特別区協議会が、開催した大森彌東大名誉教授の「特別区制度・自治の70年」を受講しました。

講演の最後に、質疑応答の時間があり、何人かが発言なさった後に「大田区の議員、質問せよ」とあてられました。

都区制度は、複雑でわかりにくいのですが、良い機会なので、私の考えを記しておきたいと思います。
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特別区制度は東京都と23区の特別な関係のことで、大森彌先生もご指摘の通り根幹は「都区財政調整制度」です。

なかなか、知られていなくて、財政学者と言われる著名なかたでも、この問題について、伺うと「詳しくないから、、、」と逃げ腰です。

ところが、
◉日本で最も財政が豊かな23区で、保育園の待機児や特養の待機者が多いのはなぜか
◉保育園や特養に使うお金は足りないのに、東京では、再開発やオリンピック、道路鉄道交通網インフラ整備、臨海部の開発などがなぜ目白押しなのか

といった疑問の答えの一つに、この「都区財政調整制度」があると私は考えています。

23区の場合、本来、各区(基礎自治体)の財源である
①固定資産税
②法人住民税
③都市計画税
などが、東京都の税収になっているのです。

昭和18年、戦時体制下において「東京都制」が敷かれ、それまでの東京府、東京市は廃止され、東京都が誕生しました。


23区(当時は35区)は、東京市の内部団体という位置づけでしたが、戦後の長い自治権各準運動の中、平成12年にようやく、東京都の内部団体から脱却して、基礎的自治体として位置づけられました。

各区は、区長の公選制を獲得できていない時も、公選による区議会があり、23区の自治権拡充運動に区議会が果たした役割の大きいことがわかります。

詳細は→www.tokyo23city-kuchokai.jp/gaiyo/tokubetsu.html

現在も都と区の間には、内部団体だった時の名残が残っています。

それが、都区財政調整制度です。

本来、各区の税収になる
①固定資産税
②法人住民税
③都市計画税
などを東京都が徴税しているのです。23区では、固定資産税の請求が都税事務所から来ていますね。

そして、東京都は、集めた税収のうち45%を「大都市事務」という一体的に行わなければならない事務があるという名目で、東京都の税収にして、残り55%を各区の必要に応じて分配しています。

東京都が基礎自治体であれば、23区の財源になるべき財源は、45%と都市計画税あわせて約1兆円にもなります。

これで、東京都は、上下水道や消防、今、練馬区以外の22区が行おうとしている児童相談所などの事業のために使ったり、オリンピック開催のための費用にしたり、築地市場の移転や、臨海部の再開発に使ってきました。
オリンピックは、世界では、市が開催しています。いまだに、東京都は廃止したはずの東京市を引きずって都政を行っているように見えます。

都区財政調整制度は、
【1】偏りのある23区の財政の均衡を保つには良い仕組みですが、
【2】果たして、東京都の取り分45%は適正でしょうか。
【3】23区の財源を、あたかも、東京市が存在するがごとく、東京の歳入にしていますが、23区の側で徴税分配のしくみを作ることはできないでしょうか。

たとえば、大田区は平成29年度の交付額は、当初算定で約640億円です。
www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/08/07/09_01.html

東京都が大都市事務として、23区の一体性を保つために必要な財源は、23区が基準を作り、交付するのです。

私は、
【1】地方分権で、社会保障の責任主体が基礎自治体(23区)になったこと
【2】特に2000年以降、規制緩和で、社会経済状況が変わり、雇用が流動化して賃金が下がり、雇用が不安定になり、女性も男性も高齢者も働く必要がでて、23区に保育や介護など社会保障のニーズが高まったこと
【3】都市部は、核家族で、一次産業が少なく、また個人事業主も減ってきて、資本主義経済システムの中で人に雇われて働く人が多いこと
などにより、都市部ほど、保育や介護の需要が大きくなっています。

ところが、その社会保障需要の一番大きな23区では、土地が高いからたくさん入ってくる固定資産税も、大企業がたくさんあるから、入ってくる法人住民税も、東京都が45%、1兆円近くもとってしまって、23区の社会保障のために十分に税金を使うことができません。果たして、東京都の財布に入る45%は適正でしょうか。最終的に東京都の税収になる45%は、明細の無い請求書という言われ方もしています。

私は、この都区財政調整制度の問題をうったえて2013年に都議会議員選挙に立候補したのですが、うまく伝えられずに、落選しました。

問題は、
東京一極集中により、多くの労働力を確保できることで、高い収益率の経済活動を成り立たせている一方で、
そこから生み出される固定資産税や法人住民税が、就労を維持するための保育や介護など住民福祉に使われず、
再開発やオリンピック、道路鉄道交通網インフラ整備、臨海部の開発に使われることを許している構図になっていることです。

もちろん、大田区の税金の使い方にも改善すべきところはありますが。
私は、23区側の社会保障需要の増大と、それを担保する財源は、今の固定化した都区財政調整制度では、対応できないと考えています。

あてられて、私は、こうした問題意識をお伝えしたうえで、大森彌東大名誉教授に、協議会の中でこうした問題についてどのような議論が行われているのか、質問しました。
大森彌東大名誉教授からは「各区で、特別委員会を設置すべき」とアドバイスいただきました。
それだけ、重要な問題ということではないでしょうか。

戦前に東京市が東京都になり、東京都と特別区は長い歴史の中で、いまのかたちを作り上げてきました。
しかし、都と区の関係は、未完の改革と言われているように、改善すべき課題が残されていますし、地方分権による新たな問題も生じてきています。

一方、
大田区では、ことあるごとに、都区財調に算定してもらう、といった発言をします。
これは、55%の中の話で、55%を23区に分けるときの基準に加えるかどうかという話です。
財調割合が、60%になったり65%になったりするわけではありません。

毎年増えている、財政調整算定に加える費目は、土木や建設などインフラ需要がほとんどです。蒲蒲線も、いま東京都と大田区では、財政調整算定するか(どう算定するか)の段階だそうです。

本来、固定資産税や法人住民税などの各区への交付分は自由に使えるハズの財源ですが、財調算定することで、東京都から23区に交付される財源の一部が、土木や建設などにしか使えないひも付き財源になるということです。

こうした状況もまた、23区の住民福祉を先送りする原因になっていると考えています。