以前に私の講演を聴いてくださった方から、秋田県で国家戦略特区の提案について報道があったが、どう対応したらいいかとご連絡をいただいた。

【秋田】
秋田県時事通信 8月7日(木)16時58分配信
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201408/2014080700684

高齢者ビジネスの課税軽減=人口減少対策特区創設求める―

秋田県は7日、政府が地域限定で規制緩和を行う国家戦略特区について、人口減少に歯止めをかける取り組みを進める特区を県内に創設するよう求める提案をまとめた。高齢化率が高い地域特性を生かしてシニアビジネスを振興し、雇用の場を確保するため、特区内の関連企業に対する課税軽減を要望。第3子以降の保育料無償化といった多子世帯への支援強化なども盛り込んだ。内容を精査し、今月中に政府に申請する。 同県は人口減少率、高齢化率のいずれも47都道府県で最も高い。特区でこうした取り組みを進め、人口減少対策として有効なモデルを構築したい考えだ。

そこで、秋田県のHPをみて8月7日に新聞報道周辺の記事を探したが、国家戦略特区に関るお知らせは無かった。県の命運を分ける重要な制度が新聞報道でし か行われず、県として情報発信できていないのはなぜか。県がマスコミに情報提供したなら問題だし、そうでないならどこが情報発信したのか。

秋田県HP新着情報
http://www.pref.akita.lg.jp/www/news/0000000000000/ACL03000.html

HP内から拾えた国家戦略特区に関る情報は1年以上前の議会答弁など。

1年前の議会質問と答弁
http://gikai.pref.akita.lg.jp/read_detail_daihyo.phtml?division=%96%7B%89%EF%8Bc&name=%95%BD%90%AC%82Q%82T%94N%81%40%91%E6%82P%89%F1%92%E8%97%E1%89%EF&name_isn=718&level2=069&qperson=%82%B1%82%BE%82%DC%8F%CB%8Eq%81i6%8C%8E12%93%FA%81j

この新聞報道というあまりにも少ない情報から、秋田県が行う国家戦略特区の提案について判断するのは非常に難しい。

しかし、その中から気になる部分を赤字にして抜き出してみた。

①高齢化率が高い地域特性を生かしてシニアビジネスを振興し雇用の場を確保
②特区内の関連企業に対する課税軽減
第3子以降の保育料無償化
今月中に政府に申請する
人口減少対策

①~③から

県が行おうとしているのは下記の3つ。
①高齢化率が高い地域特性を生かしてシニアビジネスを振興
②特区内の関連企業に対する課税軽減
③第3子以降の保育料無償化

①のシニアビジネス振興とは非常にあいまいな表現。
他の特区の提案や介護保険制度改正に伴う要支援の地域ボランティア組織などを活用した地域支援事業への移行を合わせて考えると、高齢者を最低賃金以下で働 かせるしくみを作るのではないかと私は推測してしまう。(介護保険要支援でこれまで一定の単価で行ってきた事業をボランティアで行えば、その部分雇用の数 は増えるかもしれないが・・・)

②は特区内の企業への減税だが「関連企業」という言いかたが気になる。
私には、都市部で規制緩和をうける大企業の工場や支社への優遇策のように聞こえる。
都市部で行う経済政策と地方に必要な経済政策は必ずしも一致しないが、都市部で優遇策を受ける地方の「関連企業」にも同様に規制緩和をするということだろうか。
都市部に「良いこと」を地方も押しつけられることにはならないか。法改正であれば、日本全体への影響を検証する場面もあろうが、区域限定されれば、区域内のメリットだけを考える。
特区の矛盾がここに見える。
(いずれにしても、どのような企業に何税を減税するのか書かれていなければ判断のしようがないが) 


③は一見悪くないが、詳細に点検すると優先順位が気になる。
いま、深刻な少子化だ。
子どもを持たない人が多い。持っても一人。という状況、しかも逼迫した財源下で行うべきが 第三子の保育料無料化だろうか。なぜ、第一子にしないのか。
2人産んで3人目を迷う人はそれなりの所得がある人で、産みたくても二の足を踏む状況の改善、一人産んで二人目を迷っている人への支援を優先すべきではないか。
格差社会、税の再配分がうまくいっていない、と言われているが、ジニ係数を更に悪化させる政策につながる可能性もある。

そもそも、特区による規制緩和は、経済政策の視点で行うから、最終的に減税して福祉への財源が減っても売上が上がり雇用が流動化されれば効果が有るとして評価される。
しかも、各特区がおもいおもいに規制緩和し効果を上げれば、全国でその制度が導入される。

ところが、都市部、都心部にとって良い政策が必ずしも地方都市に効果が有るとは限らないし、ある区域のある産業の生き残りのための規制緩和が別の区域の産業を衰退させることもある。

産業競争力強化法は大企業への個別の優遇策を認めるものだが、特区とセットで大企業を優遇して規制緩和を行った結果、競争相手の企業が競争力を失うことも考えられるし、関係企業が疲弊するかもしれない。

基本的に特区による規制緩和は、東京都の税制優遇策に「多国籍企業」との合同事業を条件づけられているように「多国籍企業=グローバル企業」のための政策だ。

大企業が都市部に集中することで疲弊してきた地方都市が再生する政策を「国家戦略特区」の規制緩和を使って提案するのは容易ではない。

政策に関る報道は、政策の是非を判断するに足る情報が十分提供されないことが多い。

①課題をどこに置き
②何をすることで
②どのような効果が見込めるか
③それによって、誰に、どんなメリットがあるのか

これがあいまいだ。

アベノミクス第三の矢の本命、国家戦略特区は経済政策。

経済政策を講じても置かれている立場により影響(効果)は必ずしも一致しない。

しかも、仮に企業の競争力が増しても、安定した雇用が提供され、税収が確保されなければ住民に還元されないが、その保証はどこにもない。