あらためて、今年5月に成立した「スーパーシティ」の問題点について、意思決定や権限という視点から考えてみたところ、                           
国会や地方議会、大臣や省庁の官僚の力を無力化する改正で、結果として内閣総理大臣に権限が集中していることに気づきました。

同時に、内閣総理大臣は、企業(外国投資家)のためにその権限を使う形になっています。           

憲法を改正していないのに、国民の主権が、企業(外国投資家)主導に変わってしまい、国会の権限も、大臣や省庁の権限(行政)も、地方自治も無力化し、内閣総理大臣に権限が集中しています。 

国家戦略特区法改正によるスーパーシティで造った「企業主導」「内閣総理大臣独裁型」政治と、国民主権、地方自治を無力化させるしくみについて報告します。


 

令和2年5月27日、国家戦略特別区域法の一部が改正され、「スーパーシティ」の実現が可能になりました。

スーパーシティとは

 スーパーシティは、国・自治体などの持つデータの連携基盤の整備を法で定め、事業の実施主体である企業が、国や自治体などに対して、その保有するデータの提供を求めることができるようにして、これらの情報を駆使した事業を行わせるしくみです。

 自治体ごとにバラバラだったシステム間のAPI(*)をオープンにし、都市間の相互連携の強化が可能になりました。*API:Application Programming Interface

国家戦略特区のしくみによるスーパーシティの特殊性

スーパーシティは、海外で先行しているスマートシティに似たネーミングなので、AIやビックデータを活用した利便性の高いまちをつくるのだろう、と思っている人も少なくないと思います。実際、内閣府の「スーパーシティ」構想の説明資料も、カナダ・トロント市や、中国・広州市といった海外のスマートシティの事例をあげ、企業と行政が連携した都市設計について説明しています。

しかし、こうした都市設計の動きが国際的に急速に進展していて、海外でスマートシティが先行している部分があるものの、「まるごと未来都市」は未だに実現していないと国が指摘しているように、スーパーシティとスマートシティは、根本的に、その在り方が違います。

スーパーシティのスリースーパー(3つの超越)

国家戦略特区は、
●区域を限定した規制緩和による外国投資家のための経済政策で、
●本来国会が行う規制緩和という法律の適用除外を、内閣総理大臣はじめ一部の大臣と有識者に与えるしくみです。

国家戦略特区で認定された事業や事業者は、希望した法令の適用を除外され、それによってスピーディーに投資利益を得ることが可能になります。

スーパーシティは、そのネーミングが示すように、【特区】を超越する(スーパー)まち(シティ)だということです。

データの連携基盤整備で特区からの超越

ひとつめのスーパー(超越)が、特区(区域の限定)からの超越です。

国や自治体のシステム間の接続仕様であるAIPをオープンにするルールを整備し、法令上義務化し公開するので、国や自治体の保有するデータのシステムの垣根がなくなります。

これにより、特区の前提だった区域の限定が曖昧になり、対象事業のエリアが一気に全国に広がって、まさに区域の限定という特区から超越したスーパーシティを可能にしています。

官僚機構からの超越

2つめのスーパー(超越)は、意思決定における官僚機構からの超越です。

スーパーシティでは、
●各省調整の前に、事業計画を内閣総理大臣が公表し、
●複数の規制改革含む事業内容全体を一体的に検討します。

また、
●制所管大臣は、規制緩和の可否について、必ず特区諮問会議の意見を聞いた上で、通知・公表することが義務付けられ
●特区諮問会議は、規制所管大臣に勧告することができるようになっています。

これらにより、
省庁の調整なく、内閣総理大臣が公表することで、全体の奉仕者である公務員(各省庁)からみて、矛盾が生じたり、問題があったとしても、既成事実化し、同時・一体・包括的に進むよう後押しするしくみになっています。

そのうえ、
規制所管大臣からのストップがかからないよう、特区諮問会議の意見を聞かせる。それでも反対しそうな時は、特区諮問会議が大臣に勧告する。といった仕組みまで設けています。

これらから、スーパーシティ実現のために、官僚機構がさらに無力化され、事業者(外国投資家)の権限が、行政の権限を超越(スーパー)しているようにみえます。

内閣総理大臣への権力集中と企業権力の増

3つめのスーパーは、国会と地方議会を超越(侵害)することによる、内閣総理大臣への権力集中と企業の力の増大です。

事業者は、内閣総理大臣が認定すれば、国会での法令改正や地方議会での条例改正などの議決を待たず、公共機関や自治体等が保有するデータの提供を公共機関や自治体の長に求めることができます。

