地方分権の流れの中、国から権限と財源が下りてきた最も大きな事業が「保育」だったと言っていいかと思います。
そして、その影響を最も多く受けているのが23区ではないでしょうか。
結果として23区は三位一体改革により、
保育料の安く設置基準の厳しい認可保育所と高くて設置基準のゆるい認証保育所に加え、保育ママなど認可外保育所により待機児解消を行い、保育サービス提供における不公平をさらに拡大させました。
23区は、固定資産税、住民税、法人住民税などの財源が豊かで、日本で最も財政が豊かな自治体のひとつです。国は23区と東京都を合算 で、国の財政的支援を必要としない「不交付団体」として位置づけています。にもかかわらず、待機児をたくさんだしているのが23区ですが、その豊かな財源 はどこに使われてしまっているのでしょうか。
そのそも、財政構造が、他自治体と大きく変わり、
都区財政調整制度というしくみのなかで、
基礎的自治体の財源である「固定資産税」「法人住民税」「特別土地保有税」の45%を東京都が「大都市事務費」として使っている。
にもかかわらず、権限の委譲の際に、東京都と23区間の財源の移譲の問題が何も論じられてきませんでした。
三位一体改革により国からの補助金は1兆300億円削減されましたが、平成16年度予算に計上された地方向け補助金の総額は、前年度比400億円増の、 20兆4,100億円(一般会計予算 17.6兆円、特別会計予算2.8兆円)となっている。社会保障関係の補助金の伸びによって、削減効果が打ち消されたためである。(「地方財政の三位一体改革の概要と現状」 国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 449 (Mar.31.2004) 西森美津子さんより引用 )
平成16年から運営費補助が、平成18年から施設建設費補助が一般財源化しています。
たとえば、東京都はオリンピック招致のための積立金を平成18年から3年間にわたり、毎年1000億円ずつ4年間、4000億円積み立てました。
平成16年度から導入された三位一体改革による財源の移譲が始まったのが平成16年で、施設設置補助が基礎的自治体の負担になったのが平成18年です。
東京都が、23区の保育に補助すべき費用をオリンピック費用に積み立てた、とは言いませんが、1000億円を積み立てる理屈は、23区と密接にかかわります。
オリンピックは「市(city)」が招致するもので「都」が招致するのはおかしいのですが、札幌市が招致した一方で、東京では、町田市が手をあげたり、基 礎的自治体=市として位置づけられている大田区(ちなみに大田区の英語表記は ota city)が手を挙げるということはありません。
にもかかわらず、東京都なのは、過去に、東京が市だったからでしょう。
そのながれで、23区は長い間、東京都の内部団体として位置づけられ、ようやく2000年、平成12年に基礎的自治体として位置付けられました。
その名残が、都区財政調整制度で、だから、基礎的自治体固有の税を東京都が徴収し、東京都が23区に配分しているのです。
東京都がオリンピックに手を挙げられたのは、過去に東京市だったから、とするなら、その費用は、東京都の財源で支出すべき費用ではないはずです。
ところが、一方で、財政調整の45%には、オリンピック招致費用は含まれているでしょうか。
東京都は1000億円という莫大な金額をいとも簡単に4年もの間積み立てたわけですが、その財源はどこからきたのでしょうか。
東京都が徴収する23区の「固定資産税」「法人住民税」「特別土地保有税」の45%は、上下水道、消防、その他の事務費用として使われますが、その明細が無いことで東京都と23区間には議論が残っています。
三位一体改革により、保育が基礎的自治体の事務として移譲され、基礎的自治体の役割そのものが大きく変わりながら、この基礎的自治体の財源の約1/2を占める割合についての議論は少なくとも大田区では行われたと聞いていません。
(*平成19年から、三位一体改革の影響も加味し、23区分は、53%から55%に2%あげられています。 【2013年2月24日加筆】)
23区には解決できていない課題がたくさんあります。保育園待機児、特別養護老人ホーム、障害施策・・・。
45%の中に23区の保育はじめとしたこれらの事業に投入されるべき費用は含まれていないのでしょうか。