大田区の奨学金条例改正の問題 高校奨学金創設の陰で職種を限定した免除や高校生の貸し付け廃止

奨学金条例の改正が行われました。
①高校給付型奨学金創設は良いと思いますが、
同時に、
②高校の貸し付け廃止
③大学以降の貸し付けは職種は区内居住3年を限定に免除
など問題があります。


良いこととセットで問題のある事案を紛れ込ませるのは、条例改正や補正予算でもよく行われることです。過去には、アスベスト対策費を入れたから(当時私は解体工事の際の適正なアスベスト処理に取り組んでいた)反対できないよね、と言われたこともあります。でも、小さな好ましいことが、問題あること肯定するために使われるのは、やはり問題です。
 社会は少しずつ悪くなってしまいますし、問題あることをいったん認めてしまえば、さらなる問題をまねくことになるからです。

特に、今回の改正は、高校の給付型奨学金の創設は良いのですが

【1】職業選択の自由(福祉職に着いたら減免)や
【2】居住の自由(大田区に3年住んでいたら減免)
を制限した不公平な給付のうえ、

【3】正規職員でなければ減免しない
【4】高校の貸し付けを廃止
など問題があります。

以下、議案の討論です。

第28号議案
大田区奨学金貸付条例の一部を改正する条例は、

・給付型奨学金制度の創設と、
・区内事業所等で3年勤務した区が定めた資格を持っている人に対して、奨学金の返還金を減免するための条例改正です。

公費負担が減ることで個人負担が増える学費

学費の負担が、大きくなっていて、高校や専修学校、高等専門学校、大学への進学で、莫大な奨学金という借金を抱えて社会にでる学生が少なくありません。

公費で負担すべきだが今は奨学金制度が必要

本来、国や都が、学校への補助を大きくすることで、学費の負担を下げるべきで、給付型給付型奨学金の制度は必要です。

残すべき無利子の貸し付け

しかし、今回、大田区は、高校、の貸し付け型奨学金を廃止します。
給付型奨学金は、(2020年度予算1000万円125人分)必要ですが、希望者全員が給付型奨学金を受けられるわけではないことを考えれば、貸し付け制度(現状1200万円上限)は残すべきです。

特に、今は低金利のため、日本学生支援機構や、民間の金融機関でも、借りることもあると思いますが、今後の金利動向は不確定で、金利が上昇する可能性も無いわけではありません。
今後の金利動向を考え、必要に応じて、貸し付け制度も残すべきです。

高金利や変動金利の貸し付けは、若い学生さんの将来まで縛る、非常に深刻な問題です。
少しでも低利な就学資金の道を閉ざしてはならないと考えます。

職種を限定し居住を条件にした不公平な免除

一方、今回、
高校生は給付型に移行する一方で、専修学校、大学、専門学校、大学などへの進学時は給付型ではなく、貸し付けを現制度のまま存続させ、

区内に3年居住し、
●かつ区内の事業所
常勤正規職員として3年従事したものに対して、

総額の半額(上限額105万6千円)の返還を免除する制度を設けます。
これにより、区は、区内の福祉職の確保・定着や区内在住の促進、人材確保に悩む施設・法人の負担軽減を図るとしています。

しかし、この免除の制度には、いくつかの問題があります。
一つが、かならずしも正規雇用でやとわれるかどうか、わからないことです。

しかも、区内に3年居住し、かつ区内の事業所に常勤職員として3年従事しなければ、免除されません。

そのうえ、福祉や教育など、職種と取得する資格まで限定しています。

福祉職以外の職、学校の先生、公務員、建築士、、、になりたい人には減免の資格は与えられないと言うのです。
しかも、職に着いたら、転居しなければならないこともあります。
本人の意思に反して転居することもあるのです。

にもかかわらず、大田区が、こうした免除のしくみをつくるのは、憲法が保障する、

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

という、居住移転、および職業選択の自由、を制限することになりはしないでしょうか。

福祉職の人材確保が必要なことはわかりますが、大田区は、施策(民営化など)で、福祉、教育職を結果として低賃金にしながら、希望者が少ないから、税金で誘導するのは、適切でしょうか。

人材の不足は、人と年齢構成の都市と地方間の偏在や、単身世帯化、産業構造の違い、加えて、オリンピックや再開発など、政治が、都市部に作り出した、保育や介護など福祉人材需要など、必ずしも高齢化だけが原因ではありません。

大田区は、民営化や非常勤職員で不安定雇用を作っていますが、こうした個人の自由を制限するかたちで、あるいは一部の職種を選ぶ区民を優遇するかたちでの税金投入をすべきではありません。反対です。