東京都の都市計画マスタープランへの公聴会での意見「無駄な公共事業どころか、民間事業も含めた税投入のお墨付き」

東京都の都市計画マスタープランと、再開発の方針の改定案が出たので、公聴会で公述しました。

公述に際し、あらためて法律や、制度を調べ、非常に勉強になりました。

こんなにひどい仕組みで今の日本が動いているのか、と思うと、悲しく、ある意味、絶望的にすらなります。こういうひどい制度を放置して何とも思わない議員が過半数を超えていると言うことだからです。

都市マスは、無駄な公共事業どころか、民間事業も含めた税投入のお墨付きですし、
再開発も、法律や制度の改正を重ね、事業者が、リスクなく膨大な利益を確保できるという、あまりに不公平な、実にひどい仕組みになってしまっています。

せひ、知ってください。まずは都市マスから

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東京都市計画区域の東京都区部についての「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(原案)」について、反対の立場から意見を申し述べさせていただきます。

都市マス原案は法の目的に合いません

この都市マス原案では、都市計画法の第一条に掲げている「国土の均衡ある発展にも公共の福祉の増進」にも寄与しないので反対です。

それどころか、コンクリートで固めて美しい国土を壊し、都市施設や市街地開発や防災などに税金を投入することで社会保障財源を減らします。

住民の合意形成の余地を作らない詳細で膨大な書き込みで「無駄な公共事業のお墨付き」

特に、2014年の前回の改定から、「都市計画の決定の方針」の項に大きなボリュームが割かれるようになりましたが、今回、都市施設、市街地開発事業、災害、環境、都市景観についての方針に、さらに、詳細で具体的な事業が書き込まれるようになっています。

都市計画マスは、絵に描いた餅と言われることもある抽象的な表現で、そこから地域住民との合意形成を経て意思決定されてきましたが、こうして、合意形成の前に具体的に都市マスに書き込むことで、国、区市町村まで莫大な税投入を必要とする個別具体的な都市計画のお墨付きを与えているように見えます。

今回の都市マス原案4つの特徴

また、今回の都市マスで特徴的なのが

・自治体の街の都市計画にまで、前回にも増して細かく書き込み介入していること

・災害に強い都市の形成に関する方針が増えたこと

・AI、IOT、ICTと言った情報関連の用語を使うようになったことで、人、物、資本、情報を駆使したまちづくりを行うとしていること

・資本という経済活動に踏み込み、パークPFIといった具体的な事業もそうですが、これまでに無かった「投資」という言葉を使い、国内外から投資を呼び込むと言っていること

だと思います。経済のグローバル化に伴い東京都のインフラを国内資本家のみならず、外国資本家の投資の対象として提供しようとしているのが、この都市マスだと思います。

災害に弱い街を作って防災対策

開発で地面に蓋をし、農業、山林を衰退させ、臨海部をコンクリートで固めたことで、雨が降っても大地に浸透せず、台風や雨の被害をさらに大きくしています。

公共事業どころか民間事業にまで投資家利益のために税投入

環境への取り組みも心地よい言葉は並びますが、公園までパークPFIで民間投資の対象とし、緑化率さえ守れば切って植えて緑も消費財です。ころころとニーズがかわり、長期的なあるべき東京都の姿はどこにもありません。

東京都が投資を呼び込めば、私たちは、これら都市マスで、外国投資家の利益まで含めた開発の負担をさせられることになります。

結果として侵害される住民自治と自治体の自治権

東京都の都市マスに区市町村の都市マスは、整合性をとらなければなりません。
以前にもまして、都が街の都市計画まで細かく記載することは、市町村の個別具体的なまちづくりまで拘束することになり、自主性や住民自治や自治権を侵害することになり問題です。

特に23区は都市計画税の徴税権も無く、東京都が大都市事務として都市計画を担ってきた背景はありますが、地方分権の流れの中、前回の改定から加速する東京都のこの都市マスの策定の在り方は、地方分権の本旨に逆行していると言わざるを得ません。

2013年に国家戦略特区法が成立し、都市計画の合意形成を簡素化することが可能になり、事業者と首長と内閣総理大臣など一部の大臣と有識者とで決められるようになったのと無関係とはいえず、危機感を覚えます。

都市計画は、多くの都民が、あまり関心を持ちませんが、今日の日本のインフラ投資を決める極めて重要な計画で、人口規模から都市のあるべき姿や、福祉・教育・医療など、財源にまで大きく影響する計画だと思います。ですから、パブリックコメントやこうした公聴会の開催を義務付けているのだと思います。  

住民意見無き東京都の独断で決める都市マス

ところが、東京都は、2019年12月に作った「未来の東京」戦略ビジョンや、2017年9月に策定した「都市づくりのグランドデザイン」を踏まえてこの都の都市マスを策定するとしています。

都市計画法に基づき策定する計画より先に、東京都都市計画審議会から出された答申を踏まえたとはいえ「グランドデザイン」を作り、「未来の東京」を作り、それらを踏まえてこの都市マスを作るというのは、都市マスを軽視し、形骸化させていて問題です。

