市民から見た「災害廃棄物広域処理」の論点【2月11日@横浜集会】
東日本大震災に伴う災害廃棄物の処理が問題になっている。

環境省は、福島県を除く、岩手県476万t、宮城県1569万t、総量2045万tについて震災直後より広域処理の方針を打ち出し、全国の都道府県に処理の余力を打診してきた。

現在、いくつかの自治体が災害廃棄物受け入れの名乗りを上げている。
災害廃棄物受け入れについては、「痛みを分かち合うべき」であり、受け入れは当然という意見がある一方で、放射性物質を受けれいることについて安全性の視点から問題視され、各地で反対運動が起きている。

安全性についての認識が行政と住民との間で大きく食い違っている。

また、ここで、十分な情報が提供されていないのが、広域処理にかかわる背景だ。

大量の廃棄物が排出されたので、現地では処理できないと説明されているが、その実態はどうなのだろうか。

安全性の論点

破砕・焼却・埋め立ての過程での有害物質の拡散は無いか

今回、被災地の廃棄物は破砕・焼却され、最終的には埋め立て処分されるが、これまで、廃棄物の処理施設は放射能の混入を想定せず作られてきた。

既に指摘されているが、バグフィルターの99.99%除去は、放射性物質を除去できた実験データを根拠にしているわけではない。

しかも、今回の災害廃棄物受け入れについて、東京都は焼却灰受け入れについても回答している。仮に焼却灰が受け入れられることになれば、高濃度放射性物質 が長距離運搬されることになる。貨物コンテナで果たして機密性は確保できるのだろうか。また、使用されたコンテナの汚染は大丈夫なのだろうか。汚染除去の ため洗浄しないだろうか。洗浄するならその汚染水はどう処理されるのだろうか。

「アスベスト」「PCB」「放射性物質」など有害物質の分別は十分行えるか

これまで、おもに、問題にされてきたのが放射性物質の問題だが、他にも心配される有害物質は少なくない。

現在、建築リサイクル法で建材のリサイクルが義務付けられている。アスベストは、分別し、リサイクルしてはならないが、建材をリサイクルして作られた砂利 の中にアスベストが混入していることが問題になっている。通常の建材でさえ十分な分別ができずにいるのに、災害廃棄物の十分な分別が可能だろうか。

私は、岩手県宮古市の災害廃棄物仮置き場と粗選別場に視察に行っている。
津波による廃棄物は、泥の付着とその除去が課題で、粗選別場で行われていたのはふるいにかけて泥を落とす作業だった。
泥にまみれ混在している廃棄物から、アスベスト建材を分けることは困難な作業で、現地の作業者も首をかしげながら、廃材を手に取ったり戻したりしていた姿が印象的だった。

山のようにうず高く積まれた廃棄物仮置き場には、津波で飴のように曲がった鉄骨も放置されていた。中には、アスベストの吹き付け材と見られるものが付着し たままの建材もあり、混在した津波による廃棄物には何があってもおかしくない状況にあることがわかる。このことは、同行した環境ジャーナリスト井部正之氏 が2月17日号のフライデーに掲載している。


埋め立て処分場からの拡散は無いのか

東京都23区の場合、清掃工場から排出される焼却灰は、東京湾中央防波堤埋め立て処分場に埋め立てられる。
埋め立て処分場には、23区の清掃工場から排出された8000ベクレル未満の焼却灰や下水汚泥焼却灰が埋め立てられている。8000ベクレル以上の焼却灰 については、雨水がかからないようにシートで覆われるが、それ以外の灰は土をかぶせただけである。東京都は、灰に土をかぶせることで、放射性セシウムは粘 土質に吸着するため雨水からの流出はないと説明している。

現在、土壌の除染に伴い出た汚染土壌の処理が問題になっているが、土をかぶせて拡散が収まるなら、これまでの、放射能に係るあらゆる規制は一体何のために 行ってきたのだろうか。処分場から排出される雨水は、処理されたのち、砂町の下水処理場にいくが、その過程に放射性物質除去作業は行われない。

23区内の放射性物質は廃棄物から焼却灰に凝縮され、中央防波堤埋め立て処分場にいったんは集められるものの、最終的には、そこから雨水を通じ、東京湾に排出・拡散されることは、ないだろうか。

