(仮称)勝海舟記念館の展示資料2870万円。目的と違う使途で、郷土博物館資料収集積立基金を取り崩すことの是非。

補正予算に、勝海舟記念館の展示資料購入費として2870万円が計上されました。建物を整備することになっているし、そろそ展示物も買ったら良いんじゃない。ご遺族から譲り受けられるようだし、、、。という感じかもしれませんが、奈須りえはこんな風に考え、反対しました。

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第89号議案「平成28年度大田区一般会計補正予算(第一次)」について反対の立場から討論いたします。

補正予算に計上されている鳳凰閣の展示史料購入費2870万円の財源は、特定目的基金、「郷土博物館資料収得積立基金」繰入金です。

地方自治法第241条により、普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、「特定の目的」のために財産を維持し、資金を積み立て、又は定額の資金を運用するための基金を設けることができます。

なかでも特定目的基金は、特定の目的のために設置されるもので、当該目的の遂行のため以外には処分(取崩し)できません。
基金の処分は一部の処分と全部の処分があり、全部の処分は基金の廃止となるため、条例を廃止して処分することになります。

今回の補正予算計上について、買うこと及びその内容ではなく、財源として、

 

1. 特定目的基金の取り崩しは適正か。

2. 基金を残すことが妥当か

という二点から討論いたします。

 

「郷土博物館資料収得積立基金」は「大田区積立基金条例」に定められています。

今回、補正予算で大田区は、この郷土博物館資料取得積立基金を取り崩し(仮称)勝海舟記念館に展示する資料を購入しようとしています。

郷土博物館は「郷土博物館条例」という施設設置条例で定められている大田区の施設です。

第一条の設置の目的に、
大田区内を中心とする人文科学系資料を主として収集し、保管し、及び展示して、区民の利用に供し、その教養、学術及び文化の発展に寄与するため、大田区立郷土博物館を次の通り設置するとして、南馬込5丁目11番13号とその位置を定めています。

しかし、(仮称)勝海舟記念館は、2015年に教育委員会から観光・国際都市部に事業移管され施設整備活用方針は示されましたが、その位置づけは明確になっていません。

郷土博物館資料収得積立基金は、平成9年に郷土資料博物館の資料収集のためにという区民の遺志による寄付を原資に大田区が設置した基金です。今回の使途は、仮称勝海舟記念館の資料で、郷土博物館とは異なります。

議案質疑において、目的の異なる基金の取り崩しが可能な理由についてうかがいましたが、そもそも大田区が、基金の目的に従い取り崩そうという姿勢が希薄であることが判明しています。

仮称勝海舟記念館は、条例どころか施設設置の目的も明確になっていません。仮に、郷土博物館の基金を使って仮称勝海舟記念館の基金を取り崩すのであれば、少なくとも、仮称勝海舟記念館の施設の位置づけ、郷土資料館との関係などを明確にしたうえで取り崩すべきです。

勝海舟も大田区にゆかりの人で似ているから、大丈夫だろうというのは個人的な解釈であり、法令に従い区政を運営する大田区は区民と約束した基金の特定目的に従うべきです。

これを形骸化させれば、特定目的基金は財政調整基金(使途の制限がない基金)となんら変わりなくなってしまいます。

一方で大田区は、今後の郷土博物館の資料収集に関わる計画も方針もなく、また、基金積み立ての計画も無いにも関わらず、残金20万円の基金を廃止せず残しています。

大田区は基金の取り崩しは、100万円以上の資料を購入するときと答弁しており、20万円の基金残高では基金を取り崩すこともできません。

基金積立計画もまた資料購入計画も無い郷土博物館資料取得基金残額20万円を残すことの意義は無く、80万円以上を積み立て、必要な資料購入に備える、あるいは、いったん廃止し、将来必要になった際に基金を設置すると言った措置が必要です。

安易な取り崩しは、財政規律を乱し、行政規範を形骸化させるため、賛成しかねます。