規制緩和における抵抗勢力に対し、内閣総理大臣のリーダーシップで規制緩和を実験的に「特区」進めて、経済を活性化させようというのが「国家戦略特区」のうたい文句である。

政府が同時にどんなことを進めようとしているかと言えば、「秘密保全法」によって、国と国民の安全を守るために、国が「特定秘密」を指定して、情報について、誰が知ったり調べたりして良いか決めると言っている。

この二つは、経済と情報の問題なので、一見関係ないように見えるけれど、ちょっと視点をかえみると実は同じことが起きようとしているのがわかる。

規制は国民生活を守るためで、知る権利は国民が持つ憲法に保障されている権利だ。

ところが、これら二つの法律により、私たち国民が、今、持っている、「規制により守られてきた権利」や「政府の情報を知る権利」が失われようとしている。

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そもそも、なぜ「規制」は作られたのだろうか。規制緩和における抵抗勢力は、「官僚」と名指しで言われたりしているが、「規制」によって守られてきたのは「官僚の利益」(だけ?)ではない。

「規制」は、社会秩序の維持、生命の安全、環境の保全、消費者の保護等国民の生活を守るという行政目的のために作られている。規制が作られてきたときの既得権は「国民」にあると考えるべきである。

たとえば、車のスピードが制限されている。この制限速度は、スピードを出して、早く目的地に着きたいと思う「国民」の自由を制限しているかもしれないが、それによって、歩行者(「国民」)や他のドライバー(「国民」)の安全が守られている。

たとえば、保険診療と自由診療の併用(「混合診療」)は認められていない。これによって、新たな医薬品等を使用する際に、全額自己負担となるために、結果 として新しい医療を使いたいと願う人達から見れば、費用負担が大きく医療の使用が制限されることになっているかもしれない。

しかし、だからと言って、混合診療が拡大すれば、未承認の医薬品等の使用による安全性、高額な負担が可能な人しか受けられない医療の拡大による公平性や、結果としての医療保険会計の悪化といった問題がでてくる。

規制緩和により、規制がなくなれば、規制により守られていた権利は失われ、医療保険制度は経済の自由競争に大きく影響されることになる。

国民健康保険制度における混合診療などの規制が、国民が等しく安価に医療を受けられる「権利」を守っているわけだ。

【参考】ちなみに、こうしたことから、以前より混合診療の問題は議論されており、何を混合診療として認めるかは、平成16年12月15日に「「混合診療」問題に係る基本的合意」 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/dl/h1216-1a.pdf  として決着済みであるというのが、現時点での政府の見解となっている。
ここでは、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」という国民皆保険制度の理念が基本になっている。

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秘密保護法は、国と国民の安全を守るために、国が「特定秘密」を指定して、どの情報について、誰が知ったり調べたりして良いか決めるとする法律だ。

憲法の条文に「知る権利」という言葉はないものの、憲法21条1項で保障される人権の一つと解されている。

情報公開法は、その第1条の目的に、

この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

と、国民の知る権利が、国民主権という憲法に基づいていることを明記している。

国民主権に基づき認められてきた国民の知る権利が、「秘密保護法」成立により、失われ、知る権利は、国によって制限されることになる。

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