公園用地を買っても増えない大田区の緑~公園行政は誰のために行われているか、大田区の緑は誰が守るのか~

田園調布せせらぎ公園の樹木が267本も伐採されることを知り、地域のみなさんたちと、樹木を守るための活動をしています。せせらぎ公園の大量樹木伐採の背景に、公園用地を10haも増やしながら、緑は増えていない大田区の公園の状況が見えてきました。一人当たり公園面積が国の基準の10haにも、大田区の基準6haにも満たない大田区の憩いの空間=公園と緑は誰がどう守るのか、質問を通じ大田区の姿勢を問いました。

平成21年の公園面積280.3haから平成30年には290.38haと約10ha増えていますが、緑被地割合は65.32%から63.53%に減っています。この10年で公園用地を購入するなどして10haも増やしたのに、樹木でおおわれている面積は、183.09haから184.49haとわずか1.3haしか増えていないのです。
以下、第二回定例会の質問全文です。
答弁は、記録が公表されてから、正確な答弁も掲載します。

フェアな民主主義奈須りえです
【267本樹木を伐採して田園調布せせらぎ公園に建物建設】

田園調布せせらぎ公園内に建設中の仮称文化施設(今回条例提案されるせせらぎ館)の建設に伴い、当初の計画で267本、その後、住民の声を受けて20本減らしたものの247本もの樹木が伐採されました。
公園内の大量の樹木が伐採され、地元の住民を中心に「田園調布せせらぎ公園」を愛する人たちが、事業の進め方や内容に憤りを覚えています。
【住民不在で進む公園開発】

地域の方たちが、何よりも問題だと言っているのが、知らされずに、大量の樹木が伐採されたことです。
田園調布せせらぎ公園は、用地取得の際に、大田区と地域住民との間で、国分寺崖線に連なる場所でもあり、できるだけ自然を残したかたちで整備していくことを約束し、その方針に従い整備してきました。
ところが、
樹木が伐採されて、はじめて田園調布のせせらぎ公園含めた一連の施設施設整備について知った、
施設整備は知っていたけれど、これほど大量の樹木の伐採を伴う工事だということを知らなかった、
という方たちばかりでした。
私含め、住民のみなさんは、せせらぎ公園の樹木の伐採が始まってから、大量の樹木の伐採を伴う施設整備だと気づいたのです。
驚いた大勢の住民のみなさんが、2月7日大田区が開催した「仮称大田区田園調布せせらぎ公園文化施設新築工事説明会」に参加し、意見を述べたことをうけ、大田区は、その場で、選挙後に再度説明会をすることを約束しました。
ところが、また、ここで問題が起きます。