公共機関や自治体の情報を使って計画・執行される事業でありながら、最も重要な法令・条例制定による議決など、住民との合意形成なく情報が事業者に提供されます。

事業者は、内閣総理大臣に、住民その他の利害関係者の意向を踏まえた区域計画案の提出は求められていますが、合意形成を求めているわけではありません。

ビッグデータを使った事業計画に最も重要な公共機関や自治体の情報を見るために、事業者が配慮しなければならないのは、官僚でも、議会でも、住民・国民でもなく、内閣総理大臣と諮問会議のメンバーなのです。

国民に負託された国権の最高機関である国会や地方議会や行政(官僚)が形骸化し、内閣総理大臣に権力が集中し、企業の力が、主権者である国民の権限を超越(スーパー)することになります。

それでは、国や自治体などでの合意形成や、各省庁の調整という民主主義の手続きをすり抜け、事業者に、国や自治体などの行政機関の情報を駆使しした事業計画と執行を許すスーパーシティで、具体的には、どような問題が生じるでしょうか。

データ連携基盤の整備による個人・行政情報の経済利用

スーパーシティで最も問題視される一つが、個人情報をビッグデータとして利用する問題です。

個人情報利用を可能にした仮名加工情報という概念

本来、個人情報は守られるべきですが、スーパーシティで個人情報は、二つの手続きによって営利目的利用を可能にしています。

一つが、個人情報保護法を同時に改正して仮名加工情報という概念を作り、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないことを理由に、仮名加工情報の使用を許したことです。

マイナンバーは、個人が特定できないランダムな番号で管理されていますので、仮名加工情報にあたります。

これにより、行政が持つマイナンバーに紐づけられた情報をデータ基盤に整備することが可能になっています。

企業の持つ情報と照合し個人の特定も可能に

「他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように加工した情報」なので、企業の持つ情報と照合することで、企業は個人を特定することも可能です。

銀行が口座とマイナンバーを紐づけると言った報道があります。それだけでなく、給与支払いなど企業は様々なかたちでマイナンバーの提示を私たちに求めていますから、その企業情報とマイナンバーを組み合わせると、個人を特定することが可能です。

一方、国は、本人の同意により個人情報を使用する(ので使用されたくない人は、同意しなければよい)と言う説明の仕方をします。

しかし、私たちは、PC、ifone、iPadはじめ、様々なサービスの利用に際して、個人情報使用についての同意を求められ、同意しなければ、サービスを使うことができず、半ば強制的に個人情報の利用を企業に許す仕組みの中に組み込まれています。

特別定額給付金のマイナンバー申請の目的

しかも、今回、新型コロナの特別定額給付金で、マイナンバーを使った電子申請の場合、国のマイナポータルに登録させて、個人情報利用についての同意を求められました。

国のマイナポータルというサイトにあえて誘導しているのは、自治体が持つ、膨大な個人情報(住所、年齢、住民税で所得、介護や医療の健康状況、保育・障害・生活保護等サービスの使用状況、、、)を仮名加工情報で番号管理して、国とつなぐことが目的なのではないでしょうか。

マイナンバーに紐づけされた情報で企業が目指す利益最大化

 スーパーシティで、事業者は、こうした私たちの情報と企業の持つ情報を駆使して、利益最大化のために最適なサービスを企画し、提供することができます。

 しかも、スーパーシティで事業者が立案する事業は、必ずしも住民福祉のためである必要はありません。公共機関や自治体の情報は、便利、快適、楽しいなどの利便向上のために使うことが可能です。

 結果、サービスの内容も、質も、価格も、事業の提供主体である企業に主導権が移っていき、企業がそれにより莫大な利益をあげることを可能にします。

国会や地方議会、行政、主権者である国民、を超越する力を企業に持たせ、私たちは、企業にすべてをコントロールされてしまうのではないかと危機感を持ちます。

公共機関、自治体が持つインフラ情報の営利目的利用

 こうした個人情報の経済利用とともに、自治体が持つ膨大な情報に、上下水道やダム、河川管理、道路、公園、橋梁、清掃工場、交通などの公共インフラ情報があります。

 今も日本の公共インフラに投じられる税金は、社会保障や教育とのバランスから見れば過剰になっていて、適正な管理を怠たり老朽化したした施設が問題になっています。

 それでも、多くのインフラの整備計画や事業執行の主体は地方自治体で、それを議会が議決することで、福祉や教育など住民福祉との財源バランスを「かろうじて」とっているというのが現状ではないかと思います。

