大田区平成26年度決算から見えてくる「日本の自治体財政のまやかしと危機」その2/2

大田区平成26年度決算から見えてくる「日本の自治体財政のまやかしと危機」その1/2

【あいまい化する、公的責任と私的負担】

この間大田区が行ってきた認可以外の保育所を増やすことや、区立以外の特別養護老人ホームを増やすことは、市場経済にまかせた社会保障のサービスを充実させるために補助金をつけてきたという風に評価できないでしょうか。そして、同じ税負担をしている大田区民ですが、大田区の供給量が少ないからにもかかわらず、自己責任で保育や介護を買いなさいという風になっているとはいえないでしょうか。

◆みえにくい社会保障負担

そして、こうした民間に担わせてきた分野が広がりすぎてしまったために、直営とどちらが総体として優位かを評価することも検証が困難なほどに、お金の流れがみえにくくなっています。

【官には無くて民だと負担する余計なコスト要因:株主配当・利息・地代・税】

少なくとも、株式会社が担えば、直営では不要の株主配当や地代、利息が区民の負担になります。

格差の拡大が問題になっています。

公共分野に民間参入させたことで、株主配当により資金が流れるようになり格差は拡大しますから、大田区の民営化や民間委託が格差拡大の要因の一部を作ってきたという言い方もできます。
大田区でも、後期高齢者医療保険の対象者のうち約3千人は後期高齢者医療保険に加入していません。

国民健康保険対象人口は毎年増えていますが、加入被保険者数は平成21年度をピークに減り続けています。

こうしたところにも格差の拡大の影響が出始めているとは言えないでしょうか

【人件費は安ければいいか】

民間のほうが人件費が安いから、と言いますが、それは、私たち区民が私たちのサービスをどれくらいでになっていくことが適当かを判断するもので、安ければいいものではありません。結果として私たちや私たちの子ども、孫の働く場になるわけですから高すぎるのも問題ですが、安ければ安いほどいいわけでもありません。

直接の雇用ではありませんが、いまや、公共サービスは最低賃金の労働市場になってしまっています。
基礎的自治体の責務は住民福祉です。
大田区は憲法でうたわれる基本的人権を優先課題にしなければならないにも関わらず、「選択と集中」という言葉により、優先順位の低いたとえば、新耐震基準を満たしている本庁舎の耐震補強工事やイベントに税金を投入するようになってきています。優先順位の低い事業に税金を使うことと、規制緩和の経済政策国家戦略特区の根底には、「企業利益最優先」という大田区の姿勢が表れてはいないでしょうか。

【規制は悪か】

「規制は、社会秩序の維持、生命の安全、環境の保全、消費者の保護等の行政目的のため、国民の権利や自由を制限し、又は国民に義務を課すもの」です。

ところが、いつの時からか、規制は良くないもので撤廃すべきであるというイメージがつきはじめています。

規制緩和の中でも、規制の改廃権を民間議員にゆだねるしくみになっている国家戦略特区を竹中平蔵氏は規制緩和の突破口と位置付けています。

安倍首相は「国家戦略特区では、岩盤規制といえども、私の『ドリル』から無傷ではいられません」と発言していて、「規制改革には既得権益層に立ち向かう強い政治力が必要」といった発言もみられます。

◆給与所得者を既得権者とする国家戦略特区による規制緩和推進者

それでは、安倍首相の意味する既得権益層とはいったい誰でしょうか。
農協でしょうか。農業者でしょうか。それとも、官僚でしょうか。
国家戦略特区のワーキンググループには、こんな議事録があります。

「例えば大企業のホワイトカラーなどというのは、大金持ちではないけれども、雇用慣行という既得権によって守られている。これは新規参入もあるし、大金持ちになるわけでもないという洗練された既得権である。

(略)

このように、日本の既得権の体系というのは、大きくてかたくて崩しにくいのではない。細かいから崩しにくい。別に誰かが考えてそうしたのではないと思うが、何となく日本人の国民性にずっと合っているのではないだろうか。だから、崩れない、崩せない。それは、既得権者はみんな悪党ではなく、ごくごく善良な市民だからである。

 

どういうようにこの種の既得権に御遠慮願っていけばいいのか、・・・」

先日も「派遣労働を一時的・臨時的なものに限るという原則のもと、専門業務を除いて派遣は3年までしか使えなかった派遣法が改正になりました。

安倍総理のいう「既得権益層」とは私たち区民ではないでしょうか。
規制がなくなれば、そこは無法地帯であり、自己責任の範囲がひろがることになります。

そうした意味では、大田区の決算にのらない民立の特別養護老人ホームや認証保育所などのサービスを増やしてきた大田区は、法令程度の行政の関与でしかない自己責任の範囲のサービスを増やしてきたということです。

そのうえ、とうとう、国家戦略特区の提案という形で企業の利益のための、つまり株主利益のための規制緩和政策を提案してしまいました。

これは、行政の自殺行為であり、大田区が決して行ってはならないことです。

今一度、基礎的自治体の役割や責務が社会保障であることを確認し、官と民との役割を改めて問い直すべき時に来ていることを強く主張し、反対討論といたします。