測定は適正に行われているか

これまで、焼却や下水処理に伴う影響を測定する際に測定されてきている方法は、環境への影響を適正に示すものになっているだろうか。 これまでの行政の説明は、空間線量への影響が中心だが、注目すべきは、放射性物質の総量がどうなるかという問題ではないだろうか。

1㎥、1ℓあたりの放射線量は少なくとも、排出される排気や排水の総量が大きければ、その影響は少なくない。
検出限界値以下であったとしても0ではない。

これまで、地域の災害廃棄物受け入れ説明会において、放射性物質、総量を求めているが、未だに示されていない。

安全基準の根拠は

要は、クリアランスレベル以下であれば、放射性廃棄物ではなく、廃掃法の対象となる「廃棄物」として扱うということであり、逆にいえばそれ以上の放射能を帯びた廃棄物は、放射性廃棄物として原子炉等規制法による処理を必要とするということである。
ちなみに、原子力安全委員会はこのクリアランスレベルの設定について、「国際放射線防御委員会(ICRP)の勧告等に基づいて、クリアランスされたものに よる線量のめやす値を、自然界の放射線レベルに比較して十分小さく、また、人の健康に対するリスクが無視できるものとして、10μSv/年」に設定してい ます」と説明している。逆にクリアランスレベル以上では、「人の健康に対するリスクは無視できない」可能性があるという見方もできる。
今から見れば、このクリアランスレベルの設定は、かなり厳格な数字ということはできるが、少なくとも、これを前提として、この程度しか放射能汚染の危険はないから原子力を利用するということで国民のコンセンサスを得てきたことだけは明白である。
そして事故前には、クリアランスレベル以上=セシウムで100Bq/kg以上(食品暫定安全基準の5分の1)の廃棄物は、放射性廃棄物として扱われ、下記 の日本原燃のホームページにも書かれているように、低レベルであれ放射性廃棄物として、六ヶ所村に建設された低レベル放射性廃棄物埋設施設等に特別の体制 で保存されてきた。
  *「拡大する放射能汚染と法規制―穴だらけの制度の現状」より
早稲田大学出版部 日置雅晴(日弁連原子力PTメンバー)

② 制度からみた論点

地方分権

今回の廃棄物特措法は、基礎的自治体が行う一般廃棄物処理(地域内処理の原則)の広域処理を可能にしてしまった。
清掃事業は基礎的自治体の事業でありながら国、都道府県が余力調査を行っている。

民主主義

たとえば、東京都23区内で災害廃棄物の焼却を行う「東京二十三区清掃一部事務組合」の設立目的は「23区から排出される一般廃棄物の処理」だ。
設立目的ではない他地域からの受け入れを議決せずに事業執行しているが、可能だろうか。議決とは、民意を問うということ。

一部事務組合では、平成23年度は、その量も少なく、予算もわずかなことから補正予算計上しないが、24年度からは予算計上すると言っている。

最終的にかかった費用は国が100%補助するため、自治体負担は0だが、だからと言って予算計上しなくて良いことにはならない。

議決による民意を問わなければならないのは明らかである。


③財政からの論点

民主主義の論点からもわかると思うが、廃棄物広域処理はボランティアではない。自治体が手を挙げれば、処理した費用は100%国から予算措置される。そして、その原資は災害復興税だ。

ここで、私たちがみていかなければならないいのが、廃棄物処理にとお金の問題だ。

まずは、災害廃棄物の全量をみてみたい。

これまで、環境省は災害廃棄物処理の全体像からこの問題を説明していない。
岩手県から排出された災害廃棄物は476万t。宮城県は1,569万t(294t)と公表されている。しかし、これらの廃棄物は、いったいどのように処理されるのだろうか。

最近になっても、被災地の廃棄物の処理が進まないことがマスコミに大きく取り上げられている。処理が進まないのは、はたして、全国の自治体が受け入れないからなのだろうか。

たとえば、岩手県は廃棄物総量の435万tのうち、広域処理は57万tと言っている。
9割弱は被災地で処理されることになる。
現地で処理が進まない理由が、必ずしも広域処理が進んでいないだけとは言えないことがわかる。