 これらが、企業の手に渡り、計画立案と執行を事業者にゆだねることになれば、企業は株主利益の最大化から逆算した事業計画を特区に申請するでしょう。

インフラ整備の費用が増えれば、それを負担するために、他の事業費を削減するか、増税することになります。

スーパーシティで企業に公共インフラ情報の提供を許すことは、私たちの社会保障財源を減らし、増税につながる可能性が極めて高いということです。

官僚機構のさらなる無力化の意味

 今後、スーパーシティで企業が企画した事業は、省庁を経由せず、直接企業から国民に公開されることになります。

 これは、全体の奉仕者である公務員の法的チェックや、公平性、税及び私費での負担や優先順位などを受けなくなることを意味します。事業について、企業からの情報提供だけになれば、企業は事業実現に不利な情報を出さず、国民は(企業利益のために作られた事業の)コマーシャルだけを目にすることになります。

 内閣府の資料に住民対話型という説明とともに紹介されていたカナダ・トロントのスマートシティは、「2019年に再開発のマスタープランを発表するも、Google系列の私企業が個人情報を収集することに対し、近隣住民やメディアが強く反発し、住民への説明会を繰り返し開催したものの、計画は大幅に遅れている」と説明されていて、最終的に、グーグルの親会社は断念しました。

 住民と対話しながら作ろうとしたスマートシティは、対話により内容が明らかになったら、住民の反対にあい、実現できなかったのです。

 私がここに、こうしてスマートシティの問題点を指摘できるのも、内閣府が作った国会などへの説明資料があるからです。省庁の調整の前に、事業者が公表することになれば、多くの住民は最初に事業主体である企業宣伝を目にすることになり、問題点を指摘するポイントを見つけることが今よりさらに困難になるでしょう。

住民との合意形成が最終的に行われるとしても、形式的なもので終わってしまう心配があります。

 

国の通貨制度までスーパーシティで変えることを想定

内閣府が示す事例には、地域包括ケアの対価を「地域共通ボランティアポイントで決済」という表現もあります。
地域の中だけで有効なお金を流通させることまで、国は考えているのです。

地域包括ケアはボランティアだから、労働基準法により定められている賃金の5原則を外れても良いという事でしょうか?

通貨制度という国の根幹を揺るがすような変更まで想定されていながら、全く議論にあがらずきまってしまったことに驚愕します。

累積債務や、労働人口の減少、今回のコロナで、個人事業主や中小企業がこれまでの10倍融資を受けられる状況がうまれ、私たちの持つ円の価値や金利がどうなるか、と言う危機感をこれまでもってきましたが、逆にこれから円を得ることが極めて困難な社会(スーパーシティ)を作ろうとしているのかもしれません。

 

これから私たちは何をすべきか

 いま、私たちは、様々な場面で個人情報の利用についての同意を求められるようになっています。ブルートゥースで位置情報を提供することが、コロナの感染から命と健康を守るための手段として有効であるといった記事も見られるようになりました。

 コロナの感染予防という一方向からみれば、妥当な手段も、別の視点から見れば全く違った風景が私たちの前に広がります。このコロナという火事場に乗じマスコミと一体化した国の暴走が始まっています。

 スーパーシティで内閣総理大臣に権力を集中させ、まさに竹中平蔵氏のいう「ミニ独立政府」が生まれようとしています。

 一方、国は、スーパーシティの成立を5年後をめどにしていて、内閣府が20年3月に公表した構想案には2030年頃に実現されるといった表現もみられます。

 これを私は、データ連携基盤構築のためマイナンバーへの紐づけに必要な期間であり、住民との合意形成に必要な世論情勢のための期間とみています。

 コロナで情報の共有が困難な時代ですが、この準備期間に、私たちが、どのように情報を届け運動を広げるか、そこがカギだと思います。

民主主義は、まさに崖っぷちであると言わざるを得ません。私たちの民主主義がいま問われています。