町村の責任になってから、保育園の待機児の数の定義を変えてきていて、認可保育園に入れなかった人の数ではなく、認証保育所・小規模保育所・保育ママで対応した人は待機児と計算しないようになりました。

【保育の自己責任化】

保育は憲法に定められる義務ではありませんが、義務教育の小中学校に例えてみると何が起きているのか見えてくると思いますが、大田区立の小中学校に入ろうとしても定員がいっぱいで入れず、わたくし立の小中学校に通わされているようなものではないでしょうか。

認可保育所に入れず、認証保育所に通うことになって区民が負担する保育料は定員1850人で月6万円の保育用で計算すると概算で年13億円にもおよびます。しかし、認可保育所と小規模保育所以外の保育料は私費扱いでこの13億円は大田区の歳入には入りません。

保育という社会保障が自己責任化されたということです。

【生じたいくつもの不公平】

そればかりでなく、三位一体改革以降、待機児を民営化や民間委託で解消してきたことで、区民の間には、認証保育所と認可保育園の保育料負担の差や、地域によって違う入りやすさの違う不公平、民間事業者が保育事業を担うようになったことでの保育士の低賃金や不安定な雇用、園庭基準など保育環境の低下といった問題が生じています。

【地方分権で成長優先から生活重視は実現したか】

地方分権について、平成5年当時、全国知事会、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、などが国に「地方分権の推進に関する意見書」を出しています。

「国内では、経済成長が所得水準の向上をもたらしたものの、多くの国民は、それを実感できず、真の豊かさを求めようとしている。このため、成長優先の政策から生活重視の政策への転換が行われつつある。生活重視となれば、生活に身近な地方公共団体の果たす役割への期待が高まるのは当然であろう。さらに、中央集権的な行政の結果、首都圏への一極集中、地方における過疎化、地域経済の空洞化などの課題が生じており、このためにも 、地方公共団体が、迅速・機敏に、きめ細かに、しかも自立的・総合的に行動し、生活の向上と魅力ある地域づくりに邁進できるような権能と条件を備えてゆくべきである。」

それでは、地方分権で成長優先の政策から生活重視の政策への転換はなしえたといえるでしょうか。
保育が自治事務になり、住民税、財政調整交付金、など平成19年で大田区は133億円の増収。消費税の増収分は20億円。ほかにも扶養控除の一部廃止など、区民から見れば、三位一体改革後の税制改正などに伴い負担は大きくなっています。各種控除の住民税の課税標準額がかわってきたため、保育料や国保料、介護保険料などの負担もそれに伴い大きくなっています。

こうした保育や社会保障のための財源は、生活に身近な地方公共団体の果たす役割への期待にこたえられているでしょうか。

そこでうかがいます。

 

三位一体の改革で一般財源化された財政を理由に待機児問題を認可外保育所で解消してきたことで生じている区民間の不公平や保育士の処遇などの問題について大田区はどう評価していますか?その課題や問題意識についておこたえください。

 【増える個人の税負担と減る企業負担】

平成19年以降の歳入における区民の税負担は一貫して大きくなっています。一方、企業収益、内部留保は過去最高と報じられていますが、法人税は競争力を理由に引き下げられ続けています。

大田区における法人住民税と固定資産税を原資とした財政調整交付金も、ようやくリーマンショックの落ち込みから回復傾向にあると思ったら法人住民税の国税化で国に吸い上げられるなど、大田区の財政には十分に還元されず、相対的に区民の負担ばかりが大きくなるかたちです。

大田区は、平成28年度予算についてその編成過程を公表しています。それによれば、当初要求額、2605億円に対し、計画財政部長査定と区長査定の二度の査定を通じ、予算案が2574億円になったと書かれています。

【量出制入=政治が決める「必要な支出」「それを賄う収入」】

財務省のHPに次のような解説を見つけました。
「市場経済では、企業であれば企業の売上げ、家計であれば賃金収入、 というように、収入がまず決まり、その収入にもとづいて支出を決める。 というのも、企業の売上げは生産物市場、賃金収入は労働市場というように、市場が収入を決めてしまうからである。そのため市場経済は、「量入制出りょうにゅうせいしゅつ(出るを量って入るを制す)の原則」で運営されている。