435万tの処理の内容をみるとさらにさまざまなことが見える。

*岩手県より

埋め戻し・復興資材(コンクリート等) 171万t

再利用 (太平洋セメント)     80万t
(三菱金属)      2万t
市町村焼却           44万t
仮説焼却炉             8万t
業者に転売               73万t
広域処理               57万t
合計 435万t

宮城県はについては、こうしたデータさえ示されていない。
岩手県についても、数値は示されたものの、流動的で確認するたび変わっている。岩手県の災害廃棄物総量は、環境省が昨年出した廃棄物総量から更に40万t少なくなっている。

以下、環境省作成「災害廃棄物広域処理平成23年11月2日
」2Pより

岩手県  476万t ⇒11年
宮城県 1,569万t ⇒19年 各県において排出される一般廃棄物の量と比較
2,045万t(ほか福島県205万t)

(阪神・淡路大震災における災害廃棄物処理について;兵庫県生活文化部環境局環境整備課より)

可燃物287万tについての各市・地域ごとの処理内訳。焼却が最も多く209万t、次いで埋め立てが多く67万t、再生はわずか11万tとなっている。 焼却の内訳は、仮説焼却炉99万t、自己焼却炉の余力活用19万t、他市町への焼却委託10万t、民間業者への焼却委託25万t・・・

高額な処理単価 ~阪神淡路大震災と比較して~  

t当たり処理単価(下記、平成23年11月17日産経新聞より)

阪神淡路大震災  ¥2万2千円 3,246億円
岩手県災害廃棄物 ¥6万3千円 3,000億円
宮城県災害廃棄物 ¥5万円   7,700億円

(例えば東京都では宮古市の廃棄物¥68,000/t)
*東京都提供資料より

・【*11月17日産経新聞】環境省によると、阪神大震災のがれき処理費用の総額は約3,246億円で、1トン当たりの処理単価は約2万2千円。 これに対し岩手県の場合、当初の見通しは総額3千億円で、1トン当たりは阪神の3倍弱の6万3千円。宮城県は総額7,700億円で、1トン当たりは阪神の 2倍超の約5万円と、両県とも阪神のコストを大幅に上回る見通し。放射性物質の付着が懸念される福島県は費用の概算も立っていない。

災害廃棄物の費用は「災害復興税10.5兆円」でまかなわれる。(増税規模は所得税7.5兆円、住民税2.4兆円、法人税2.4兆円で、総額10.5兆 円。「復興債」の財源として、国民も復興費用を負担することになる。所得税は、2013年1月から25年間、所得税率が2.1%引き上げられるほか、個人 住民税は、2014年6月から10年間、年1,000円上乗せ)

④ 情報公開・説明責任の論点

これらの情報は、当初より示されているものではなく、現地で見て、担当にヒアリングし、不足分は情報公開請求して繋ぎ合わせてようやく見えてきたものだ。

更に、一方的に切り取られ、限られた情報の中、災害廃棄物の全体像を知ることは容易ではなく、処理方法別内訳の詳細等、確認したいことはまだあるが、容易に入手出来ないのが現状だ。

環境省の情報公開と説明責任の姿勢には問題がある。

⑤ 番外編

一方で、こうした広域処理が可能な背景には、全国の焼却施設の余力の存在=つまりは過剰な設備投資が存在する。多くの清掃工場は、燃やすものが足りない状況にあるということだ。

全国の清掃工場で、災害廃棄物を受け入れ焼却をすることが、補助金受給と同義語になってはいないだろうか。

災害廃棄物処理費用総額約1兆700億円(産経新聞2011年11月17日より)のうち、広域処理分は、自治体、自治体三セク等へ流れていく。
被災地支援ではなく、自治体財政支援になってはいないだろうか。

災害廃棄物広域処理は、2つの法律によりようやく成立している。
「廃棄物特措法」と「放射性廃棄物特措法」だ。

廃棄物特措法は、国が、基礎的自治体の事務である清掃事業を、被災地自治体に変わり行うことができるようにする法律だ。

しかし、現実には、国が廃棄物処理費用1兆700億円を被災地では無い広域自治体や事業者に配分する機能を都道府県とともに担っている。

国が被災地に廃棄物処理費用として1兆700億円を交付し、各被災地自治体が地域性に合わせて処理方法を選択できるようにすれば、1兆700億円はより効果的な被災地支援として使えるのではないだろうか。