「民営化」公共が営利目的で運営されるということ
民営化により、公共を営利目的で運営することが可能になった。
株式会社が公共を運営するということは、その一部が株主配当や内部留保に流れること。委託や民営化で、公共の民間割合が大きくなればなるほど、株主配当などへ流れる金額が増える。
私は格差拡大の原因の一つは「ここ」にあると思っている。
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保育への株式会社の参入を許したのが、平成12年3月の規制緩和。
たとえば、このことを厚生労働省が「効果」として公表している。
これは、社会福祉法人以外が保育に参入した実績を「効果」として公表しているに過ぎず、株式会社など営利企業が参入したことにより、どのような「効果」がみられるかを公表しているわけではない。
【参考】・・・・・
社会福祉法人以外の民間主体が設置する保育所の認可状況一覧(H12.3.30~H13.4.1)
都道府県名 | 市区町村名 | 保育所名 | 設置主体 | 認可 年月日 |
定員 |
岩手県 | 滝沢村 | ハレルヤ保育園 | 個人 | 13・ 3・30 | 60 |
宮城県 | 仙台市 | 茂庭ピッパラ保育園 | 学校法人 | 13・ 3・30 | 40 |
秋田県 | 秋田市 | こひつじ保育園 | 宗教法人 | 12・ 4・ 1 | 60 |
福島県 | 二本松市 | 子供の館 中里保育園 | 学校法人 | 13・ 3・23 | 45 |
茨城県 | 土浦市 | つくば国際保育園 | 学校法人 | 13・ 3・30 | 60 |
栃木県 | 宇都宮市 | こばと保育園 | 有限会社 | 13・ 3・23 | 40 |
栃木県 | 宇都宮市 | つばさ保育園 | 有限会社 | 13・ 3・23 | 60 |
東京都 | 江戸川区 | 葛西駅前さくら保育園 | 株式会社 | 12・10・ 1 | 60 |
東京都 | 板橋区 | ひまわりベビールーム小竹向原 | 株式会社 | 12・11・ 1 | 24 |
山梨県 | 玉穂町 | チャイルドルーム まみい | 個人 | 13・ 3・30 | 45 |
山梨県 | 昭和町 | 富士桜学園 | 個人 | 13・ 3・30 | 70 |
三重県 | 鈴鹿市 | トーマスぼーや保育園 | 株式会社 | 12・11・29 | 90 |
大阪府 | 豊中市 | ゆたか保育所 | 財団法人 | 13・ 3・30 | 30 |
大阪府 | 豊中市 | あけぼのっこ保育園 | 学校法人 | 13・ 3・30 | 40 |
大阪府 | 池田市 | 天神保育園 | 学校法人 | 13・ 3・30 | 90 |
大阪府 | 池田市 | 中央保育園 | 学校法人 | 13・ 3・30 | 90 |
大阪府 | 豊中市 | 豊南みどり保育園 | 宗教法人 | 13・ 3・30 | 60 |
大阪府 | 豊中市 | 聖ミカエル保育園 | 宗教法人 | 13・ 3・30 | 30 |
大阪府 | 富田林市 | ふれんど保育園 | 個人 | 13・ 3・30 | 29 |
大阪府 | 東大阪市 | くるみ保育園 | NPO | 13・ 3・30 | 20 |
鳥取県 | 米子市 | のぞみ保育園 | 株式会社 | 13・ 3・13 | 20 |
広島県 | 呉市 | 第一保育所 | NPO | 13・ 3・21 | 45 |
広島県 | 呉市 | 後藤保育所 | NPO | 13・ 3・21 | 90 |
山口県 | 下関市 | 和光保育園 | 宗教法人 | 13・ 2・ 1 | 90 |
山口県 | 下関市 | ひまわり保育園 | 宗教法人 | 13・ 3・31 | 60 |
福岡県 | 苅田町 | 善立寺保育園 | 宗教法人 | 13・ 3・26 | 120 |
長崎県 | 郷ノ浦町 | 壱岐保育園 | 個人 | 13・ 4・ 1 | 20 |
(注)この他、公立保育所の株式会社への運営委託が13年4月より東京都三鷹市でスタート。
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それまでは、行政や社会福祉法人など非営利主体がになってきた保育や介護や障害だが、株式会社の参入を許したことで、これらに投入される税金の一部が、株主配当や内部留保に流れるようになった。
法人税を減税し、同じ所得なら配当への課税は所得税に比べて低く、セイフティーネットを必要とする人たちから税金を集め、その税金は、子育て、介護、障害、教育に十分に使われず、使われたとしても、株式会社の参入をみとめたことで公的資金が株式会社に流れるようになっている。
たとえば保育園。公務員が担う時と株式会社が担う時を比較すると、コストは、どうなっているのだろう。
保育士の給与は、株式会社の方が少ないと思う。かなり少ないんじゃないか。
株式会社の配当は、人件費はじめとしたコスト削減(これを経営努力というのか)から生み出されたものだ。
私たちは、株式会社を社会保障分野に参入させたことで、税金の一部が株主配当に流れる仕組みを作っただけでなく、より株主配当を大きくするために、人件費を減らされるリスクを抱えることになってしまった。
「働かなくて」「感じが悪くて」「給料の高い」公務員にやらせるより、民間の方が安くていいサービスができると言って始まった民営化で、いま、何が起きているだろう。
保育、介護、障害など社会保障分野の賃金が下がった。
これは、株式会社の参入を許したからで、補正予算で「保育士処遇改善費用」をつければ解決する問題ではない。
たとえば、昨年、大田区で橋建設の賃金上昇分を補填するため、補正予算7000万円を計上したが、この7000万円は、現場労働者に支給されたかどうか確認できていない。(下奈須りえレポート参照)
現場労働者からは、株主配当や内部留保にまわったという声も聞こえている。
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規制緩和により、社会保障分野に株式会社が参入した。
これは、株式会社から見れば、新規参入分野が開放されたということ。
新たな分野は公共という、売り上げの担保された、補助金付きの利益の確定したリスクの無い分野だ。
いま、大田区(公共)がものすごいスピードで市場経済に浸食されている。