ところが、財政では収入が市場によって決められるわけではない。財政は市場メカニズムによってではなく、政治過程で決定されるからである。そのため必要な支出を決めてから、それを賄う収入を決めることになる。政治過程で収入を決めるには、必要な支出が決まらない限り、収入の決めようがないからである。したがって、財政は「量出制入の原則」で運営されることになる。」」

【大田区の予算に不要な支出は無いか?羽田空港跡地・オリンピック・観光・イベント・・・】

 それでは、この、2574億円があれば、大田区政に必要な支出は満たされているということでしょうか。不要な支出は含まれていないでしょうか。

大田区議会が撤去決議までした羽田空港の沖合移転により生じた羽田空港の跡地は、区民の要望する緑地でも緩衝帯でもない単なる開発になってしまっていましたが、総開発費見積もり500億円のための調査費1792万円は、当初予算要求額より多い査定です。

今年もオリンピックや観光などを理由に、イベントにも莫大な費用を投じていますが、空の日のイベントをやめるだけで施設使用料の引き上げを止めることができるでしょう。

【深刻な社会状況】

イベントは楽しくて元気になりますが、社会状況は深刻です。

貧困の要因の一つは雇用の流動化で、非正規の従業員割合は37.5%、女性の非正規割合は56.7%にもなっています。
相対的貧困率も一人親世帯で62%という数字があります。日本の子どもの6人に1人は相対的貧困状態にあることが問題になっていますが、大田区の2013年度の就学援助認定率が26.57%という数字から、大田区にも貧困の問題があるのではないかということがわかります。奨学金の受給者は全学生のうち大学で52.5%にも及び、延滞者は33万人にもおよびます。
残念ながら、大田区民の貧困や就労率などのデータが無いため、国で起きていることがよそ事のようになってこうしたイベントに予算が使われているとしたら非常に残念です。

国の経済動向で区政を進め、三位一体の改革で自主財源が増えて以降、にぎわいだイベントだという事業に予算が増えてきていますが、地方分権なのですから小泉改革以降大田区民に起きている子どもの貧困はじめ相対的貧困や就労状況など生活状況の変化を把握し、そのための政策を講じ予算投入すべきではないでしょうかオリンピックや開発やイベントが目立つ予算編成で大田区民の生活課題は解決できるでしょうか。

【地方分権で減るはずの国の財政規模も増える】

 しかも、国と地方の負担割合が変わると説明を受けましたが、区市町村に財源が委譲されれば国の負担が減るはずですが、財政規模は、国も地方も区民の支払う税金の負担増で大きくなっています。

そこでうかがいます。

税負担が大きくなるなど、こうした背景における、社会保障、特に保育についての大田区の責任について大田区はどう認識していますか。

格差拡大や子どもの貧困という課題もふまえおこたえください。

 

【それでも増やす保育料、施設使用料、利用料、さらにインフラの上乗せ計画!

いま、大田区は保育料、施設使用料、利用料の引き上げを検討しています。

また、すでに大田区施設整備計画を作っているにも関わらず、大田区公共施設適正配置方針を作ろうとしています。

しかも、平成23年3月に策定した「大田区都市計画マスタープラン」を大震災の発生やオリンピックやパラリンピックの開催が決定し、空港跡地や空港臨海部のまちづくりが進展するなど、区の内外を取り巻く情勢が大きく変化したからという理由で、「仮称大田としづくりビジョン」を策定しようとしています。
大田区は基本構想の下、長期的な視野にたって各種の計画を策定し、実行してきました。

ところが、計画があるのにまたそこに計画をつくろうとしたり、方針を上乗せしようとしたりすれば、計画体系はめちゃくちゃになり、計画とは言えなくなってしまいます。
議会制民主主義において、行政の作る計画は予算承認における根拠となる非常に重要なものです。税金は計画に沿って投入されるもので、利益の最大化が目的の企業や短期で収益をあげる投資家のように、常に新しいことをする必要はないのです。

現在、策定中の施設整備の方針案には、現在の施設整備計画にはない、児童館売却、余剰容積率活用など、区民の財産を投資目的で使う不動産屋のような視点が盛り込まれています。建て替えの際にプレハブリースで何億円も投じ、一方で、ニーズが変わったから児童館という区民の財産を売ることに直結するでしょうか。

【区民の財産も売却?貸付?運用?の大田区不動産株式会社】

数年の期間で収支をはかり収益を上げるのは、企業の視点ですが、大田区の土地や建物は区民の財産で、過去から将来まで大田区民が所有する財産を、大きな意味での管理者である私たち大田区民が、一時の収支のために、安易に売却したり、足りない財源の穴埋めにされたのでは子どもや孫の世代に申し訳ありません。

