2021年度大田区予算の歳入の住民税・法人住民税減から見える「日本の民営化や公民連携など施策の課題・問題」

2021年度予算は過去最高規模の2938億円ですが、それを支える歳入の住民税も、特別区交付金も昨年より減収です。
一方で、国都交付金が歳入に占める割合は27%にもなっています。
地方分権で財源権限が地方に移譲されましたが、歳入からみれば、国への依存はさらに強まっています。

基金からの繰入額も過去最高規模の18億円です。
118億円もの財源を基金から繰り入れなければ予算編成できない状況だということです。

特別区民税、特別区交付金が減少している原因が、この間進めてきた政策にあり、それがコロナで更に税収減につながることから、政策転換を求める質問をしました。


フェアな民主主義 奈須りえです。

家計であれば、賃金収入などがまず決まり、その収入にもとづいて支出を決めますが、大田区や国の財政は、政治過程で必要な支出を決めてから、それをまかなう収入を決めることになる。と財務省のHPに書かれています。

「必要」が増えれば増えるほど、収入を増やさなければならず、収入をふやすということは、私たちの税負担が増えるということです

今はまだ決まっていない新空港線も、田園調布せせらぎ公園の体育館建設も、蒲田駅東口の再開発も、大森駅池上通り拡幅整備や駅前広場整備も、厳密に言えば、財源に余裕があるから、確保の見通しがたっているから提案されているわけではなく、必要だと合意形成され事業が決まってから、財源の確保がはじまるわけです。

行政や政治から、どれくらいの住民福祉をどの程度の税負担で提供され、どういった生活の安心を手に入れられるか、が示されないまま、利便性、快適性、安全、安心、にぎわい、国際競争力、ほかのキャッチコピー的な言葉で、莫大な税金投入を伴う事業が「決められている」のが、今の大田区政ではないでしょうか。

日本で一番税収が豊かな23区だから、新しくて、立派なインフラが、数多くあるのは当然だというのが大田区の考えかもしれません。

しかし、ふるさと納税、法人住民税国税化、消費税算定基準変更など、不合理な税制改正による大田区の税収の区外流出が始まり、そうもいっていられなくなっています。

それでも、大田区の税金の使い方の優先順位はかわらず、今回の2021年度予算編成は昨年度に引き続き、過去最高規模になりました。

そこで、今日は、歳入からみた大田区の住民福祉や財政の持続可能性と課題について取り上げたいと思います。

2021年度予算の歳入をみると、いくつかの大きな変化がみられます。

その一つが、歳入の中の最も大きな割合を占める区分が、国・都支出金になっていることです。

これまでは、特別区民税か特別区交付金が、最も多い財源でしたが、2021年度予算2938億円中、国・都支出金が27.3%802億円になっています。

区長が最初に編成した2008年度予算総額2188億円のうち国・都支出金が342億円ですから、一般会計総額では1.34倍程度にも関らず、2.34倍と2倍以上に増えていて、予算に占める割合も、15.6%から27.3%になりました。

生活保護費増に加え、幼児教育無償化などが影響しているのだと思いますが、地方分権で財源権限が地方に移譲されましたが、歳入からみれば、国への依存はさらに強まっています。

また、繰入金の額が180億円ですが、うち財政基金の繰入額118億円は、私の調べた限り過去最高額だと思います。

2018年度予算の繰り入れ金総額が190億円。(そのうえ、臨時会の補正予算で羽田空港跡地165億円を特定目的基金から繰り入れて購入していますが、)財政基金の繰入額だけみると2018年度予算で115億円で、2021年度予算はそれを上回る118億円です。

 さかのぼって調べたら決算ですが2005年から2009年まで基金からの繰り入れはしていませんでした。118億円もの財源を基金から繰り入れなければ予算編成できない状況の危うさを感じていただけるのではないかと思います。

 これらから、過去最高規模の予算と言いながら、国や東京都の補助金に頼っている事業が増えていることや、基金を取り崩さなければ区民生活を維持するための事業を維持できない財政構造になっていることが見えてきます。

加えて、特別区民税と、特別区交付金という、大田区の二大一般財源とも言うべき二つの税収が両方ともに減収になっていることが、本年度の注目すべき、変化だと思います。これはリーマンショック以来のことです。

特別区民税は、ふるさと納税、転入人口の減による労働人口の減少などの影響ほかで17億円の減収を見込んでいます。また、特別区交付金は、法人住民税国税化やコロナの感染防止策に伴う景気への影響ほかで28億円の減収を見込んでいます。

  • 1問目

そこでうかがいます。特別区民税と特別区交付金が減るのは、2021年度だけの一時的なことですか。

2022年度以降増収の見込みはありますか

 

 特に、人口の増減は、保育園、学校、病院、公園、交通、道路、駅前広場、清掃工場ほか、社会保障やインフラといった、行政計画において欠かせない重要な要素です。常任委員会で昨日示されたばかりの新おおた重点プログラムに将来の人口推計が示されていますが、ピークは2043年ですから、最初から、誤った推計に基づいた計画を今後執行することになります。

