建築紛争の当事者になると、行政あるいは自治体(=大田区)が、いかに「無力」で、住民の味方になり得ないかを知らされます。

この「無力」を、大田区は、「今の法令ではどうすることもできません」と言い、住民発意の「地区計画」を作るしか方法が無いといったりします。

しかし、それでも、なんとか、地域の住環境と景観を守ろうと工夫をしている自治体は少なくありません。

現在、大田区の鵜の木1丁目に計画されている建築計画に対し、地域では、下記等の問題を感じ、開発業者と協議を繰り返しています。

①計画地が国分寺崖線に位置していることから、崖線を守りたい。
②崖線に植えられている緑を守りたい。
③地域は、古墳群に位置することから、地域遺産である古墳の調査を行ってほしい。
④古墳を活用して作られた防空壕の入口が、計画値の崖線に有ったことを記憶している住民がいることから、防空壕の調査を行ってほしい。
⑤上記立地から、湧水対策、豪雨対策を十分に行ってほしい。
⑥開発に伴う環境の悪化を予め示したうえで、影響があるなら、出来る限り軽減してほしい。

しかし、これらに対して、開発業者は
①計画地が国分寺崖線に位置していることから、崖線を守りたい。
①崖線は削る。

②崖線に植えられている緑を守りたい。
②樹木は一部を除き伐採する。

③地域は、古墳群に位置することから、地域遺産である古墳の調査を行ってほしい。
③古墳は出てくれば調査する。

④古墳を活用して作られた防空壕の入口が、計画値の崖線に有ったことを記憶している住民がいることから、防空壕の調査を行ってほしい。
④防空壕も見つかれば調査する。

⑤上記立地から、湧水対策、豪雨対策を十分に行ってほしい。
⑤地下貯留槽で対応する。

⑥開発に伴う環境の悪化を予め示したうえで、影響があるなら、出来る限り軽減してほしい。
⑥風害調査についての説明の場を設ける。

と言っています。

住民の第一の要望は、国分寺崖線を残し、地域の自然環境、文化や歴史を守るところにあります。
しかし、開発業者は、崖線を残すことは考えていません。

なぜなら、崖線を削ることで、建物の高さ等の設計が変わってくるからです。

大田区は、こうした住民の要望に対し、土地を取得した開発業者が法令を守っているからなすすべが無いと言います。

住民は、開発業者に対して、要望を繰り返します。確かに、現在の建築基準法や都市計画法は、開発に対するルールを定めていますが、結果として、それは、そのルールさえ守ればよいという最低条件になっていて、それ以上の配慮が行われないのが多くの事例です。

こうした建築紛争が起きると、住民は、開発業者と対峙し、要求しますが、行政=大田区は、土地所有者の権利の範囲で土地所有者や開発業者や善意に委ねる姿勢を貫きます。

そうした大田区の対応に対し、大田区は業者寄りだと不満に思う区民も少なくありませんが、業者寄りかどうかの判断は別に、それでは、大田区としてなすすべは全く無いのでしょうか。

例えば、一般に事業者がその土地を取得する場合には、想定する開発計画が可能かどうか、自治体に相談に行くと言われています。

建てられると思っていた建物が、実は建てられなくて、土地取得費用が無駄になる、改修計画がたたなくなるといったことを防ぐためです。

当然大田区は、この事前相談の段階で、その土地に開発の計画があることを知り得ているわけです。これを活用し、国分寺市(まちづくり条例61、62条)府中市 などでは、事前土地取引の届け出と協議を行い、良好な開発への誘導を行っています。

土地の取引規模は5,000㎡ですから、今回の鵜の木の開発3,000㎡余とは異なりますが、都心部、23区内と市部とを考慮すれば、3,000㎡の土地取引を大田区としてどうとらえるかであり、こうした事例は、参考になります。

東京都は景観計画 のなかで、「国分寺崖線景観基本軸」を位置づけていて、届け出の対象になっていますが、 今回の大田区鵜の木の国分寺崖線を無くしてしまう開発であっても、東京都の景観計画で「国分寺崖線」を守ることはできません。

国分寺市では、崖線を守るために様々な方策を講じていることがわかります(p2~)。

大田区の景観計画策定委員会の資料から、大田区は、国分寺崖線を、東京都景観基本軸であることを理由に、景観形成重点地区に指定する予定であるいことがわかります。

しかし、現在ある東京都の景観計画で鵜の木の開発から崖線を守れないことからも、大田区が、例えば、国分寺市が届け出対象面積を引き下げているように、何らかの上乗せ措置や、他の制度も併用した緑の保全なども必要でしょう。

大田区で現在策定している景観計画により、国分寺崖線の南端に位置する大田区の崖線は、守ることができるのでしょうか。