今だから、一緒に考えたい「特養の優先入所の意義と福祉が市場化されることの問題」 

大田区は、特養の入所申し込みは、9月3月の年に2回ですが、これを4回に増やすことを求める陳情が出されました。

回数が増えれば、締め切られた直後に介護度が悪化した方も半年近く待つことなく、利便性が上がるように感じますが、

今、年に2回申し込み、にしているのは、「優先入所の評価」をするのに必要な期間で、増やせば、公平性や透明性を確保できない可能性があるそうです。

私が議員になった2003年当時、大田区の特別養護老人ホームの入所は、早い者勝ちでした。

これでは、介護度や住環境、家庭環境などが考慮されないため、より困っている方を支えるしくみになっていませんでした。

実は、私が、選挙で訴えた政策のひとつが、この特養の入所に際し、困窮度の高い方から入所できる優先入所の仕組みを作るべき、ということでした。

大田区の特養の入所は、
◉大田区が基準に基づき困窮度を評価し順番を決めて区からご本人に通知
◉基本、その順番で各特別養護老人ホームが第三者を入れた入所検討委員会を開催して決めています

 

優先入所の意義をしっかりと位置付けないままに、回数を増やせば、2回が4回、5回、、と多ければ良いになり兼ねず、そうなると、逆に不公平な入所や、不透明な選考を排除できなくなるわけです。

それでも、今から10年以上前に、評価の点数と入所の実態を調べたら、必ずしも優先度の高い方が入所できていなかったり、施設によっては、医療ケアを必要とする方の受け入れ割合に大きな差があるなど、その後、改善されましたが、コスト重視の選考が疑われるような施設もありました。

特養の優先入所、のしくみについて、奈須りえは、こう考えています。

みなさんは、どう思われますか?

ちなみに陳情は、継続審議になりました。


委員会での討論

陳情49号は、優先度評価の申込期間を現在9月と3月に実施しているものを、年4回に増やすことを求める陳情です。

理由は、2回と申し込みと申し込みの期間が長く、本人の状況がかわるので、介護環境を早く整えるために、増やしたいという事です。

 

大田区が、申し込みの期限を定め年2回としているのは、優先入所の基準に基づき評価をしているからです。

この手続きによって、公平性を保っています。

多額な税金を投入して、有料老人ホームより安く入所できる特別養護老人ホームですが
誰かが特別に入所できたり、早く入れたら、待っている人は納得できないと思います。

ここを、必要度を客観的に定める指標を作り、それに応じて評価して、点数をつけ、優先順位を決めているのです。

 

 

 

 

CM200612.pdf (city.ota.tokyo.jp)

私が2003年の最初選挙の時に、区民の皆さまにお訴えしたのが、この特別養護老人ホームの優先入所基準でした。

早い者勝ちではなく、区民の置かれている心身や社会的状況を総合的に評価し、必要度の高い方から入所できるようにすべきだと街頭で繰り返し訴えました。

当選したら、当時の職員が、街頭を聞いてらしたようで、主張は私だけではなかったのだと思いますが、そのことに取り組みますとおっしゃっていたのを今でも覚えています。

大田区が特養の入所に際し、評価という行政の手続きを介在させることは、利用者と施設という民間事業者の直接契約ではない、行政の公平性や透明性の担保された手続きを保証するということです。

認可保育園の直接契約が行われていないのも、同じ理由だと思います。

私は、横浜市の特養へ入所きを、手伝った経験があります。

大田区の優先入所の基準と違い、常時受け付けていて、申し込んだと思ったら、ばらばらと複数の施設から連絡をいただきました。

食費や住居費ほか、おやつや飲み物、小さなイベントなどの有無や料金なども、見学して、自分で必要な料金や状況を見て調べて決めなければならず、横浜市に連絡しても教えて下さらないばかりか、そもそも市として把握していなくて、大変に驚きました。

申し込み期限も無ければ、いつまでにきめるかの期日も無かったために、もっと条件の良い施設から連絡が来るかもしれず、申し出を受けた施設がいつまで待ってくれるのか、迷っていたら、どこにも入れなくなるのではないか、など大変に戸惑いました。

入所希望者が、所得税の非課税世帯ではなく、減免対象になっていなかったため、料金も一番高い基準だったのですが、さらに施設ごとに、定めている居住費・食費に大幅な違いがあり、簡単に決められない状況でした。

 

介護保険や福祉の民営化は、措置から契約へと言われてきましたが、横浜市では、市の介入がほとんどなくて特養も直接契約で、契約とは、双方の合意の下で取り交わさるものだという事を強く感じました。

 

契約は、双方の合意のもと、と言われますが、サービス供給量によって、その力関係は簡単に変わります。

一般的な需要と供給の関係で考えれば、需要が供給より大きければ、供給側、つまり売り手がより高く買う人に売ることになりますし、供給が需要を上回れば、価格を下げてでも買い手を探そうとします。

需給関係でいえば、特養は入所希望者に対して受け入れ定員が少ないわけですから、入所を希望する区民が不利になってしまいます。

施設も経営ですから、介護度が高い方を選びたくなるでしょうし、少しでも私費負担で不足分を補おうとするかもしれません。

結局、多額の税金が投入されて、セイフティーネットであるはずの特養に入所できるのが、高額な貯蓄のある方や、私費負担が可能な方に、より、有利になるとしたら、社会保障制度の主旨を外れるのではないでしょうか。

 

特別養護老人ホームの入所は、市場経済の単なる需給の関係ではなく、公金を投入した福祉です。

そこを守っているのが、この優先入所の評価という手続きだと思います。

 

陳情者の2回から4回という希望の主旨は理解いたしますが、本当に2回の評価を4回に増やして、適正な評価ができるのか。仮に増やせるとしても、増やすに際しては、この優先入所の評価の手続きの意義や役割をしっかりと位置付けたうえで、その意義や役割が守れる範囲の中で増やすべきだと思います。

 

そのため、拙速な回数増は、制度を根底から壊すことになるので、ていねいな検討が必要だと思います。

 

今は、その段階にはなく、賛成できません。


ニーズの政治

 昨今、【ニーズ】を強調する政治になっていますが、個々の要望にすべてこたえれば、それは、市場経済と変わらなくなってしまいます。

お金持ちも、そうでない人も、困難を抱える人も、、、全ての人が、基本的な人権が保障された暮らしを確保するのが政治の役割です。

すべてのニーズにこたえるには、財源が足りませんし、ニーズをとらえてビジネスチャンスを拡大するのは、市場経済の役割だと思います。   

措置から契約へ、というのは、自己決定権などとセットで説明されることも多く、一見良いように感じますが、そこには、行政の公平性や透明性などの担保という要件が必須だと思います。

それがなければ、単なる自己責任になってしまうでしょう。

価格が上がる可能性も否定できません。