TPP(Trans-Pcific Strategic Economic=環太平洋戦略的経済提携協定)推進の第一人者、慶応大学渡邉頼純教授の講演を聞きました。

短い時間で説明を求められることが多い中、80分という長い時間をかけられるのを喜んでおられましたので、かなり詳細にわたった説明をうかがえたと思います。

「推進」という視点からのTPPの意義について学べたことは、大変勉強になりました。


 

講演をうかがい、気になった部分は以下の通りです。

①TPPの本質の一つに政府調達の交渉が入っていること

 

これは、第三回定例会の私の質問の趣旨でもありました。 (TPPの大田区に与える影響について)

 政治は利権と言いますが、特に、「地方政府(大田区など)」は、税金の使い方の中で、市内・区内といった制限をつ け地域内企業へ分配している傾向がみられます。この是非については別の場に譲るとして、私たちの支払った税金の多くは地域内業者への発注や委託や購買とし て流れているわけです。

 政府調達の分野にTPPが入るという意味は、関税の撤廃ではなく、発注先、委託先の変化の問題です。この場合の取り払うべき対象は「関税」ではなく、制限をかけている「障へき」でしょう。

 昨日の講演でも、自治体からお仕事を受けていらっしゃる建設業の方がご自分たちの仕事がどうなるのか心配されて質問しておられました。このことに気付いていらっしゃる方たちがどれほどいるでしょうか。

 質問に対して講師は、「(日本にとっても)公共入札に入れるということ。入札情報をPCで見られるようにすればチャンスが広がる。」 と話され「公共調達で対象となる『基準価格』を下げる交渉をしている。要望してください。」と答えておられました。

 これは、

 公共調達の現場にTPP相手国の企業が参入することになるが、公共工事いくら以上を外資算入可とするかは交渉でき まるから、要望してください。外資が算入することになれば、仕事をとられることもあるが、逆に、日本が外国の入札に参加するチャンスも広がる。インター ネットの環境さえ整えば、公共事業の募集をチェックして算入してください。

 という意味でしょう。

 自治体の現場で、公共入札の場合、大きな規模の工事ではJVと言って元請けから下請けまで規模の異なる企業で構成 されますが、現実問題として、現在、国内公共工事を請け負っている下請けまで含めた全ての事業者が海外公共工事に参入できるのかは疑問です。海外の公共工 事を受注したとしても、実際に現場で働くのは日本の労働者ではなく、現地の労働者でしょう。

 特に、落札率95%以上が常態化し、区内企業という制限の中で受注してきた大田区の公共工事のような場合に、TPP圏内企業相手にどれだけの競争力を保てるのかといった問題もあります。

 繰り返しますが、私は、現在の高額化・既得権化しているという部分での日本の(少なくとも大田区の)公共調達の在り方には疑問を持っています。

 しかし、それでは、いきなり、現状をTPP参入により大幅に変えることへの影響とそれに対し、今後日本の産業構造をどのように変化させていくかといった区民生活・国民生活にかかわる部分については示されてきているでしょうか。

 私が大田区に対して質問した際、区民生活に大きな変化が予想されるにも関わらず、区長は相変わらず、国に倣えで自ら何もしようとはしない姿勢でした。

②もう一つの気になる部分は、アメリカは、国内法が国際法に優先する国であるという発言でした。

 アメリカがたとえTPPに参入しても、国内法により国内を規制することができるという意味です。それでは、一方の日本はどうなのでしょうか。TPPに対し、日本の法令で対抗することができるのでしょうか。

③TPPの議論において、全くと言っていいほど存在感の無いのが「国民」です。

 言われる「国益」とは、経済システムにおける企業であり金融の持続可能性であり、そこには国民という概念はありません。

 経済障へきは、問題であり、取り除くことがよしとされる前提で議論は進みますが、経済障へきを取り除いたのちにも 残る「国家」はどうあるべきかという「理念」はどこにもありません。金の理屈だけで、各国政府が経済ルールにおいて手を結ぼうとしている世界の流れの向こ うには何があるのでしょうか。