【気になる配偶者所得控除と女性の就労】

気になるのは、いま国が配偶者所得控除に手を付けようとしていることです。その是非については別の機会に譲りますが、配偶者所得控除が廃止、あるいは、別の形になれば、今以上に女性が働くようになり、保育環境を整える必要がでてきます。そうした需要もふまえれば、行政財産を普通財産にしてゆうゆうくらぶを貸し付けたり、計画を変更して児童館を売ったりするほど行政ニーズに余裕があると言えるでしょうか。 一時のイベントであるオリンピックや羽田空港の跡地開発を理由にさらなるインフラ整備を増やそうとする大幅な計画変更をして大丈夫でしょうか。

【コンサル任せの政策策定】

わざわざ、今ある計画を莫大な費用をコンサルに支払い策定するのですから、いずれも莫大な財政負担を伴うものになるのでしょう。
いったい、誰が、いくらを、どう負担することを想定しているのでしょうか。

【予算規模が増えたらそれに連動して福祉以外の予算も増える】

2003年からの款別の歳出決算の数字を拾い出してみました。福祉費は2003年から20010年まではおよそ45%前後、2011年に子ども手当を支給して以降は52%前後、おしなべて約50%程度のところを推移していました。非常に興味深かったのは、決算規模1,852億の2003年度も2,407億円の2015年もこの約50%だったということです。

金額が増えたら、それに伴い、ほぼ各予算が相対的に増えています。予算が二倍になったら、福祉費も二倍になるといった増え方です。

この間、住民税が定率化され、保育が国から大田区の責任になるから、消費税8%も社会保障のため、とすべて福祉費に使われると説明されてきましたが、福祉だけでなく、ほかの予算も相対的に増えたということです。

保健衛生費のためでも産業経済費のためでもよかったのかもしれません。その中の一番金額が大きかった福祉をで代表して保育や子どものためと言ってきたということなのでしょう。

【規模の大きな土木(道路)も都市整備費(箱もの・開発)も福祉に連動して増える】

中でも、金額の大きな土木費や都市整備費が予算規模に連動して増え、特に都市整備費は多少はあるものの構成割合が3%から6%になっているのが気になっています。

この間、道路や建物にたくさんお金をかけるようになったということです。高度成長期に整備したインフラの維持更新が課題になっているなか、新たなインフラ整備をしている場合かと言ってきましたが、数字が示した形です。
しかも、国と都の支出金もこの間増え続け、平成28年度予算では、623億円になりました。

確かに生活保護費などへの国庫負担金も増えていますが、国庫支出金は平成15年の決算額255億円に対し、今年の予算は467億円。都支出金は86億円156億円になりました。生活保護費は平成15年決算で231億円から平成28年度予算は355億円ですから、ほかの要因がありそうです。

【増える国や都頼みの事業で自主財源はオリンピックやイベントに】

地方分権によって、自治体の裁量が大きくなると言われてきましたが、自主財源でイベントなどを増やし、、また、国庫支出金や都支出金頼みの事業に税金を投入していることが大田区の予算を増やしてきたということではないでしょうか。

国の補助金や都の補助金を引っ張ってくることが優秀な「官僚」のような印象もありますが、地方分権になっても結局は国や東京都に誘導され、補助金だのみの事業に集中し、日本の財政負担を大きくしてきたのではないでしょうか。

【シンクタンクに丸投げで税金が流れる先は?】

特に、最近の大田区は、政策とは到底言えない「スローガン的なフレーズや方向性だけを示し、計画や方針策定は民間のシンクタンクや専門家などに委託するようになっています。株式会社のシンクタンクは、株主の利益になるように政策をつくります。投資家の利益のために作られているアベノミクスは、ただでさえ、投資利益を大きくする事業を次々とおこなってきていますが、金融系シンクタンクにインフラや施設の整備計画をゆだねて、投資利益を優先すればそのつけは、区民の負担にまわされることになります。

そこでうかがいます。

大田区は、こうした計画策定に際し、区民の将来負担について、きちんと管理し、人口・雇用・所得などを予測したうえで税収を見込み、事業計画をたてているでしょうか。丸投げ同然ではなく職員と区民を主体に計画を策定すべきです。