大田区認可保育所の保育料はどうあるべきか ~社会保障はだれがどう負担すべきかの視点から~

大田区は保育料を改定する検討をはじめています。大田区の認可保育所の保育料はどうあるべきでしょうか。先日行われた第二回検討会を傍聴し資料をみて気づいたことをレポートします。


大田区は検討会に

1公平性の視点
2受益と負担の関係性の視点
3少子化対策の視点

で保育料を検討するよう諮問しています。

保育料検討にあたり、大田区は、大田区の子どもの数の推移や子育て支援事業利用者数の内訳けや推移、そこに投入される税総額と利用者負担割合など様々な資料を提供しています。(資料はこのページ最後に添付)
参考資料例

大田区の子どもの一部に莫大な税金が投入されている。
税金投入総金額に対し、利用者負担は12%程度である。
認可保育所と認証保育所など民間保育施設利用者との負担の差が非常に大きい。

といった資料が提供され、

1公平性の視点
2受益と負担の関係性の視点
3少子化対策の視点

で検討せよと言われれば、

◇保育所を利用していない人へ税投入すべきである。
◇民間保育施設との負担の公平性をはかるべき。
◇三人目、二人目(双子~)への保育料負担を軽減すべき。

などの意見が出されることが予測できます。

しかし、これらの議論は、公共福祉に市場経済=マーケット理論が持ち込まれているように感じます。

本来、負担の公平は、税金を集める段階で行うべきものです。

すでに、税負担しているにも関わらず、消費税があがり、こうした社会保険料や利用料までも上げようとしているのが、今回の議論ではないでしょうか。
これは、医療(健康保険)、介護・保育・障害など社会保障全般に広がってきています。大学の学費の値上(教育)げもこの流れにのったものと言えるでしょう。

社会保障を使う人が、そのコストをより大きく負担することになれば、社会的、経済的に弱い立場の人が、社会保障にたよらなければならないわけですから、税金を支払っても、社会保障の担が大きくなり、税を支払うほどに社会全体の格差が広がることになります。
まさに、いまの日本の社会でおきていることです。

大田区の保育料の検討も、経済論理ではなく、社会保障は行政はどうあるべきかの視点にたって行うことが重要です。

  • 大田区という行政は、いったい何をするところでしょうか。
  • 大田区の税金は、保育料値上げしなければならないほどのひっ迫しているのでしょうか。
  • ひっ迫しているとするなら、保育より優先して税投入されているのは、どんな分野のどのような事業でしょうか。
  • そもそも、公共が担ってきた認可保育所という保育事業だけでは足りないから、民間の認証保育所で間に合わせてきたにも関わらず、民間の保育料を指標に保育料を検討することが妥当でしょうか。
  • 所得格差の拡大、雇用の不安定化、所得減、年金受給額減、税や利用料の負担増、、、。こうした社会全体の変化のなかで、保育(学童)という社会保障負担はどうあるべきでしょうか。

大田区の保育は、2004年小泉構造改革のころから民営化や民間委託が始まり、運営主体が大田区から民間事業者へと拡大してきています。

平成22年度から認可保育所の定員は1953人増えましたが、認証ほかの定員でも1078人増やしています。

その結果、認可保育所(小規模保育所含む)在園者数は10457人。一方、認証ほかの保育所を利用している人も1665人います。

認可保育所を整備しなければならなかったにもかかわらず、認証保育所など民間で間に合わせ、それが一時的ではなく、恒久的対策となったことが、保育という社会保障を、八百屋で大根を買うような市場原理の中で議論することを当たり前にしてはいないでしょうか。

検討委員会は、全5回(2015年10月28日、11月19日、12月22日、2016年2月2日、3月23日)の検討を行ったのち、区長に報告書を出すことになっています。
検討会が、どの程度の報告書を提出するかわかりませんが、それをばぷりっくコメントにかけ、それをもとに2017年4月からの保育料が変わるそうです。

 

 

資料:保育サービスの現状
運営費と利用者負担の現状
学童保育の現状
保育料見直しにおける課題と視点
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