大田区の保育料はいま引き上げるべきか
過去最高規模の予算を積極予算と評価する大田区ですが、施設使用料は引き上げ、そのうえ、保育料まで引き上げようとしています。負担の公平などともっともらしいことを言っていますが、優先順位の低い課題にばら撒いて、足りなくなったから、とれるところからとろう、という風にしか見えません。なぜ、いま、保育料を引き上げてはいけないのでしょう。
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フェアな民主主義 奈須りえです。
28-11誰もが安心して保育園へ預けられる保育料を求める陳情
28-13保育料の値上げをせず、保育料の負担軽減を求める陳情
28-18保育料の値上げをしないようお願いする陳情
の委員長報告に反対、陳情を採択すべきという立場から討論します。
私たちは、公共とは何か、税金はどこから集め誰のために使うのかという基本的な問題をあらためて確認しなければならないときにきていると考えています。
保育料検討会では、
⑴ 公平性
⑵ 受益と負担の関係性
⑶ 少子化対策
⑷ 子どもの貧困対策
⑸ 保育の質の確保
の5つの視点で保育料、学童保育料の検討が行われました。
しかし、そもそも、労働の分配の不公平が顕著な現状において、そこを度外視し、認可保育園、それも区立の認可保育園の保育料をコストとして取り上げ、そのコストを受益者である「保護者」がどれだけ負担すべきか、という検討に大きな違和感を覚えます。
少し前に大きく取り上げられていたフランスの経済学者ピケティは、富の再分配に問題があると指摘しています。
今回の議会を通じ私は、労働分配がすでに大きく不公平になってしまっている現状において、大田区という自治体は何をすべきか、という問題について形を変えながら繰り返し指摘させていただいています。
構造改革により、雇用は流動化し、低賃金化し、投資家は、生産手段の一つとして労働をとらえ、政治は、そのコストの最小化のための制度改正を続けています。
結果、大企業は過去最高の収益を記録し、一部の富裕層以外の多くの働く者は、大きく所得を減らしてきました。
そもそも、働いて得られる対価において不公平な社会になっているのです。
その不公平な状況があるにも関わらず、政治はさらに、個人への課税を強化し、企業、それも大企業、グローバル企業への減税や財政的優遇措置を取り続けています。
俯瞰的にみれば、より小さくて弱い個人から税金をあつめ、より大きくて強い法人に集めた税金を還元してきているわけです。格差が拡大するのも当然です。
国は、骨太方針2015において、今後3年間、子育て、介護、障がい、医療、年金など社会保障の伸びを年0.5兆円抑制すると言っていますから、今年度以降の予算にさらにそれが大きく表れてくることでしょう。
こうした状況にあって、大田区は何をすべきでしょうか。
私は、地方分権で区市町村に整理された社会保障の責任主体として、子育てや介護、障がい、教育などにきちんと取り組むことが大田区の責任で、まず第一にすべきは、サービスの供給量の確保だと考えています。
ところが、サービス供給量が十分でないなか、大田区はじめ都市部で顕著な待機児の問題は、地方分権と三位一体改革により、私立の保育所、中でも東京都では、保育料の高い認証保育所での整備へと誘導されてきました。
認可保育所に入れない区民は、ここでまた、私費で高額な保育料負担をしなければなりません。
保育園全体のサービス供給量は未だ足りず、認可保育所と認証保育所の保育料負担の差額の不公平も解消されていません。
大田区は、今回の保育料検討会のまとめ案で、
「今後、よりよい保育環境を提供していくためには、大田区として、引き続き必要な財源確保を図っていかなければならない。併せて、保護者方々に広く一定の負担を求めることは やむを得ない ものと考える」
としています。
本当に保護者に負担を求めることが「やむを得ない」でしょうか。
自給自足が成立しえない都市のくらしは、莫大な資産を持つ恵まれた人以外は、労働を貨幣価値に変えることにより生きていかなければなりません。
働くことで賃金をえる人と、
働いてもらうことで配当を得る人。
そして、その双方から税金を集める政府。
いったい誰が働くことの必要経費ともいえる保育の負担をすべきでしょうか。
働いても十分な賃金を以前にくらべもらえなくなっている働く人が、より税金をしはらい、それでもたりなくて、自分で保育料を負担しているのがいまの構図です。
しかも、保育サービスを利用している家庭と利用していない家庭における公平性を言い始めれば、公共は成立しなくなります。
その二者の対立構造で保育料を考えるべきでしょうか。
持っている人も、もたらざるものも、等しく社会の、地域の構成員として、基本的人権を保障されたくらしを確保するためのしくみをつくる。それが大田区の役割ではないでしょうか。
いま、公共サービスは、民営化により、経済活動における消費の意味合いを強めています。
仮に、それを成り立たせるのが大田区長の政策であれば、十分な所得があってこそであることも指摘しておきます。
現在の労働環境、徴税、保育のしくみ、負担のありかた、どれをとっても大きな問題があり、陳情者の要望は当然であり、採択すべきです。