宮城県と岩手県では、ガレキ量の把握の考え方に相違がありますので、それぞれの自治体の数字の加工方法に合わせて検証していきます。
◆宮城県の場合◆
広域処理において必要なデータは、被災地が、その自治体内で処理することができず、県に委託した処理量です。
宮城県では、受託した瓦礫を、再生利用、焼却処理、売却、最終処分で下記のようにガレキ量を把握しています。
私たちが広域処理において、まず、注目すべきは、焼却分です。
現在、自治体の間で問題になっているのがれきのほとんどが、焼却処理されるものだからです。
■宮城県の被災自治体が処理できない焼却量は203.4万t(仙台市分含む)■
下記の表から、宮城県が受託した処理量のうち、焼却分は203.4万tであることがわかります。ここには、仙台市の10万tも含まれています。
仙台市は、地域内処理でき、しかも余力があると言うことですから、ここから10万tを除いた193.4万tが、現在、震災によって突発的に発生し、宮城県で処理しなければならない量になります。
一方で、宮城県は、今回のガレキ処理に当たり、下記のように仮設焼却炉を建設してきました。
7月には31基が完成し、稼働を始めます。すでに、稼働している仮設焼却炉もありますが、誤差の範囲として、2012年7月から、補助金の関係で2013年12月末までとされている稼働期間18カ月で処理量を計算してみましょう。
■現地仮設焼却炉の処理能力は、300日稼働/365日で180万t■
このうちの宮城県の仮設焼却炉の処理能力は合わせて4015トン/日になります。これを想定している年間稼働日数でかけると、宮城県で、建設した仮設焼却炉で処理できる年間処理量が、120万tになることがわかります。
*2012年7月から、2013年の12月まで焼却すると、現地の仮設焼却炉で180万t焼却できることになります。
そこで、先ほどの現地焼却量ですが、193.4万tです。
私は、この5月1日と2日に宮城県と岩手県、そして仙台市に視察に行き、現地で県や市の担当からお話しをうかがっています。
■現地で仮設焼却炉は連日稼働している実態から、300日⇒320日にすれば、現地で処理できる計算■
現地職員から、仮設焼却炉の状況について宮城県と仙台市の担当者から、連日稼働をしていること。仮設焼却炉は補助金の関係でリースになっており、リース期限までもてばよいので通常行うメンテナンスのための休止などはしていないということを聞いています。
例えば、193.4万tを処理するためには、現在の300日稼働を320日にすればよいということで、現状からみれば、不可能な数字ではありません。
しかも、ここには、現地の被災していない地域の焼却余力や、既に余力が出ていると公表されている仙台市の余力は含まれていませんので、わざわざ東京まで持ってこなくても、仙台市の仮設焼却炉で焼却していただくことも可能ではないでしょうか。
この、検証は、あくまで、宮城県の出したデータをもとにした机上の計算ですから、計算通りにいかないこともあるかもしれませんが、それでは、こうした状況が、今後、広域処理を行う理由になるでしょうか。
■仮設焼却炉は建てて1年2か月で壊す計算!?■
しかも、もう一度 、下記の表の見直し前の県内処理計画量を見ていただきたいのですが、焼却処理は170.7万tです。
県は、当然、ゼネコンからプロポーザルを受け、仮設焼却炉の建設計画について当初から把握していたわけですから、31基4015t/日、或いは仙台も含めた4895t/日×300日=147万t/年は見直し前であったとしても処理計画に含める必要があります。
阪神淡路の時には、被災後3か月から仮設焼却炉の建設が始まったという指摘がありましたが、この処理量は、仮設焼却炉の規模から逆算すれば、通常の清掃工場並みにメンテナンスをしながら、建てて1年2か月だけ使ったら除却するという数字です。
見直し後に175.5万tになっていますが、それも誤差の範囲。計算すると1年2カ月に変わりはありません。
直近のデータからは、今すぐ、広域はやめて、現地処理にシフトし、莫大な建設費用をかけて建設してしまった仮設焼却炉の有効活用に専念し、せめて、輸送コストだけでも、節約するべきではないでしょうか。
それとも、全国に建設してしまった清掃工場に余力があるから有効活用しなくてはいけないというのでしょうか。