【約束した説明会もこっそり開催】
説明会開催の周知が不十分だったのです。
説明会開催を約束しましたが、5月18日の説明会開催は、GW直前に一部の掲示板に貼るだけで、町会の回覧でまわすこともせず、区報にもHPにも掲載されませんでした。説明会の定員はわずか50人と少なく、周知の仕方に問題があると感じた区民が問い合わせたら「大勢来たら困るから」と言われたそうです。
大田区が、説明会を開催すると決めたのは、せせらぎ公園の整備について、地域順民に知っていただき、意見を聞くためではなかったのでしょうか。大田区は、区民に誠実に向き合う姿勢があるのでしょうか。
大田区の周知は不十分でしたが、知った近隣住民が地域のみなさんにお知らせしたことで、大田区が定員50人といっていた会場に100人は集まったと思います。
大田区の周知が不十分だったにもかかわらず、大勢が集まったのは、地域の方たちの田園調布せせらぎ公園への関心や愛着の表れだと思います。
【住民の発意無き、行政主導がもたらした大量樹木伐採と環境・景観破壊】
住民のみなさんからは、今使っているクラブハウスの解体や富士見会館廃止、仮称文化施設スポーツ施設建設への疑問、そもそもの事業の必要性や住民に知らせずに大田区が決めて、大田区だけで進めるやり方、大量に切ってしまった木やこれから切られてしまうのが心配な富士見会館下の整備による自然環境や景観が壊される問題、富士見会館下の駐車場整備の安全面、など数多くの意見が出されています。
今回のせせらぎ公園の整備は、住民の発意なく、大田区主導で始まったことから起きている問題です。
田園調布出張所が老朽化したから、出張所を富士見会館に移転、富士見会館の貸館機能を、公園内に建物を建てて移転、しかも、中学校の体育館規模のスポーツ施設建設について、地域住民不在で進められてきたのです。
しかも、もう一つ問題なのが、話の発端が老朽化した施設の更新なので、その適地を玉突きで探したことで、「せせらぎ公園」がまるで建物を建設するための「建設用地:敷地」のように扱われていることです。
建設用地を確保し、
建設しやすいように作業スペースを確保し、いとも簡単に樹木を伐採。
これでは、土地を取得したデベロッパーが、上物を解体し、更地にして建物を建設するのとまるで同じです。でも、ここは区民とできるだけ自然環境を残して整備しようと約束した田園調布せせらぎ公園で、建てて売って利益を上げるデベロッパーのための開発用地でありません。区民の貴重な都会の公共空間である公園なのです。
しかも、樹木はモノではなくて、生きていますし自然の一部です。
植え替えればよい、とか、価値のない樹木という言葉は、安易に使ってはならないと思います。
このところ、区民の方たちから、平和島公園、東調布公園など、樹木が大量に伐採されているという声が届いています。
安易に伐採するのではなく、できる限り守る立場で大田区は公園や街路樹の整備をすべきですし、やむなく伐採する場合にも、代わりに植える樹木は数合わせではなく、公園や街路を長期的に地域住民とどのように育てていくかという視点が必要だと思います。
ラケットクラブ跡地を購入する際、大田区議会は「旧多摩川園ラケットクラブ用地取得に関する決議」という素晴らしい決議をしています。この決議こそがせせらぎ公園整備の基本です。
そこで、うかがいます。
大田区は、せせらぎ公園の仮称文化施設以外の、今後整備しようとしているエリアについて、引き続き、住民の声や要望を聞きながら整備していくということ、また、その際の大田区の姿勢についてうかがいます。

【2】

【足りない区民一人当たり公園面積!なのに、公園は開発用地?】
一方で、今回の公園内の整備において、区民のみなさんが心配しているのが、公園を空き地、開発用地のように扱っているように見えることです。
大田区は、区民一人当たりの公園面積が、国の基準の一人当たり10平米にも、また、大田区の公園条例に定める6㎡にも足りていません。
先日公表された平成30年度の「道路、公園、河川及び交通安全等に関する事務執行について」の大田区包括外部監査結果報告書をみると、区民一人当たりの公園面積は、昨年の5.09㎡から5.06㎡に減っています。
大田区は、多摩川があり河川緑地がこの公園面積には加わっていますし、埋め立て地の公園も含まれるので、多く見えますが、生活空間にある公園は基準からは程遠い状況です。
しかも、今、せせらぎ公園周辺の住民が問題にしているのは、単なる公園面積の問題にとどまらない、公園内の樹木の問題です。
【緑が無い?大田区の公園:面積290haでも、2╱3しかない緑地】
そこで、最近公表された大田区の「大田区みどりの実態調査」報告書の公園の緑被地をみると区内の公園569か所総面積は290・38haですが、緑でおおわれている面積は184・49haで63.53%と約2╱3になってしまいます。
しかも、調査結果でも指摘している通り、緑地83・9haと言っても、そのほとんどが、河川敷草地なので、私たちが思い描く緑とは少し違います。