未来の東京もグランドデザインも、意見募集があったこと、出来たことさえ大田区議会に報告が無かったにも関らず、大田区の様々な計画に既成事実として反映されています。

こんな重要なことを区議会に報告しない大田区にも問題はありますが、莫大な財政負担を伴う都市マスを形骸化させる未来の東京やグランドデザインを作った東京都の都民軽視こそが問題だと思います。

都市マスに書き込み、国内外投資家のための民間事業に税投入

しかも、これらの莫大な財政負担を伴う事業は、必ずしも住民福祉の視点から策定された需要に基づいた事業ではありません。
逆に、リニア中央新幹線、商業施設、バス案内システム、物流、シェアサイクルほか、事業には、本来、公が行うべき事業を民営化して、株主という私益のための事業者になったにもかかわらず、民がリスクを取らずに、行政の支援を受ける都市計画に入り込んでいるリニア中央新幹線のような事業もありますし、そもそも、民が行えばよい事業を、公のインフラにただ乗りして行おうとしているシェアサイクルのような事業もあります。

投資家利益という私益のためにツケ(増税・物価上昇・社会保障費の削減)を払わされる都民

制度や税制の支援を受け、事業者は着実な利益を得ることができますが、人口減少局面でこれら膨大な量の開発を、都民が税金やモノの値段に転嫁されて負担することは不可能です。結果、増税や、物価の上昇や、社会保障費の削減、という形で都民がツケを支払わされることになります。

誰の発意で未来の東京、グランドデザイン、都市マスの原案が作られたかわかりませんが、具体的な事業に関わっている事業者の意向無しで書き込んだとは考えにくく、これで利するのは事業で利益を確保する投資家ですが、蚊帳の外で決まった事業のツケを都民が支払わされるのは問題です。

23区の社会保障費が、無駄な公共民間投資へ

特に東京都は、都区財政調整制度で23区の財源であるべき法人住民税、固定資産税などに加え都市計画税含め毎年、約1兆円という財源を23区域から得ています。

地方分権で社会保障の責任主体が区市町村となったことで、東京都は財政調整割合をわずか3.1%区側に増やしただけで石原都政以降23区の社会保障負担から次々解放されています。1兆円のうちのどれくらいかはわかりませんが、23区の社会保障に使うべき財源の多くが、これら都市マスの開発に使われるようになっているということです。

一方の23区は、国が行ってきた行政改革と構造改革により、雇われて働き賃金で生活を支える人が増え、しかもその雇用が不安定で低賃金化しているため、社会保障ニーズが増えているにもかかわらず、増えたニーズに見合った財調割合の見直しがないため、社会保障サービスは常に不足しています。

23区の税金の使い方にも問題はありますし、都市マス原案は、各自治体に意見聴取したうえで策定したものと聞いていますから、同意した23区にも責任があると思います。だからこそ、都民、区民不在でつくった、住民福祉財源をひっ迫させる計画に区民の代表として反対します。

経済・社会構造の転換期も把握しない計画

そもそも、人口の多い団塊世代を中心に労働市場から退出する時期ですし、商店などの個人事業主や中小企業の後継者不足による廃業、正規雇用が中心だった世代から非正規雇用や派遣が中心の世代に変わる、など日本の豊かな中流と呼ばれてきた中間から高額所得者層が激減する時期に入っています。 

コロナの影響も反映させない計画

その上、コロナは、いつまでも、未知のウイルスの時のままで、国も都も具体的な予防策を示さず、自粛を繰り返していますから、打撃を受けるのは、低所得者層ももちろんありますが、小売店やレストランなどの商業、中小企業、地域の診療所など、日本の豊かな中間から上の所得層で、結果として税収が大幅に減ることになるとみています。 

こうした構造的な変化と、コロナによる影響で、今以上に低賃金労働者層が増え、雇用が減り、年金で暮らしを支えられない人も増えますから、都市施設や市街地開発等より社会保障を優先させるべきですが、都市マス原案はそうした構造変化に一切触れておらず、さらに開発を促進させる計画で恐ろしくなります。

東京都という最も社会保障が必要な都市部で都市施設に投資する余裕はあるか

そもそも、都市部ほど地縁・血縁が薄く、公共の福祉で暮らしを支えなければ健康で文化的な最低限度の暮らしは維持できませんから、経済の中心にある23区ほど社会保障費を厚くすべきですが、その財源をあてにした都市マスの都市施設はじめとした開発投資はあり得ません。

情報を駆使した都市計画の本当の目的 スーパーシティ

そのうえ、先日の国家戦略特区法の改正で成立したスーパーシティは、国会や自治体の意思決定や住民合意の前に、事業者に国や自治体などの情報を見る権利を与え、企業の発意と内閣総理大臣の主導で事業の計画と執行を既成事実化できるしくみです。

都は特区を積極的に推進しており、情報を駆使したまちづくりを行おうとしていますが、このスーパーシティを前提にしていると思われ、スーパーシティによる企業主導の都市になるのも反対です。

都市マスは都民誰もが、健康で文化的な生活を維持できる公共の福祉のための計画

都市マスは、私たち都民誰もが、健康で文化的な生活を維持できる公共の福祉のための街をつくるための計画です。

投資家利益という利害関係者からの逆算のような原案は誰の声を聴いて作ったのでしょう。

反対いたします。