 予算の説明の中でも、また、各種の報道でも言われているように、大田区のような都心部も、マンション建設などにより転入増を続けてきましたが、不動産の高騰やコロナにより転入が止まり不動産購入なども周辺部に転じています。

 私は大田区のような都心部は、住環境という点からも、また、水や緑や自然豊かなまちにするためにも、必ずしも今ほど過密である必要は無いと思っています。

しかし、

例えば、大田区は、

アフターコロナでテレワークと言っていますから、大田区民が区外転出することを推奨しているようなものです。

一方で、こうした人口減による税収の減という状況が起きています。

  • 2問目の質問です。

大田区は、区外転出による弊害、例えば税収減は問題ないと思っているのですか。

労働者、雇用者・株主、行政大田区など、立場が違えば、テレワークについての効果と弊害についての考え方も違うと思います。

大田区は、庁内でテレワークを推進していますが、区民の区外転出も推奨しているのでしょうか。

テレワークは、毎日通勤を要しないことから、必ずしも都心に住む必要がないため、広くて環境の良い住宅を安く借りたり、買ったりできるのがメリットだと思います。都心で地価が高いうえ、緑を1300本切って区民から批判され続けても一向に耳を傾けない無秩序な都市計画やまちづくりを進めている大田区が、テレワークの居住先として転入先に選ばれるのではないか心配です。

テレワークを推奨するのであれば、そもそもの大田区のまちづくりから変えていくべきだと思います。

 残念ながら大田区の都市計画の権限は限界がありますが、私は、何よりも問題なのが、大田区の人口の適正規模が無いままに、都市計画やまちづくりが進められていることだと思います。

 特別区民税の減収の要因には、一人ひとりの所得の減という要因もあると思います。

そこでうかがいます。

大田区が、一人ひとりの所得を上げる努力をしているかと言えば、民営化で公務労働を大幅に削減し、同じ仕事を低賃金で働く雇用を増やしています。

そこで、③問目ではなく④問目の質問をします。

民営化や、指定管理者制度の導入などで広げてきた低賃金労働から再公営化するなど、大田区として、区民の所得をあげる施策はありますか。

 

転入の減少は、不動産の高騰など、大田区だけでは、どうすることもできない部分もあると思いますが、民営化をこれ以上進めない、再公営化できる分野は再公営化するなどして、安定した雇用を作り出すことは大田区でできることです。

 

それこそが、健全な財政につながることだと思います。

法人減縮小に伴う特別区交付金減

一方で、減収しているのが、特別区交付金のなかでも、法人住民税の減少です。

昨日の共同通信の報道で、東京商工リサーチが8日、2月の全国の企業倒産件数(負債額1千万円以上)が前年同月比31.5%減の44一方で、経済の影響をうけ減収しているのが、金の中でも、法人住民税の減少です。

6件となり、8カ月続けて前年実績を下回ったとありました。

新型コロナウイルス感染拡大を受けた実質無利子・無担保融資といった公的支援が引き続き効果を発揮した、としている一方で、

コロナ関連倒産は114件で月間の最多を更新。増える傾向(増勢)が鮮明になっており、さらなる増加が懸念される。とも報道しています。

融資が効を奏してコロナ倒産が防げているようにみえて、実は増えていると言っているわけですが、業界誌などは、2021年のM&A(企業の合併・買収)が再び増加基調に転じる見通しをたてていますから、倒産や廃業でなく、業績悪化に伴い合併や買収が進んでいるということだと思います。「ポストコロナ」を見据えた消費構造の変化に加え、借入金でなんとか持ちこたえてきた日本の老舗や優良企業がグローバル資本・大資本の傘下に入ると言った報道も聞こえてきます。

 廃業や、合併・買収に伴う、従業員数、給与体系の見直しなども、税収に大きく影響することが予想されます。

 

 一般質問でも取り上げましたが、国や東京都や大田区のコロナ感染防止策の不備により、国内の中小企業を中心に大きな打撃を受けていて、それが雇用や所得、そして税収にも影響を及ぼそうとしています。

特に、私が疑問に思うのが、

  • 法人住民税に占める中小企業の影響額が大きいにも関らず、コロナの自粛や時短で経営に深刻な影響が及んでいる中小企業の経営者と従業員を、国、都、大田区が、本気で守ろうとしていないことです。
  • そこでうかがいます。

先日の一般質問で、海外と日本を比べることはできないと答弁されましたが、その後、大田区は、ジェトロからの情報提供をもとに、日本の支援策とドイツの支援策を比べ、どこに問題があるか検証しましたか。

このまま、大田区の飲食店や仲卸しほか、コロナの感染防止のためだからと国や都や大田区から厳しく自粛や時短を要請されている中小企業、小規模事業者の経営悪化を放置し、税収の減にはなりませんか。

 

景況の悪化などに伴い特別区交付金の減収が続くかもしれないということは、税収を支える区民の生業(なりわい)やそれに伴う雇用が悪化するため、大変に深刻な問題だと思います。

