「地域力を生かした大田区まちづくり条例」が改正され、土地の建蔽率・容積率や高さなど財産権に関わるルールの承認権を、任意団体である自治会・町会にゆだねる形になりました。

前代未聞、多くの専門家が、聞いたことが無いと言っています。
住民訴訟に耐えられるのか、という指摘をする専門家もいます。
改正のどこに問題があるのでしょうか。

以下、議案の議決に際し、奈須りえが行った討論です。
この改正案のどこに問題があるのか、お分かりいただけると思います。
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フェアな民主主義 奈須りえです。

第56号議案地域力を生かした大田区まちづくり条例の一部を改正する条例について反対、修正案に賛成の立場から討論いたします。 まず最初に第56号議案「地域力を生かした大田区まちづくり条例の一部を改正する条例」について申し述べさせていただきます。

地方分権一括法の制定により、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねられ、都市計画の分野においても、地域のまちづくりを住民参加で定めることができるようになりました。

こうした流れの中、大田区は平成23年にまちづくり条例の中に地区計画の住民提案の手続きを定めました。今回の条例改正案は、この地区計画の住民提案の部分の要件をおもに改正するものです。

それでは、今回の大田区の条例改正により地域力を生かした大田区まちづくり条例は、より区民の声が反映される、区民にとって暮らしやすいまちのルール作りのための条例になるでしょうか。

地区計画は容積率や建蔽率、高さなどに関する決まりを定めるなど、土地という財産権に深くかかわるため、平成23年のまちづくり条例制定時もまたその直後の改正においても、大田区は区民の意見を聞くパブリックコメントを行うとともに、事前に委員会にも条例の必要性や条例改正の必要性について説明しています。

ところが、今回の条例改正では、事前のパブリックコメントが無いだけでなく、地区計画策定に関わり、条例を改正しなければならない現条例の問題点や改正の目的について、都市整備委員会で報告・審議されませんでした。

条例改正を提案した理由について質疑したところ、当初、大田区は、まちづくり認定審査会から提案されたような説明をしましたが、審議終結後に答弁を修正し、その結果、審査会ではなく大田区の発意で条例改正を提案したと答弁を変えました。

これは、今回の条例改正が、住民発意ではなく、大田区の事情で出された改正案であることを示しています。

地区計画には、大きくわけで開発抑制の環境保全型と、開発促進型の二つがありますが、住民提案制度ができてから、作られた地区計画の多くは開発促進型の地区計画です。大田区においても、開発を抑制し環境を守る地区計画は田園調布や南千束などにとどまっています。しかも、大田区において住民発意による地区計画はこれまで一つも作られていません。

住民発意の地区計画を策定することは簡単ではないのです。

いま、まちづくり条例を改正して大田区の地区計画の住民提案の要件を改正するのであれば、住民提案しやすいように変更すべきです。
ところが、大田区は条例を改正することで、自治会町会にまちづくり協議会の承認や地区計画検討団体の専門家派遣の承認をゆだねようとしています。

これまで、まちづくり条例第12条1項(1)にまちづくり協議会は対象地区内の自治会、町会、および商店会が参加していること。となっていました。この条例制定の際、私はこの部分について問題があると感じましたが、基本的にどの団体であっても参加を認めることを要望し賛成しました。

しかし、これが、自治会などが承認している、に改正されると、自治会等に拒否権が生じます。

条例が改正されると、まちづくり協議会、まちづくり専門家の派遣を受けている地区計画検討団体でなければ地区計画の素案を提案ができくなりますが、どちらも、自治会等に承認を求める内容に改正されますので、自治会町会などが地区計画の提案の事前審査をするかたちになります。

そこで、大田区に、任意団体である自治会・町会に実質的に地区計画の素案の提案という重い権限をゆだねる法的根拠について質疑しましたが、質疑とかみ合わない答弁を繰り返し、結局説明になりませんでした。

