幼児教育無償化のかげで起きる幼稚園が減ってしまう心配

2019第二回定例会補正予算(クリックすると補正予算議案へ)
第二回定例会の補正予算には、
 幼児教育無償化のための補正予算
が計上されています。
また、第50号議案 大田区保育の必要性の認定等に関する条例の一部を改正する条例
で、幼児教育無償化のため、ひと月68時間働かないと認可保育園に入れなかった要件を、48時間に変える条例改正が行われました。
国が消費税の増税分を使い、3~5歳までの保育園・幼稚園の無償化を始めると言っています。
私は、教育や保育はじめとした福祉や教育、医療などは、要件があるのですが、基本は無償にすべきと考えています。

では、タダだったら、どんな影響が及んでも良いのでしょうか。

現政権が考え、大田区が行おうとしている、今回の幼児教育の無償化は、背景にはこんな心配(幼稚園が減ってしまう)があります。幼児教育無償化は誰のために行われているのでしょう。

幼児教育無償化は、
認可保育園、認可外保育園、幼稚園の3~5歳までの保育料や月謝をただにするものです。

誰もがタダではなく
月に48時間以上働く方たちがただになります。
以前は、基本、保育園は両親ともに働いている方たちは保育園を選び、そうでない方や、仕事中も子育てをしてもらえる環境にある方が幼稚園を選んでいましたが、法律がかわり、大田区では68時間以上働いていたら保育園でも幼稚園でも空きがあれば入れることになりました。
今は、働いている時間数と、稼いでいるお金や支払う保育料、子育てに対する考え方、などを総合的に判断して、どちらを選ぶか考えている方が多かったと思いますが、両方ただになるので、保育園と幼稚園がさらに競争関係におかれることになります。
認可保育園はざっと計算しても3~5歳で800人くらいの空きがありますし、認証保育所もこれに加えて40人くらい空きがあります。

しかも、月68時間以上働くことが条件でしたが、大田区は今回条例を改正して月48時間働けば認可保育園も入れるようになりました。
ところが、教育内容や環境だけでなく、こんな認可保育園に有利な条件
・そもそもの補助金が違うので幼稚園教諭を集めにくく、補助金がでても延長保育できない、可能性がある
・認可保育園は保育料負担が最初から無いが、認可外保育園、幼稚園は、いったん保育料・月謝を立て替え払いして、3か月に1度大田区から還付されるしくみ。
・保育園は大田区が給食代を補助するので、完全無償だが、
といった違いがあるので、幼稚園が選ばれなくなるのではないかと心配しています。
大田区長は、私立幼稚園連合会の新年会で、「幼稚園をお守りします」と言っていましたが、だったらなぜ、無償化の要件を68時間から48時間にしたのでしょう。
幼稚園の月謝を無償にできるよう(医療費の無償化と同様の仕組みを使うなどして)工夫しないのでしょう。
以下、無償化の働く要件を68時間から48時間にした条例改正についての奈須りえの意見(討論)です。
この議案に反対したのは奈須りえだけでした。

第50号議案 大田区保育の必要性の認定等に関する条例の一部を改正する条例
に反対の立場から討論いたします。
この条例は、幼児教育無償化のため、保育の必要性の認定要件を64時間以上から48時間以上に引き下げ、無償化の対象を広げるための条例改正です。

 教育費を無償化することは、基本的には賛成で、大切なことですが、前提となる担い手の問題や、方法の問題があります。
今回の幼児教育無償化は、3歳から5歳までの教育機関を私立認可保育園に最終的に誘導することになる可能性が高く、問題だと考えます。
 なぜなら、
・認可保育園・認可外保育園・幼稚園が同時に無償化されれば、補助金や経営の前提の異なる幼稚園は、教諭の募集に苦労されているなど、預かり保育のための教諭を確保することが難しい状況をはじめ、保育園との競争に不利であること
・認可保育園以外の幼稚園や認証保育所など認可外保育園は、償還払いのため、3か月分の一時的な費用負担が生じますが、認可保育園は費用負担なく子どもを通わせることができること。
・保育園は給食費の補助を支給するため、昼食代含め無償ですが、幼稚園は、お昼代は、お弁当を作る場合でも、給食の場合でも、保護者負担であること
こうした違いがあるにも関わらず、大田区は、保育の必要性の認定要件を64時間以上から48時間以上に引き下げ、無償化の対象を広げたため、より多くの方たちが幼稚園と保育園を費用負担以外の要素で選ぶことになること。そうなると、先ほど指摘した、人材確保や償還払い、お弁当の問題が、大きく影響する可能性があること。
大田区は、こうした幼児教育無償化による影響を想定せず、そのため、配慮や対策も講じていないことから、教育や福祉という本来市場経済原理で競争することがなじまない分野での、不当な競争を招く恐れがあり、反対です。