寄付をした人の意思で税金を使って良いとする恐ろしさ

「ふるさと納税」には、様々な問題がありますが、

ふるさと納税が浸透したことで、私たちが自治体への寄付を税金で行うことの問題点を見えなくしてしまいました。

納税者は、納税額を変えずに、負担なく返礼品などを受け取れる=ただでプレゼントがもらえる仕組みなので人気ですが、

●非課税世帯は恩恵を受けられませんし、

●高額に納税する人ほど(上限はありますが)大きな恩恵(プレゼント)を受けられます。

●自治体間で税金が移動しますので、A自治体住民がB自治体に納税し、B自治体の税の使途の一部を決める(自分のプレゼントに使わせる)のも問題ですが、

●選挙で選ばれた議員にだから、みんなの税金の使い方を決める議決権を与えていたわけですが、お金持ちほど、税金の使い途に影響させることができるのです。

大田区が、1億円寄付者の意思を尊重し、その方の望む基金を作った大田区をみていると、ふるさと納税の本当の目的は、お金持ちが自治体税収の使い方を決められるようにすることではないかと感じます。

一見よさそうに見える寄付で基金を作った問題点について、の討論をご報告します。

 


第10号議案「大田区積立基金条例の一部を改正する条例」
に反対の立場から討論いたします。

この条例は、匿名の区民から1億円の寄付を得たことから、その美術収蔵家の意思を尊重し、

・郷土博物館の資料習得に要する経費(資料修復保存に要する経費を含む)、
・絵画収蔵庫整備に要する経費、
・文化施設における展示品や資料等の購入、
・修復に関する経費

に使うために、基金の名称を郷土博物館資料習得積立基金から、文化振興基金に変えるものです

反対の理由の一つは、基金の使用目的が抽象的で、特定目的基金として成立しえないことです。

何に使うか聞いても、今後考える、建築費が含まれるかどうか質問しても、決まっていないと答弁しています。

また、資産形成のために積み立てるべき基金ですが、修復及び保存に要する費用が例示されており、人件費に使われる可能性もあります。

そもそも、郷土博物館資料収得積立基金は、郷土博物館の収蔵資料の取得のための基金だったはずですが、勝海舟記念館の資料を買って、目的外の支出をしてしまいました。

その後勝海舟基金を作るなど、財政規律は破綻しています

寄付を受けたなら、大田区の一般財源に組み込み、色のついていないお金として、区長が予算を編成し、議会が適否を判断し議決する予算の編成過程の中で判断し決定すべきです。

基金の目的や使途があいまいな基金を創設すれば、その方が存命であれば、その方の大田区行政内の預金口座のようになって、今後も使途のご要望をいただくことになるかもしれません。

自治体の財源の中に、お金持ちだけが作れるお財布を作ってあげて、それを公費として使うことが妥当でしょうか。(寄付はお金持ちしかすることができません)

この問題について指摘したとき、失礼だ!と賛成派からヤジが飛びました。

私は、大田区の税金の使途の是非について発言しています。

しかも、税金の使い方や税制制度は、失礼か、失礼でないか、で決めることではありません。

憲法の趣旨に則り、公平に公正に、法令に従って決めているか、の視点で検証しているのです。

箱モノを作れば、たとえ全額寄付で建設することができても、維持管理費は一般財源で負担することになります。
寄付者の意思で税金を使うことで、他の財源に影響してしまうこともあるのです。

今回、明確に答弁しませんでしたが、否定もしていませんから、箱モノを作る可能性もあります。

大田区の財政を、お金持ちがより大きく左右できるしくみは、妥当と言えるでしょうか。

寄付は、ふるさと納税にもつながる大きな問題を含み抱えています。
さらに、基金の創設で、大田区の財政規律に例外を与えてはならないと考え反対します。