【社会保障に神の見えざる手は働かない】

厚生労働省老健局長・社会援護局長をつとめた国際医療福祉大学大学院教授の中村秀一氏は、社会保障は自動的に決まるのではなく、人間が決めることであると言っています。神の見えざる手は働かない、ということです。
 民営化しても、保育事業者には、行った事業に応じ、人件費基準額に基づいた公定価格が支払われていて、競争によるサービス向上や価格の低下は起きないのです。
これは、全部、人間が決めていること=政治が決めていること、だからです。 
【気になる社会保障分野の低賃金】

そこで問題なのが、民営事業者の保育士・介護従事者などの賃金が低くなっていることで、大きな社会問題にもなっています。
【事業者に支払われる人件費相当額はどこへ】
公定価格に定められている、人件費基準額相当の賃金を、支払っていない事業者があると言うことです。
コストが安くなったか検証できず、現場労働者に十分な賃金が支払われないにもかかわらず、民間事業者に委託することのメリットはどこにあるでしょうか。
「社位階的セーフティーネット」や「所得再分配」と共に、リスク分散は社会保障の重要な機能です。私は、今の社会のリスクは、雇用を失うことや低賃金になることだと考えています。
③そこでうかがいます。区政課題におけるもっとも大きな区民生活におけるリスクは何だと思いますか。
 【社会保障で救われない「元気だけれど働けない」「元気だけれど低賃金」】
日本の社会保障政策は、高齢者への年金や医療と働けなくなった方への生活保護が中心で、「元気だけれど働けない」「元気だけれど低賃金」の人たちをいまの社会保障では救うことができません。
大田区として何ができるかというヒントを求め、今年の7月末に韓国ソウル市に行って、特区と労働施策を調査してきました。
以下、細かい数字は地方自治総研の上林陽治研究員のレポートから引用しています。
 
【激似の韓国と日本の施策】
韓国と日本の施策は、
🔲国家戦略特区と経済特別区
🔲民営化、🔲地方分権など施策が同じで、
🔲岩盤規制と規制の大岩など使う言葉まで似ていました。
背景に、韓国は韓米FTA、日本は日米FTAという貿易の自由化があり、その影響で公共サービスの営利企業への開放やそのために規制をなくしているということです。
 
【韓国では正規化、直接雇用化で賃金16%アップ、5%経費削減】
そうした韓国でも、労働の非正規化が加速していて、2004年に37.0%とピークに達し、ソウル市では、直接間接雇用の非正規労働者の正規化事業に取り組み、成果をあげています。
しかも、ソウル市は業務委託から直接雇用にすることで、全体経費を5%削減するとともに人件費は16%アップしています。
 
【事業者利益を減らしたら、人件費をあげ全体経費を下げられた】
公務員制度や最低賃金の定め方など違いがあり、そのまま採用することはできませんが、注目すべきは、委託費に含まれる事業者の利益=株主配当が大幅に削減されたため、人件費をあげ、全体経費を下げることが出来たと言っていることです。
ソウル市の受託事業者は、人件費というコストを下げてもうけていた ということです。
 
ソウル市は公務労働だけでなく、人間らしい生活を保障する生活賃金制度を民間分野にも広げようとしています。2017年の韓国全土の法定最賃が6470ウオンに対し、ソウル市の生活賃金は1.27倍の8197ウオン。
こうした取り組みは周辺自治体にも広がっていて、国の施策にも影響し、それが民間企業にも広がり、正規採用を増やす企業も増えています。
日本でも、非正規労働者は4割と言われていて、韓国以上に深刻な状況です。
④そこでうかがいます。
大田区も、民間委託や民営化で進んだ低賃金化・雇用の不安定化を改善するため、直営に戻す、非正規を正規にする・無期契約への転換をはかるなどソウル市の事例を参考に雇用を安定させるべきではないでしょうか。できないとするとどこに課題がありますか。
 【委託の直接・無期雇用化、大田区で試算すると人件費55億円アップしても、28億円のコストダウン】
大田区の委託や民営化、指定管理者などの数字の合計を平成27年28年度決算から拾い集めると、おおよそで、564億円という数字がでました。ソウル市では、この5%の経費削減ができたと言うことですから、仮に同じ人件費割合だとすると人件費で16%55億円増やせるのに、約28億円コストダウンできることになります。
私たちは、給料が高いのに、働かなくて、感じの悪い公務員より、民間が良いと民営化してきましたが、結果として、低賃金労働、不安定雇用を増やしてしまいました。
もちろん、優れた事業者もいて、全ての事業者に、今日の問題があてはまるわけではないと思います。
【民営化で失った子どもたち世代の雇用】
しかし、結果として、私たちは、子どもたちの世代の雇用を民営化で大幅に失ってしまいました。
うかがいますが、
⑤これを放置してよいのでしょうか。
大田区は、民営化による財政へのメリットさえ示すことができないどころか、昨日も、指定管理者制度の利用料金を教えてほしいと言いましたが、昨年は電話ですぐ教えいただけたのに、今年は情報開示請求せよと言います。
地方分権で民営化したら、情報が遠くなっただけでなく、行政が事業者と一体になって、事業者のあらが議会で露呈しないように守っているように見ます。
これが地方分権の実態でしょうか。
 【放置する社会保障で、民営化がまねく低賃金と格差の拡大】
厚生労働省の格差の解消を示す指標となっているジニ係数の調査をみると、高齢者世帯・母子世帯・その他の世帯のなかで、最も社会保障給付の恩恵をうけていないのが母子世帯です。
貧困の調査で有名な安倍あやさんも調査員になっている「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査」は、専業主婦世帯が裕福層と貧困層の二極化していて貧困層でありながら「保育の手だてがない」ことで働けない母親が全体の半数以上を占めていることから、保育園の拡充などで専業主婦世帯の貧困率を引き下げることが可能であると言っています。
そこでうかがいます。
⑥格差の拡大が問題になっていますが、大田区としてすべきは何だと考えますか。
●地方分権だからと引き上げた特別区民税や特別区交付金は、優先課題である保育に使われず、土地購入、インフラ整備、イベントなど、優先順位の低いこと、本来民間が自己資金で行わなければならない分野に投入されてきましたが、保育の拡充こそが都市部の基礎自治体が行うべき最優先課題です。
 
【今こそ、生活者重視の地方分権に!】
⑦もういちど繰り返し、質問します。地方分権で、「生活重視政策」への転換はできましたか。地方分権どころか、中央主権、いえ、企業主権になってはいませんか。
●しかも、地方分権で、営利企業が社会保障を提供した結果、税金が株主配当や内部留保、土地など利益や資産に流れ、同時に低賃金労働者を産み出したため、税金を使えばさらに低賃金労働者を産み出すと言う悪循環に陥っています。
その結果が格差の拡大であり、貧困化です。格差の拡大を解消するためには、もう一度、行政の基本に立ち返ることを求め質問を終わります。