大田区要綱行政「区民が知らない要綱が300以上!」=透明性・説明責任・意思決定の課題=

自治体が議決を経ない「要綱」によって運営されている部分が多いことを問題視した表現に「要綱行政」という言葉があります。

大田区においても、①どんな要綱がいくつあるのか区民はわからない。②何を条例で決め、何を要綱で決めているのか、規則、要領、区長決定なども含め、その線引きがあいまい。といった問題について指摘してきました。

その結果、大田区でも平成21年から要綱をHPで掲載するようになっています。

HP掲載2年が過ぎ、当初HPに掲載されなかった部分も含め、その後の要綱がどのように区民に公開されているのか調査しました。

調査は次のように行いました。

①現在HPに掲載されていない要綱、および、2009年にHPに掲載して以降、改正された要綱の一覧を総務課に資料請求し情報提供を受ける。

②①の情報提供のあった後、全ての要綱が網羅されているか確認したところ、一部提示できていない要綱があることが判明し、再度資料提供を受ける。

③再度確認したところ、総務課では把握していないと言われる。

④最終的に、大田区が持っている全ての要綱を知ることができなかったため「情報公開」制度に基づき「開示請求」する。

⑤非開示条例の非開示決定通知とともに、現在、大田区のHPに掲載されていない要綱の一覧(総数347)が「情報提供」される。

今回の要綱の調査を通じ、次のような問題があると感じています。

(1)情報公開請求しなければ要綱を把握することが出来なかった。大田区総務課自身が、要綱の実態を把握していなかった。

現在公開している要綱数 728 に対し、公開できないとした要綱の内訳は以下の通り。

■公開できない(7)
■既に廃止または廃止予定(23)
■改正作業中または改正予定(35)
■登録申請中・登録準備中(282)
□ 総数 (347)

これ以外に、①で情報提供されたものもあり、現在、区民に公開されていない要綱がいかに数多くあるかがお分かりいただけると思います。
これら要綱の全てが区民生活に深くかかわっているかと言えば、事務処理を示しているなど必ずしもそうでないものもありますが、だからと言って、これらを公開しなくてよいことにはなりません。

(2)非公開の要綱がいくつかあった。

また、今回、非開示決定された要綱の要綱名および理由は次の通りです。
非公開について区民の皆様はどのように思われるでしょうか。

・入札指名業者数(基準)
・大田区競争入札参加資格者指名停止基準
・土地評価事務処理要領
・欠勤等を繰り返す職員の取り扱い基準について
・自動車運転事故職員懲戒に関する基準
・自動車運転事故職員懲戒等に関する基準実施細目
・暴行・傷害事件に関わる懲戒処分の量刑について

【理由】大田区情報公開条例第9条第2項第6号に該当
 事務事業の内容や性質上、開示することにより、当該事務事業の公正適切な実施または運営を著しく困難にするおそれがあるため

(3)新設、改正の要綱についての議会報告に統一基準がみられない。

これらについて、福島大学行政学の今井照先生にお話ししたところ、要綱をきちんと把握している自治体は少ないと話されていました。
把握できていなかったことを肯定することはできませんが、確かに、調査には、多大な労力と時間がかかったことと思います。

今回、こうして、大田区が、要綱について、各部にわたり大規模な調査を行ったことは、評価に値すると言えるでしょう。

これを機に、廃止・改正など整理すべき要綱は整理し、一日も早く大田区のHPに掲載し、区民がいつでも見られる状況を作ることが必要であると考えます。