議会は誰の要望で意見書を出すのか 意味が説明できない意見書「羽田空港と神奈川県川崎市を結ぶトンネル整備促進」

大田区議会交通問題対策特別委員会が、突然意見書提出案を3月6日の議会運営委員会に出しました。
その日の10時53分に議会事務局から電話を受けましたが、3月6日13時から始まる本会議で、議決すると言います。
私は、そこから、タブレットに配信された意見書を読み、12時までに質疑、討論の有無、態度(賛否)を決めなければなりません。

非常に唐突な出し方の意見書ですが、内容を読むと、
順調に進んでいる多摩川トンネル整備であるにもかかわらず、促進を要望するなど、意見書を出す目的と効果が見えません。

そこで、議案を提出した委員会の委員長に質疑しましたが、答弁も要領を得ません。
どこからか、出してほしいという要望を受けたのでしょう。

私が今最も心配しているグローバル化に伴い更に外国資本の支配を拡大させようとしている「スーパーシティ」の整備を進めようとする意図が見える文言もあり、反対しました。

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意見書案に対し①~⑦までの質疑をして、得た回答を赤のアンダーラインで最後に示しました。
議場で聞きながらメモしたので正確でない部分もあります。

いずれも、質問には答えられていないうえ、特に大切な、
◉国際化の意味
◉誰と誰が競争し、誰が勝つことをメリットとしているのか
◉財政負担が財政や金融に及ぼす影響
◉広域連携の意味
◉区民のメリット
について何一つ答えられませんでした。

これでは、直実に進捗している整備事業を促進させる意味がわかりません。

それどころか、国際化、広域連携を羽田空港という東京国際空港を拠点にすすめるということは、私が最も懸念しているグローバル化に伴う外国資本支配を強めるスーパーシティをさらに進める意図が見えます。

大田区が、外国資本を優遇するための意見書を出すことはできませんから意見書提出に反対しましたが、反対したのはフェアな民主主義奈須りえ一人でした。

意見書本文は、最後に、討論は青字、質疑はイタリック体で、以下に掲載します。


委員会提出第二号議案 一般国道357号多摩川トンネルの整備促進に関する意見書

につきまして、反対の立場から討論いたします。

 

大田区は、神奈川方面への交通網について過去には、空港の利便性の機能が、区内から流出するという立場で、賛成してこなかったと理解しています。

私は、空港機能を大田区が独占すべきという立場には立っていませんので、今回の意見書が多摩川トンネルにより、区外への経済波及効果を独り占めしたいから反対するものではありません。

また、財政負担とメリットとの見合いにはなりますが、空港の利便性が向上するのであれば、神奈川トンネルを整備することも

必要だと考えています。

 

 

しかし、この意見書に書かれている内容からもわかるように、グローバル化に伴い、再国際化以降の羽田空港の位置づけは、それまで私たち大田区民や区議会が認識してきたものから大きく変化しています。

 

規制緩和や規制改革が進められ、規制が取り払われて、ヒトモノカネが自由に行き来できるグローバル時代に突入しています。

コロナで人の流れが制限されている今も、原油は輸入され、エネルギー供給に差しさわりはありませんし、その9割以上を依存する大豆、小麦、トウモロコシなどから作る油、ブドウ糖など甘味成分も、味噌も、しょうゆも、パンも麺類も、供給は一切滞っておらず、私たちは、ライフラインを維持しています。

羽田空港と臨海部を控える私たち大田区議会が日ごろみて分かるように、物流は大きく変化し、私たちの暮らしは、以前にもまして、輸入に依存するようになっています。

さらに言えば、資本主義経済に依存するようになっていて、グローバル資本家の企業が提供するものやサービスに依存するようになっているのです。

 

私は、大田区に暮らす区民や住民の暮らしや、国民の生活を第一に考えれば、過度なグローバル化や、グローバル資本主義経済システムに依存すべきではないと考えています。

 

国内循環経済を一定程度保たなければ、区民国民が働き生み出した富が国外に流出し、経済サイクルが回転すればするほど、私たちの経済が疲弊してしまうからです。

 

ところが、この意見書を出すうえでの問題意識には、そうした経済システムの変化から区民生活を守ろうという意識が感じられません。

 

整備を更に促進して利益を得るのは、区民や国民ではなく、そこに投資する外国資本にさらにかわっていくでしょう。

 

特に気になっているのが、地域間の広域連携の促進や強化に資するためという一文です。

いまスーパーシティ構想の中で、複数の事業者が連携して事業を提案し認可可能にするためには、データ基盤にアクセスできるAPIというカギを公開することが要件になっています。

企業間連携が進めば進むほど、データ基盤が広がり密になって、多くの情報共有が可能になります。

空港を介して、存在する全国の事業者をつなぐことは、そこにつながる多くの企業や行政や住民の情報をつなげることになるわけです。

当初は、規模の小さな事業者同士や、小さな規模の事業者と大きな事業者の連携などもあるでしょう。しかし、情報を通じて、個人も行政も最終的には、資本力のあるグローバル資本に支配されるのではないかと心配しています。

 

それを助長することを目的とする意見書の提出には賛成できません。反対いたします。

 

 


意見書からは、国道357号多摩川トンネルの整備は、着実に進捗していることがわかります。

にもかかわらず、

羽田空港や東京港を活用した首都圏の国際競争力を更に向上させるためには、道路インフラ整備の一層の推進が不可欠であるとしています。

①着実に進捗していながら、さらに早める理由は何ですか。
区民の利益になる

新空港線ほか多くの土木建設事業が、今後一時期に集中するように見えます。

②財政や金融に及ぼ影響も踏まえたうえで要望していますか。
国の財源であり、大田区の財源は使っていない

③ここでいう首都圏の国際競争力とは、誰が誰と競争することを意味していますか。
都市間競争

④その競争で勝つのは誰で、それによる区民のメリットはどこにありますか。
中長期的に大田区にプラスになる

また、さらに、このトンネル整備を推進させることが、臨海部に立地している産業やポテンシャルだけでなく、地域間の広域連携の促進や強化に資すると言っています。

⑤広域連携の促進や強化は具体的に何を意味しますか。
物流

⑥また、そのことが促進されることによる大田区民への、税収が増える、安定した高い所得の雇用創出される、など具体的なメリットをあげてください。
輸送力向上

多摩川トンネル整備ついて、ほかにも事故災害時の代替経路の確保など極めて大きな効果が見込まれるとしていますが、主に経済の側面からのメリットを強調しているように読めました。

⑦この事業による税負担と、税収や、雇用の増加など、具体的な経済・財政効果は示されていますか。それは、一般的なものでなく、大田区に及ぼす効果も示されていますか。
無い