国家戦略特区を活用した旅館業法の規制緩和策「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業条例案」⦅以下民泊条例⦆のパブコメ募集が始まった。奈須りえ的にはこんな風にみえてくる。

国家戦略特区の大田区民泊条例パブコメ

https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/hoken/eisei/riyoubiyou/ootakukokusaisennryakutokku.html

平成27年10月13日(火曜日)から10月26日(月曜日)まで。
(郵送の場合は、最終日必着分まで)

条例案の概要

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国家戦略特区を活用した旅館業法の規制緩和策「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業条例案」⦅以下民泊条例⦆のパブコメ募集が始まった。奈須りえ的にはこんな風にみえてくる。

①低所得者の住まいとなって安全性などに問題のある簡易宿所だが、この規制緩和でさらに安全面等が低下しないか
②国が行おうとしているビザなし外国人労働者の住まいとなり、しかし、そうした外国人労働者に社会保険などは免除という話もきく。
単なる安い労働力としかみない外国人労働者の受け入れは、これまで大田区が行ってきた都市計画や教育、医療、保険、保育、財政などあらゆる政策との矛盾が生じないか。大田区はその影響も考えたうえで提案しているのか。想定しうる影響を示すべきである。
③そもそも都市にはキャパシティーがあり、町には、それぞれの街並みがある。ところが、対象は大田区の大半を占める。住環境の悪化につながらないか
④外国人労働者が増えれば、大田区はじめ日本の労働雇用環境に影響を及ぼし、さらなる格差拡大につながらないか。
⑤対象は外国人に限定していない。①~④は大田区民だけでなく、日本の統治機構の崩壊につながらないか。

そもそも、今回、この民泊条例制定が何を意味するのか整理したい。

国家戦略特区が何なのかは、私の著書:浜矩子さん、郭洋春さん、内田聖子さんらと共著。特区の制度について奈須りえ担当。(徹底解剖 国家戦略特区)やこのブログ内を検索してご覧いただきたい(国家戦略特区)。

この特区による規制緩和策の一つ(国家戦略特区法第十三条4項)に、旅館業法第三条第一項の適用除外がある。

以下がその除外される条文

第三条
 旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第四項を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、ホテル営業、旅館営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を経営しようとする場合は、この限りでない。

  許可を受けないでも旅館業ができる

ということになる。

許可を受けなければならないということは、申請に係り施設の構造設備について政令で基準が課せられるということだが、認可が不要ということは構造設備についての基準が課せられない ことになる。

今回の旅館業法の特例の本質は、ここ。
たとえば、下記のような基準があるがこれをあ盛らなくてよいということだ。

旅館業法の対象であれば、学校や幼稚園や児童福祉施設から100m以内に作る場合には、国立学校であれば国、都道府県ならその行政などの意見を求めなければならないことになっているが、それも除外されてしまう。
学校の隣だろうが、児童養護施設の向かいだろうが、旅館、ホテル、簡易宿泊所を作って良いことになる。

だから、旅館業者とのすみわけで7泊以上としたという大田区の説明もある。(条例概要の⑬)

これが、オリンピックに向け、増えることが予想される外国人旅行客のための「より安心、快適な宿泊施設の提供」が、旅館業法の適用除外だろうか。

ここに自ら勇んで手を挙げた大田区は、何をしようとしているのだろうか。

大田区が条例で定めるのはたった3つ。(条例の概要のアンダーライン⑭⑮⑯)

(1)7泊以上の滞在を対象とする
(2)大田区長等が、施設に立ち入り、質問できる
(3)作る前に近隣住民に説明する

こうなると、いよいよ、奈須りえ的に心配している、外国人労働者のための環境をさらに劣悪化させるドヤを大田区自ら条例で合法化することにならないだろうか。

『大田区の民泊条例』で環境の悪化したドヤに住む外国人労働者が増える心配  クリックすると記事のサイトへ

そもそも、国家戦略特区は、特区内で規制緩和による事業で利益をあげる事業者自らが提案し、特別区域会議で認定される仕組み。
旅館業法の規制の特例措置も、特区法で定められている。
大きな社会問題になっている簡易宿所のような施設だが、さらに上記の表の赤字のような規制もなくして合法化し、そこで大田区はどんな役割を担おうというのだろうか。
条例概要では、基準も定めず届け出も求めていない。

大田区が行うのは、これまでのホテル旅館などの許可権者である東京都とすみわけ。矛盾をきたさないためではないか。

この条例が施行されれば、トラブルを避けることは難しい。大田区は、行政の信頼を大きく失うことをよしとしてこの条例を制定するのだろうか。

特に問題なのは、7泊以上でも、また川崎市の簡易宿所の火災でもわかるように、この条例が、旅館でありながら限りなく「住まい」に近いということだ。

となれば、大田区のワンルームマンションの最低面積25㎡が形骸化しないか。
これまで、大田区が取り組んできた様々なまちづくり政策との矛盾もまねくことになる。


民泊条例は、大田区が国家戦略特区だから制定される。
国家戦略特区法は、投資家のために現在ある法令の一部または全部をなくすことで利益をあげる経済政策のため、現在ある法令が守ってきた地域住民の環境や健康や安全を侵害することになる可能性がある。経済利益優先の法律。


その区域で規制緩和(概要文中「規制改革によるプロジェクト」)を行うことで経済利益を得る事業者が提案するとされている。
大田区が、ホテル業を行うことはあり得ず、経済利益を得る事業者になり替わり、提案したということか。

賃貸借契約に基づき一定期間以上使用
長期滞在が前提。官公庁の調査より外国人旅客の半数以上が宿泊数6泊以下のため、外国人観光客は想定しにくい。後段で大田区が示すようにビジネスが目的か。

大田区長が認定する
大田区が施設にかかわる防火、治安、環境、滞在者の健康等々、責任を持てるか。

旅館業法の適用が除外


施行令第12条第2号の規定により、最低滞在期間
大田区が条例制定で選べるのは、7泊から10泊の間のこの最低滞在期間だけではないか。

要件に該当しなくなったときや認定要件が守られていない場合には、認定を取り消すことができる。
施設の要件とは何を意味するのか。条例の概要から見るに、最低宿泊数程度である。7泊以下にもかかわらず、宿泊させたとき取り消すということか。条例には取り消しについての条文は想定されていない。

立ち入り調査等行う権限
立ち入り質問できるだけで何を規制し、守れるか。そもそも、施設の要件が不明。
施設の設置などの大きな権限を持つのは、国家戦略特別区域会議。だとすれば、大田区の権限とは何か。

近隣住民への丁寧な説明。
近隣住民の範囲が明らかでないうえ、説明の形態も規定されておらず、マンション建設同様、チラシがポストにいられていれば説明したものとみなされる可能性が高い。また、説明すればよいとすれば、地域の住環境や街並みを守るためにこの説明がどういった役割をはたすことを期待しているのか不明。

地域のホテルや旅館との役割分担
7泊以上の長期滞在者を対象とすることでの役割分担とは何か。ホテルや旅館も長期滞在者は重要な顧客。
7泊以上の外国人旅客で分けることの意味は何か。安価な労働力としての外国人を想定しているのではないか。

条例施行日
実施区域
ともに大田区で決めることができない。