待機児童数にカウントしないのに、認証保育所が廃園の時の入園先は自己責任の大田区 ご都合主義の待機児童対策

いま、私は、ある認証保育所に入所している保護者から、突然の廃園の通知に、来年からの入所先が無いのではないかという不安の声をいただいています。
どうしてこのようなことがおきているのでしょうか。


*調査し、事実確認して訂正しています。

保育方針や長時間保育などの違いから認証保育所を望む方もいらっしゃると思いますが、多くの認証保育所入所者は、認可に入ることができずに、認証に入ることを余儀なくされています。

当初は認可保育園に入れなければ待機児童数にカウントされていましたが、待機児童問題が深刻になったら、東京都が2001年から「認証保育所」という国の認可基準外の民間事業者(株式会社や社会福祉法人など)が運営する保育所を作りました。認証保育所に入れれば、待機児童とカウントしないことになっています。

その後、待機児童は、国の民営化策に基づく補助金による誘導(民間事業者で待機児を解消すると補助金が給付される)により、民間事業者による認証保育所と認可保育園の増設で解消されてきました。

一方で、認可保育園、認証保育所、幼稚園の預かり保育などにより、働きながら子育てをする場の確保は、その数だけ見ればほぼ満たされる状況になってきていて、認証保育所の廃園や、認可保育園への移行が始まっています。

今、私は、ある大田区の認証保育所が、9月に入ってから突然来年3月末をもって「経営難」のため廃園する。4月以降の保育先は、自分で確保してほしい、と言われ困ったご家族から相談を受けています。

大田区にきいたところ、大田区もこの件を知ったのは今年の8月で、通常は、入園先を確保するなどしてから廃園の通知をしているが、今回のように、翌年度から廃園するというのは(経営難=保育士の確保ができない:大田区より補足説明による廃業の1事例以外)初めてなので、驚いているそうです。

大田区からよく説明を聞いたところ、認証保育所の廃園は、所管である東京都が審査会において、在園児の廃園後の入所先の確保を「在園児報告書」で確認しなければ認められないのだそうです。

事業者が、そのことを説明せず、保護者に自分で行き先を探すよう説明していることが混乱を招く要因の一つだと判明しました。

そこで、大田区には、保護者と「在園児が入所先を確保できていないのに、廃園されることが無いよう、保護者の状況を都に逐次報告すること」を約束していただきました。

一方で、今回、都内で同じ系列の保育園が同時に6園(大田区、新宿区(×3園=○2園2020年度末+1園2021年度末)、(×練馬区)豊島区、品川区)廃園するそうです。

そこで、他区の状況を確認しているところですが、待機児童の状況も大きく影響しているように感じています。

この系列の事業者は、6園も廃園することからもわかるように比較的大きな事業者で、保育事業から撤退するわけではなく、認可保育園へと移行しているようです。

理由は経営難だそうですが、認可園の方が利益率が高く、少しでも定員割れがあって利益率が低くなっている施設は廃業して、利益率を上げたいというのが「本音のところ」ではないでしょうか。

保育という生きるに欠かせない児童福祉を、民間事業者の金儲けに解放した、民営化=営利化の問題だと思います。

今回の突然の廃園を認めれば、今後も、経営悪化の予兆が見られれば、「速やかに」廃業できる悪例を作ることになり、利益が少し減っただけでも廃業申請するようになるでしょうから、大田区も東京都も認めてはならないと思います。

東京都が審査会において、在園児の廃園後の入所先の確保を「在園児報告書」で確認しなければ認めない、と言っても、事業者は、そのしくみをご家族に伝えていません。

ご家族に自分で行き先を探せと言っているのを聞くと、「どうしても働かなければならない人は、高額を支払い保育先を確保するに違いないだろう」「働くのをやめる人は切羽詰まっていないのだろう」という「冷たさ」・「誠意のなさ」を感じます。

仮に、東京都や大田区がこうした「経営難」による廃園を認めるなら、それも含めて民営化を選択した行政の責任として、過去に「大田区において、廃業した認証保育所の入所者の入園先を確保したように」責任をもって都と区が入園先を確保すべきだと思います。