しかもひとくちに承認を求めると言っても、町会長が承認すれば町会が承認したことになるのか、町会の会員にはかるのか、その際には役員会などで合意形成の場を持つ必要があるのか、あいまいです。自治会町会の組織率の低下が問題になっていますが、地域の住民の何割以上が自治会町会に参加していること要件とするかなどもはっきりしません。場合によっては、会員が過半数をきる町会であっても、残りの過半数以上が希望する地区計画の提案を理論上は拒否できるという条例改正です。

このようなあいまいな状況で、財産権に関わる非常に重要な地区計画の策定に関わる承認を町会自治会にゆだねることが適当でしょうか。

しかも、たとえば、環境保全型、つまり高さを制限したり容積率を抑制したり、敷地の細分化を防ぐため最低敷地面積を設定する地区計画を作ろうとしても、財産権の侵害だという地権者が一人でもいた場合、ほかの多数が賛成していても町会・自治会は承認できなくなる可能性があり心配です。

環境保全、開発抑制型地区計画は、地権者から財産権の侵害と言われる可能性がある一方、開発促進型の地区計画を不承諾しようとすれば、その地区計画により、より広い家や高く大きな建物や収益性の高い建物を建てられるようになることを期待する地権者から、財産権の侵害と指摘されることはないでしょうか。

地縁組織である町会・自治会に承認をゆだねるにはあまりにその荷が重く、今回の条例改正で、承認を自治会・町会にゆだねることで、住民提案による環境保全・開発抑制型地区計画は、大幅に後退するのではないかと心配しています。

しかも、大田区が今回の条例改正を「規制緩和」と位置付けていることにも注目する必要があると思っています。

町会・自治会に承認をゆだねることで環境保全型地区計画は策定が難しくなり、主に開発促進型地区計画がこの制度を活用することになるとみています。大田区は、この条例改正を規制緩和と位置付けている意味がここにあるのではないでしょうか。

提案要件が三分の二から二分の一に下がっていますが、規制緩和型地区計画がおもにこの恩恵を受けるという構図です。

しかし、条例に1/2と明記すれば登記簿で地権者を確認しなければならなくなりますので、1通1000円の登記簿で地権者を確認する作業を地区計画検討団体などに行わせることになり、お金の有無が地区計画提案に大きく影響することになります。

だからこそ、大田区は助成の金額を二倍に引き上げたと思われます。

大田区には、再開発をするのではないかとみられる地域がいくつもありますが、この条例改正により開発促進型で莫大な税金投入を伴う地区計画が提案しやすくなるということではないでしょうか。

地区計画策定の過程で、個々の住民に是非を問えばよいところ、自治会町会に審査させる過程を加え自治会町会が承認しなければ、住民は地区計画案の検討さえできなくなります。場合によっては、多様なまちづくりの可能性を門前払いすることにもなります。

なすべきことは、自治会町会を使った事前審査ではなく、広く住民の発意を大田区がうけとめ、住民と専門家とで検討して作り上げたまちのルールの是非を地域住民一人一人が判断することです。それこそが、民主主義の手続きに基づいた合意形成ではないでしょうか。

大田区は、まちづくりのルールも無い時点での承認だから地区計画の是非を問うているわけではない、と言います。であれば、何のために自治会町会に承認をゆだねるのでしょうか。

また、改正案は、第11条において、大田区が活動地区を限定していますが、住民発意の地域のまちづくり活動について、行政がそこまで指図することに違和感を覚えます。そのまえに行政がなすべきことはたくさんあります。

特に、11条第一項(4)で、特定の者の利害に活動又は特定の開発事業などに賛成し、もしくは反対する活動を行う、または行ったことがある団体で無いこと。

を加えようとしていますが、今回、特に過去の活動までしばろうとしていることは、専門家にも確認しましたが、これで運用されれば憲法の規定する思想信条の自由に抵触する恐れがあり問題です。

また第15条では、地区まちづくりルールを作っても、その登録団体が解散したらまちづくりルールの登録も取り消すとしています。

法令に基づくルールは、決めた人のものではなく、決まった時点で普遍化されるものです。登録団体が解散したらまちづくりルールの登録を取り消すという運用は議会の構成が変われば条例を廃案にするようなもので、あまりにも属人的で問題です。

