公共インフラ(建物・道路・公園)整備危機の時代 鎌倉市の整備方針と大田区大森LUZの場合

鎌倉市の友人から、建物や道路・公園、下水道など公共インフラの整備方針がでてパブリックコメントを募集しているがどうかんがえたら良いかと相談をうけた。

以前に大田区に議会質問した時に大田区が「民間の力をかりて更新し、需要のなくなった施設については売却する」といっていたのを思い出した。

おかれている状況は鎌倉市も大田区も基本的に同じ。
今後、大田区も同様の提案をしてくることは十分に考えられる。鎌倉市固有の問題ではなく、全国的に、起きてくる問題なので共有したい。

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公の建物や道路、公園、橋といった公共施設のおかれている状況は深刻だ。

高度経済成長期に集中的に整備した施設が、今後、一気に更新(建て替えなど)の時期をむかえ、財政負担が一時期に集中するからだ。

しかも、これから人口が減少していくのでそれを支える財源は減っていく。

これまでのように、予算のゆるす範囲で「無計画に」整備しているわけにはいかない。

どのくらい無計画か、大田区の一年間の区道の整備面積を区道総面積で割った結果をみて  気付いた。

なんと530年という数字が出てきたからだ。
こんなペースで整備して適正な管理ができるはずがない。

しかも、交通量の多いバス道路などの整備は比較的頻繁に定期的に4、5年程度で改修しているというから、それ以外の道路の計画的な補修となるとほとんど見込めない。

生活道路などの補修は区民から穴があいたなどの要望がきてはじめて対応するという。

そこで、大田区に公共施設整備の考え方質問したところ、大田区は、

①複合化
②PFIによる改築・改修、定期借地権による民間貸付などの公民連携手法による区の財政負担の軽減
③活用予定がなければ売却
④区が事業主体となるのではなく、民間事業者による取り組みを支援

とこたえている。

ところがこれは、現在、鎌倉市がパブリックコメントを求めている考え方とほぼ同じだ。

◆鎌倉市の考え方◆
【背景】
高度経済成長期に集中して作られた施設が一気に老朽化し更新しなければならないが、予算もないし、自治体自ら借金もできない。【方針】
①そこで複合化・集約化
②施設と機能の分離や公設公営にこだわらない公共サービスの提供
③用途転換、遊休施設の売却これだと問題がみえないが、

①複合化というと私たちは、あちこちにある公共施設、たとえば、図書館、児童館、保育園、出張所などを一つの建物に集約するとイメージするが、民間商業施設と一体化しても複合化になる。駅近くの一等地に営利=商業施設などの機能も入るかもしれない。②施設と機能の分離というとよくわからないが、土地は自治体所有にして民間が活用するということだ。
民間が固定資産税をはらわずに公共用地に建物をたてたり道路をつくったり下水道を整備したりできるという意味。③で、いらない施設(土地)は売るといっている。

たとえば、大田区では、

大森駅前の大田区所有の一等地を民間が50年の定期借地権でリートというしくみで運用している。
大田区民の土地が投資対象になっていうということだ。

大田区の場合、財政が厳しいのでというのでは無く、目的はにぎわいの創出だったが、論点は、どこにメリットがあるかだろう。大田区では保育園や特別養護老人ホームが足りないが整備が進まない。その土地が無いといっていながら、駅前の一等地を行政目的ではなく商業ビルとして活用させそのほんの一部(2割以下)を大田区民のために図書館と出張所、集会室などに使用しているという状況だ。

リートで大田区の土地を運用させることで、大田区にどんなメリットがあるのか見えてこない。

事業に関る情報は民間の企業秘密ということで、十分な情報もないまま事業者選考などが進められ、大森駅にLUZ(ラズ)という雑居ビルが誕生している。

大田区大森地域庁舎や地域から要望のあった保育園などの公共サービスをいれるより、にぎわいの創出になったかさえ不明だ。

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今後、自治体では維持管理できないほど「過剰」になった公共インフラをどう整備していくかは簡単なことではない。しかし、安易に民間に整備させれば「安くて」「使い勝手が良く」なるかといえば、必ずしもそうはならない。

少なくともいえるのは、公共施設が投資対象になったとき、これまで、自治体で行っていた整備では不要だった「投資利益」が計上され、それを私たちは「税金」か「利用料(下水道なら下水料金)」で負担することになるということだ。

リーマンショック以降、金融マネーは投資先を求めている。

アベノミクスの実態も、投資先をどう作るかだ。

私たちの共有の財産である道路、公園、橋などを、いったいどのくらいの量と質と利便性をいくらの負担で維持し、それを誰が担うのが一番良いか合意形成をしなければならない。