ごみ量は減るのに清掃工場はなぜ減らない=ごみ量と施設のかい離 第19回とことん討論会第三分科会

ごみは減るのに清掃工場は減らない。
そこで、問題になるのがごみ量に比べて「過剰」な清掃工場の焼却能力や数だ。

今年のとことん討論会では、一般廃棄物処理基本計画の改定にあたっての中間報告が出来あがったため、一部事務組合の担当課長をお呼びし、計画をご説明いただきその後質疑など懇談を行った。

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ごみ問題に関る多くの区民は、

●ごみ量に比べて23区の焼却能力(清掃工場の数)が「過剰」で
●23区各区がごみ削減に取り組んでいるにも関わらず、その努力に比べて清掃工場の数は減らないのはどうしてなのか

と思っている。

平成12に比べ23区全体のごみ量は20%も減った。

一般廃棄物処理基本計画改定委員会中間報告  (平成26年3月)より


にもかかわらず清掃工場の数は、平成12年度に17だった清掃工場は現在21にまで増えている。

*平成12年というのは、23区の分権化に伴いそれまで東京都が行っていたごみ処理を区が行うことになった年。
当初は23区の中で、清掃工場のある区とない区があったため共同でしょりすることにして、平成17年を目途に各区で処理することとしていたため、清掃工場の建設が進められたことも清掃工場が増えた背景にはある。
その後、工場のある区もない区も相互に強調連携して中間処理体制(ごみの焼却処理のこと)を確保することが確認され、平成15年11月に当分の間共同処理が望ましいと方針転換された。

そして、多くの区民は、その原因は、ごみ量予測にあると思っている。

この部分は東京23区の清掃工場の管理運営をしている一部事務組合も認めている。

下図の青い線がごみ量計画。それに対し、実績ごみ量は黄色線、たとえば平成24年度の計画量294万tに対し、実績ごみ量は283万tなので11万t「過剰」に予測したことになる。

一般廃棄物処理基本計画改定委員会中間報告  (平成26年3月)

【ごみ量と清掃工場の焼却能力や数とのかい離】

そこで、先日のとことん討論会でも、ごみ量と焼却能力のかい離はなぜ生じるのかが主な論点となった。

特に問題なのが23区の見込みと一部事務組合の見込みにかい離が生じていることだ。

ごみ量は、法律に基づき「発生量」「処理量」の見込みを計画することになっているが、そこには、関係自治体と調和を保つように努めなさいとある。(廃掃法第6条)

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

一組は、はたして23区と調和を保つよう努力で来ていると言えるのか。

過去に、かい離を生じながら、今回の策定に当たり、一組のごみ量予測のどこに問題がありかい離が生じたか分析できているか。

一方で、ごみ量はへっているのだが、ごみの内訳をみると減っている部分とそうでない部分に分かれる。

事業概要 平成26年版より

上記の表で平成12⇒平成25年のごみ量を比較すると、

ごみ量合計 3,501,053→2,816,809  20%減
区集     2,412,337→1,870,022   22%減
持ち込み  1,088,716→946,787    14%減

持ち込みごみと呼ばれる「23区内で発生した事業系一般廃棄物」 のの減り方が少ない。
区民の努力に比べ、事業者の努力が足りないということかたちだ。

この事業系一般廃棄物については、中に含まれる紙ごみの資源化が課題であると指摘されている。

一方で、事業系ごみの23区と市部の単価が異なる。
23区の15.5円は市部に比べ安い。

[参照]
東京23区のごみ問題を考える
全国縦断 『事業系一般廃棄物搬入手数料の動向』月刊廃棄物の調査から《関東地域》  (2013年5月23日)より

神奈川県に比べ東京都内の手数料が高い一方で、23区だけが突出して1.5円と安くなっている。

東京23区のごみ問題を考える
全国縦断 『事業系一般廃棄物搬入手数料の動向』月刊廃棄物の調査から《関東地域》  (2013年5月23日)より 引用

2013年4月

23区 15.5円/Kg (2013年10月~)

八王子市 25円/Kg
府中市 42円/Kg
調布市 49円/Kg(2013年4月:49円/Kg→35円/Kg)
西東京市 38円/Kg
小平市 24円/Kg
三鷹市 35円/Kg (2013年5月:20円/Kg→35円/Kg)
日野市 42円/Kg
立川市 30円/Kg
東村山市 35円/Kg
多摩市 25円/Kg
武蔵野市 40円/Kg (2013年4月:20円/Kg→40円/Kg)
青梅市 30円/Kg
国分寺市 35円/Kg
小金井市 55円/Kg
東久留米市 38円/Kg
昭島市 30円/Kg
横浜市 13円/Kg
川崎市 12円/Kg
相模原市 18円/Kg
藤沢市 20円/Kg
横須賀市 15円/Kg
平塚市 22円/Kg (2015年4月:未定)
茅ヶ崎市 20円/Kg
大和市 20円/Kg
厚木市 20円/Kg (2013年4月:20円/Kg→25円/Kg)
小田原市 25円/Kg
鎌倉市 13円/Kg(2014年度中:未定
秦野市 19円/Kg
座間市 25円/Kg
海老名市 25円/Kg
伊勢原市 19円/Kg

23区の事業系一般廃棄物持ち込み単価が安いため、市部の事業系ごみが23区に持ちこまれている可能性は無いのか。

この場合、

●なぜ安い単価を維持できるのか。価格は適正か。
●適正な価格だとすると23区外からの不法投入に対しチェック体制は万全か。
という視点での検証が必要になる。

この、ごみ量と施設整備計画のかい離からこんなことを考えている。

現在、23区では、様々な暮らしや命に関るサービスが不足しているし、今後の制度改正により不足が見込まれるサービスはたくさんある。

保育園、特別養護老人ホームの待機児や待機者。障がいではサービス量を決める相談支援従事者が足りないし、生活保護のケースワーカーも足りていない。
難病が障害に認定され、難病の対象者は増える救われる対象が広がる一方、自己負担を伴うようになるため不安を抱えている人も少なくない。

来年から介護保険の要支援は無くなり、地域のボランティアが支えることになる。
国はサービス抑制では無いと言っているが、介護に対する考え方が「大転換」することだけは間違いない。

虐待(子どもや女性など)、一人親、子どもの貧困などの問題がおきているが課題は放置されている。

それらは、予算が足りないからなのか、優先度が低いのか。いずれにせよ、日本で一番財政の豊かな東京23区で積み残され放置され続けている。

一方で、このごみはどうだろうか。

杉並のごみ戦争などの例外をのぞいて、「予算が不足したので今年は5万t 待機ごみ が出ました」などと聞いたことがあるだろうか。

ごみは、100%どころか一組が良く言う「処理する責任があるから余裕をもって(多めに?)ごみ量を見積もる」にも関わらず、保育園も特別養護老人ホームも、「待機者でるのは心配だから入所定員は余裕をもって(多めに)整備」したらどんなに良いだろう。

この違いは一体何なのだろうか。

待機ごみを出せと言う意味ではない。

政治の優先順位ということを明確に意志表示する必要があるということで、ごみ処理には明確に意思表示してきたということだ。

経済の風上が製造なら、流通、販売、消費、そして最後の風下にごみ処理(廃棄物処理)がある。

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[広域化という論点でのとことん討論会での発表]
2012.8.22とことん討論会 分科会 奈須りえ [parts:eNozsjJkhAOz1FQjkyTTlBIj02Rnj/TQqrBs+/Lc/JRU2/yCxMLSVCYTQzMmY0MjJgMmCChJrSjRzyjJzQGyK0sKchIrU4sA