また、法令の改正が行われる際には、現行法で公金を投入されている団体については、一般的には経過措置がとられるものです。今回でいえば、

付則8を加え、

現在、改正前の規定に基づき改正前のまちづくり専門家の派遣を受けている団体は、改正後の第16条第1号及び第2号の規定にかかわらず、区長に対し、地区計画の素案を提案できるものとする。と加えるべきです。

大田区に確認したところ、現在、地区計画の策定をめざし、専門家派遣をうけている団体は1つです。

ところが、改正前の規定で提案する団体には、素案策定に関わる経費の助成をしないので、規制緩和で地権者の合意が1/2になると言っても、地権者を登記簿で確認するなど莫大な費用と手間のかかる作業を助成なしで行わなければなりません。

この付則を加えることが、これまでの公金支出における妥当性にもつながります。

仮にこのまま条例改正すれば、特定団体をターゲットにした条例改正になりかねず、法の下の平等原則に反するというのが、相談した専門家のみなさんの考えです。

 

本来個々の地域住民が判断すべき地区計画の是非を任意団体である自治会町会にゆだねれば、地域住民のまちづくりへの参画の機会を失わせることになり、地区計画に住民提案を認めた地方分権の主旨と逆行するため反対いたします。

 

今回、この第56号議案まちづくり条例委員会審査中に自民党の委員から動議が出され、委員長の判断で委員にはかられ賛成者多数で審議途中で審議が終結しています。

そのあとに審議する議案が多いからという理由で、審議の途中で動議により数の力で終結させることが民主的な議会運営と言えるでしょうか。数の力で発言を制するなど、大田区議会としてあってはならないことです。

そのため、第56号議案の審議については、質疑した内容にについて理事者から明確な答弁が得られていない事案があること、動議により質疑さえできていない内容のあることを申し述べさせていただきます。

 

しかも、会議規則は、動議の採決の順序について、

一つの動議が採決されることによって、他の動議の採決される機会がなくなることをさけ、二つの動議がともに採決の機会を与えられるようにすることとなっています。

ところが、審議終結の動議だけをはかり、審議を求める動議をはかることをしませんでした。

会議規則の手続きを踏まない動議は無効であり、委員会審議をやり直すべきです。このことにつきまして、都市整備委員会において委員長に申し述べさせていただきましたところ、動議は委員長責任で行ったと発言された一方、この問題については議会運営員会にはかるということでした。

しかし、本日の議会運営委員会にははかれらませんでした。会議前までになんら説明もありません。議会運営に関する少数の疑義について確認せず進めば、少数意見を配乗することは簡単です。誤った議会運営は厳に慎むべきです。

 

一方、地方自治法第百十七条は議員の除斥について次のように定めています。

普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができない。但し、議会の同意があつたときは、会議に出席し、発言することができる。

としています。

本来なら除斥すべき議員が審議採決したために、再議を求められる事例があります。

今回のまちづくり条例改正案は、自治会町会が承認しなければ、まちづくり協議会として認められず、地区計画検討団体は専門家派遣を受けられません。また、これらまちづくり協議会と地区計画検討団体にのみ地区計画の提案権を与える条文となっています。

自治会町会長の議員は、地方自治法117条の除斥にあたりはしないかという疑問もあります。
取手市では、地方自治法117条の規定に基づき議事に参与することができないものとして除斥すべき議員が除斥されないまま審議されたため、市長が地方自治法第176条第4項の規定に基づき再議を求め再議に付されています。

この条例が住民訴訟に耐えられるかと言った専門家のこともあります。

今回・の条例改正に伴う委員会動議を無効とし、さらなる委員会での審議が必要であり反対といたします。

一方、第56号議案の修正案は、自治会町会に与えた拒否権を持たせる承認を、説明するなどと変える改善がみられるため賛成します。