大田区体育館隣接地購入に関わる訴訟から見えてきた大田区の土地購入に係る問題点

大田体育館に隣接する土地とその建物を目的も無く不当に高額に購入したことを近隣住民が大田区長始めとした意思決定に係る副区長をはじめとした経営戦略会議のメンバーを相手に起こしていた訴訟が結審しました。
残念ながら、訴えの期間(財務会計行為があってから1年間)を過ぎていたことを理由に却下=門前払いとなりました。
前払いと言うことは、住民のみんさんが主張していた不当に高額に土地を買ったことについての適否は裁判で審議されなかったということです。

しかし、訴訟を行ったことで、大田区の土地購入における問題点が明らかになりました。
今日は、大田区民がなぜ土地購入に関わり大田区長を訴えるまでしなければならなかったのかの要因でもある大田区における土地購入の問題点について報告します。

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今回の裁判では、提出前の情報で3月26日までに出せば間に合おうという認識があり、住民はそのアドバイスに従い書面の準備をしてきました。
確かにマンション購入金額残金が支払われたのは3月26日ですが、大田区長が支払命令書を出したのが3月23日だったため住民の訴えが退けられました。
いわば、門前払いを食ったわけです。

裁判所の主張は相当な注意を払えば知り得た事実ということなのでしょう。実際に区政に携わるものとしては、「支払い命令書」の存在やその作成日までもチェックしなさいと区民多大な負担を強いる市民感覚からはずれた判決です。
この1年と言う期間には、昨今、様々な議論もありもう少し長くするべきではないかといった声も出てきています。現行の制度のままで、仮に1審の判決が上告しても覆らないとするなら自治体の区政執行におけるお金の流れについての説明も欠かせないでしょう。
残念ながら1審では門前払いとなりましたが、訴訟を通じ次のような問題が見えてきました。

 

土地購入の際の必要性について客観的評価が行なわれていない

 

そもそも必要な土地についての方針や購入計画が無く、また、必要性についての指標も持ち合わせていない。そのため、緑地・公園用地・防災などという一般的なニーズが必要不可欠な購入要件となってしまう。
そのため、ある時は一人当たり公園面積が不足しているからと公園用地を購入する一方で、別の時には同じく一人当たり公園面積が不足している地域でありながら購入しないこともあります。
確かに土地は出物であり「この機を逃すと」という事情もわかりますが少なくとも土地購入の際の「方針・指針」「指標」は必要で、もちろんそれらに基づいた財源にうらうちされた購入計画がなければなりません。

価格の根拠となる不動産鑑定も財産価格審議会議事録も非公開

 

大田区では不動産鑑定結果もまた財産価格審議会の議事録も公開していません。開示請求しても非開示です。
しかし、不動産価格には、路線価、公示価など、いわゆる客観的相場が存在するわけで、開示すべきです。
大田区は「価格交渉中は公開できない」と言いますが、私たちが土地を売買する際に相場も調べず相手との交渉だけで購入することはまず無いでしょう。相場観を持った上での交渉のはずです。
しかも交渉が終わってからも非開示と言うのは説明がつきません。

必要であればいくらで買おうが大田区長の裁量の範囲内という意識がある

 

今回の裁判で大田区長が主張していて大変驚いたのが、必要であればいくらで買おうと区長の裁量の範囲内という意識を持っていることです。
土地には相場があります。その相場を算定するのが不動産鑑定です。不動産鑑定には土地の形や大きさ立地・・・等は配慮されますが、どうしても買いたいので大幅に高く鑑定するとか、どうしても売りたいので破格の安値に鑑定することはできないことになっています。
「大田区長の裁量の範囲」はどう働いているのか

 

そこで気になるのが、区長の主張する「いくらで買おうが」という「裁量」がどこで働いているかということです。
大田区の土地購入における価格は、不動産鑑定結果がそのまま財産価格審議会に諮問されます。この流れの中、「区の裁量」は働きようがありません。

区の主張は、不動産鑑定の場面で「高め」「安め」の鑑定依頼をしているかのようです。
裁判で初めて公開になった不動産鑑定報告書

 

今回の裁判での成果の一つに不動産鑑定書が公開されたことがあります。
大田区ではこれまで非開示だったので初めてみましたが、友人の不動産鑑定士から見方を聞くとともにどこに問題があるか教えていただき大変驚きました。

不動産鑑定は法に根拠を置く不動産鑑定基準に従い鑑定しなければなりませんが、その鑑定基準を守っていないからです。何よりも複数の不動産鑑定士に委託をせず1社だけに鑑定を依頼していることに問題があると感じました。

今回5億5千万円で購入している土地も不動産鑑定基準に従い鑑定した結果は多めに見ても3億円だったそうです。
どうしてこのような鑑定結果になるのか理解に苦しみます。
複数鑑定と鑑定評価報告書公開による公正な不動産価格算定を

 

大田区に何度も提案してきましたが、国土交通省も言っているように不動産鑑定は複数社からとる。また鑑定評価報告書は少なくとも売買決定後公開するというルールを定めることで公正な算定の担保になります。