大田区の入札がなくなる心配:池上図書館移設のための工事の事例から

2019第二回定例会補正予算 (クリックすると議案へ)
には、 池上図書館移転による賃借ビル(床面積1,026㎡)の内装工事の債務負担行為(5億1,454万円)
が計上されています。
私たちの税金で行う工事や物品購入は、原則、入札で行われています。

金額が少額な場合だと相見積もりと言って、いくつかの業者から見積もりを取り寄せ、一番安いところから購入することもあります。

入札や相見積もりは、みんなのお金で、効果的(安くて良いものを買う)に公平に使う(広く機会を与える)ためのしくみです。

2019年第二回定例会の補正予算に、5億円を超える工事契約を「入札無し」で行なう事例がありました。理由があいまいで、これを認めると、入札の原則が崩れるのではないかと考え、補正予算には賛成できませんでした。みなさんはどうお考えになりますか。

2019年度第二回定例会補正予算には、現在ある池上図書館(床面積1204㎡)を賃借する池上駅ビル4階に移転させ、床面積1,026㎡を整備するための工事費5億1454万円が債務負担行為として、今年度0円で2020年度に全額計上されています。
大田区が、図書館を移転させる賃借スペースの内装工事を、駅ビル施主に発注する協定を結んだからです。
一般的にビルをスケルトンで借りる場合、内装工事は、賃借人が行います。大田区が内装工事を行えば、予定価格1億5,000万円以上の工事ですから、地方自治法(昭和22年法律第67号)第96条第1項第5号の規定により議会の議決に付さなければならない契約になりますし、当然、競争入札の対象ですが、協定により駅ビルの施主に発注することに決めると入札にも契約議案にもなりません。
内装工事は、駅ビル施主が依頼する事業者が行い、工事費は、大田区が負担金として駅ビル事業者に支払う金額がこの債務負担工事にあがっている5億1454万円です。
入札は、競争することで安い価格で質の良いものを入手すること、しかも、そこに、公平性が担保されるために行っています。
ところが、協定を締結したことで内装工事は、公募による入札ではなく、大田区が、駅ビル施主が依頼する事業者に行わせることになります。
協定を 締結したことで入札をしないとした合理性、正当性は抽象的で、こうしたやり方を許せば、入札制度の基本がくずれ、協定を締結さえすれば、入札しないで、協定を締結した相手方が選んだ事業者が大田区の工事を受注できることになります。
大田区の公の施設の民営化が進んでいますが、たとえば、施設を管理運営する指定管理者と大田区とが協定を締結すれば、今は、軽微な修繕しか指定管理者に許していませんが、公の施設の大規模修繕を指定管理者が発注することを排除できなくなる恐れがあります。
そうなると指定管理者は、公の施設の使用許可権限だけでなく、施設の管理運営まで大田区との協定一つでグループ会社などに発注しそこからも利益を上げられる可能性があり、工事が割高になったり、安全性や機能など質の担保が難しくなる可能性があります

一方で、今回の内装工事の工事負担金は、1,026㎡の内装工事と共用部分の工事に5億1454万円で、㎡当たり単価は、50万1500円、一坪165万4953円と高額です。
特に問題なのが、内装工事のB工事に加え、書棚の設置などC工事までこの5億1454万円に含めています。大田区は、施主に発注し、施主が工事業者に発注するので、間接的に発注することになり、それだけ余分なコストがかかることにならないでしょうか。デザインなどの自由度が制限されることはないでしょうか。
しかも、賃貸借契約は10年と聞いていますが、今回、C工事含めた内装工事を駅ビル施主が発注する事業者が行うことになれば、今後の賃貸部分の維持管理や内装の変更に、駅ビル施主の意向が影響し、大田区が主体的に行っていくことが出来なくなるのではないかと心配です。
商業施設は公共施設に比べれば圧倒的に短いスパンで、顧客を引き付けるために大規模改修工事を行っているのを目にします。
空調の点検や内装の変更などに、ビルオーナーの意向が影響することになれば、それだけ余分なコスト負担が生じますが、そうした場合に、「協議する」という約束しかないと聞いてますが、安定的な図書館事業が行えるのか心配です。
今回、大田区が入居すると決めている駅ビルは、鉄道駅総合改善事業費補助(池上駅)総事業費として、総建設費80億円に対し、大田区だけでも約12億円の補助を出している事業です。その上、内装工事も駅ビル施主に行わせますが、10年後の賃貸借契約期間終了後の更新について、通常の新法に基づく、賃貸借契約程度の権利しかもてず、「協議で決める」と言います
土地も建物も大田区の所有の、今池上図書館のある現地で図書館を建て替えたほうがどれだけ良い建物が建てられるでしょうか。
公民連携とは、競争性無き民間事業者優遇策だったのでしょうか。
そもそもの図書館移転の優位性も見当たらず、反対です。