それを、救えている国がある一方で、取り組まずに政治が放置しているのを見るのは、非常につらいものがあります。

大田区では直接できなくても、国や都に声をあげるべきです。

一方、

特別区交付金は一般財源で、使途の限定されない財源です。

三位一体の改革により、特別区交付金割合が52%から55%に変更されたのは、大田区など基礎自治体が社会保障の責任主体になったからですが、大田区は、その社会保障財源として特別区交付金割合が増える2007年に60億円、2008年に80億円、空港跡地のための基金に積み立て、2018年に165億円で羽田空港跡地を購入してしまいました。

特別区交付金という色のついていない使途の自由な財源を、特定目的基金に積み立てて社会保障に使えない財源として確保し、使ったわけです。

この三位一体の改革など財源権限の委譲が行われ福祉事業に株式会社の参入が始まった構造改革の頃から、大田区は社会保障の責任主体に変わったにも関らず、住民福祉を広い意味に捉えて優先順位の低い事業に投入する様になります。

先日の最終補正予算で、新空港線積立基金、公共施設整備基金に積み立てる余裕があったのは、必ずしもコロナだけが理由ではなく、財調割合が増え、住民税定率化以降、本来、子育てや介護や障害福祉など社会保障に使うべき財源をつかわず、余らせて、社会保障以外の財源に使ってきたからだと言うことです。2021年度の予算案で福祉タクシーが廃止なることで困っている方からお話をうかがいました。コロナで、聖域なき全事務事業の見直しをすると区長は言いましたが、その結果が、車いすの障がい者の福祉タクシーの廃止で、聖域とは、私が指摘してきた通り、住民福祉だったということです。

こうして、社会保障に財源を使わず、基金に積み立て、色のついていない財源の使途を限定させてしまうのも問題ですが、たとえば今東京都と調整をしている新空港線の財政負担などは、特別区交付金が交付される前に、色のついていない財源に東京都が色を付けて大田区に交付する様なもので、さらに問題です。

特別区交付金は一般財源のはずですが、交付される前から特定財源のようになり始めています。

社会保障財源確保

ふるさと納税、法人住民税国税化、消費税の算定基準の変更、国の不合理な税制改正や人口減少に伴う労働人口の減少や区外からの転入が減るなどにより、今後の、税収の増加が見込むには厳しい状況です。

ところが、人口を転出させることになる、テレワークを進め、民営化で所得を減らして住民税の減少要因をまねき、コロナ感染防止策の不備で経営の悪化を余儀なくされている企業に対して、施策の検証も転換も、国への要求もしていない、大田区は、自らとっている施策が税収をへらしているのです。

  • そこでうかがいます。

2021年度予算だけでなく、さらに労働人口の減と、中小企業の統廃合による法人税住民税の減に伴う特別区交付金などの減収が予想されますが、今後、どうやって住民福祉を確保していこうと考えていますか。

 

この間大田区は、民営化を推進し、安定した暮らしに必要な所得が確保された公務員を減らして、低賃金労働を増やしてきました。

また、公民連携で、行政情報、企業情報、個人情報をマイナンバーで紐づけて企業の収益のために使わせようとしています。

このまま進めば、2001年の中央省庁再編で、内閣総理大臣所管の社会保障制度につき調査、審議及び勧告を行う「社会保障制度審議会」を廃止してできた、「経済財政諮問会議」が、経済のためにこの国の財政や予算が編成されるようになっていますから、さらに国民の所得や社会保障に投入される予算も減ってしまうでしょう。

税負担が大きく、可処分所得が少なくても、社会保障が整っていれば、安心して暮らしていくことができます。

最低限のセイフティーネットがあり、可処分所得が大きければ、その分のリスクは区民がとるとしても、そういうモデルもあると思います。

ところが、今、そのどちらでもない所得も少なく、社会保障も脆弱な社会へ突き進んでいて、コロナでそれに拍車がかかってきています。

このまま民営化を進め、公民連携で民間事業に大田区の情報を提供し、インフラ整備、公共施設整備、ぼうさいまちづくり等々で、莫大な財源が必要になりますが、それに見合った税収を支える区民も区内企業も減り、区民の所得も区内企業の所得も減ると、増税しない限り財源は減るばかりです。

このままでは、大田区の公共施設の複合化で無理やり作った「未利用地」を売却したり貸し付けたりしなければならなくなるでしょう。

この間、企業に土地を貸し付ける音での財産収入が増えていますが、区民の財産を区民がほんの一部それも有料で借りてしか使えず、一部の投資家が使い投資利益をあげています。

これが公有財産の適正な使い方でしょうか。

ベーシックインカムの議論が始まっていますが、このみちの先にあるベーシックインカムは、税収の減に伴う、社会保障費の更なる低減のための方策でしかないと思います。

  • そこでうかがいます。

公共分野の民営化、公民連携など、

大田区が国の施策に無批判に追従してきた点は問題ですし、大田区の税金の使い方の優先順位にも問題はあります。

しかし、

区民の雇用や所得を守り、地域内経済の循環を充実させるため、公民連携、民営化で税金の一部が投資家利益に流れる非効率な税金の使い方を見直し、少なくとも、区でできる範囲から少しずつでも政策転換をはかるべきではないでしょうか。