【多摩川河川敷と羽田空港まで含めてもまだ足りない大田区の緑・大田区の公園】

区民一人当たりの公園面積が、大田区の基準である6㎡に足りない5.06㎡だと言っていますが、こうした貴重な大田区の調査から、河川敷準開放地などを除く、いわゆる公園の区民一人当たり面積は3.99㎡にまで落ち込みます。しかも、そのうち、緑でおおわれているのは、63.53%に過ぎないので、大田区民一人当たりの公園の緑の面積は、さらに減ってわずか2.53㎡にしかなりません。

【公園を10ha買っても1haしか増えない大田区の緑地
   ~開発される公園の問題~】
しかも、これを平成21年の調査と比較したら、公園面積は280.3haから290.38haと約10ha増えていたのですが、緑被地割合は65.32%から63.53%に減っていました。
大田区は、この10年で公園用地を購入するなどして10haも増やしたのに、樹木でおおわれている面積は、183.09haから184.49haとわずか1.3haしか増えていないのです。
公園用地を取得するのと同じくらい、公園内に建物や施設を作り、コンクリートで覆うなどして、緑を減らしてきたということです。これは非常に衝撃的な数字です。

昨年購入した公園をみても、おおたキャナルサイドウオーク公園は5600㎡ですが、緑被面積は0です。
昨年、多摩川台公園の拡張用地として897㎡購入しましたが、平成21年から多摩川台公園の緑被地は2329㎡も減らしています。
せせらぎ公園も平成21年と比較すると、約980㎡緑被地は減っていますし、洗足池公園も約1073㎡減っています。
買うほど緑地は増えないし、買っている以上に公園の緑被地が減っているのです。
【さらに大田区の環境を悪化させるパークPFI】
~大田区が管理しても減る緑、金儲けの対象になって悪化の心配~
大田区は、昨年の第一回定例会で公園条例を改正し、公園面積の50%までスポーツ施設を建設できるようにし、建物も12%まで建てられるようにしてパークPFIを可能にしました。
パークPFIという仕組みは、民間事業者に公園公園内にスポーツ施設やカフェなどの施設建設を許し、そこで営利活動させるかわりに公園の整備費の一部を負担していただくしくみですが、そもそも、国がパークPFIを想定しているのは、一人当たり公園面積10平米を満たしていることが前提です。

【足りない公園:区民の環境や景観保護のために増やせるか】
大田区のように、国の基準10平米も大田区の条例の基準6㎡も大きく欠ける5.06㎡で、しかも、包括外部監査も公園面積として取り上げている公園・児童公園・緑地・児童遊園だけの面積だとわずか2.85㎡です。
公園内を開発用地の対象にするほど、大田区の公園に余裕はないということです。

公園だけでなく、宅地開発によりものすごい勢いで緑が減っていて、緑被率は草地を入れても20.47%から18.32%。この10年で102.68haも減ってしまいました。
地区計画など都市計画の規制などで緑を守ることもせず、公園も規制緩和で建物建設や開発の対象としていて、いったい誰がこの大田区の緑を守るのでしょう。
そうした意味では、
大田区が、せせらぎ公園にスポーツ施設を建設するに際して、隣地8795㎡を41億112万4378円で購入したのも、一人当たりの公園面積が10平米に満たない大田区が、実質的な一人当たり公園面積を減らさないよう、緑を減らさないよう取り組んでいることの表れだと思います。
そこでうかがいます。
大田区は、区民の公園一人あたり面積10平米を確保するために、適地があれば購入することを目指すという姿勢でよろしいでしょうか。
【3】
【開発(仮称文化施設建設)と民営化(指定管理者)でせせらぎ公園は本当に良くなるのか】

田園調布せせらぎ公園は、これまで、自然環境をできるだけ残して整備するという地域のみなさんとの約束を守って整備してきた、大田区の努力もあり、自然環境豊かな、非常に良い公園になっています。
地域コミュニティが田園調布せせらぎ公園を育ててきたわけです。
地域の方たちは、今、施設建設や、管理運営方法の変更により、これまで公園を地域住民のコミュニティの中でゆずり合いながら使用してきた方たちが、公園がつかいにくくなるのではないかと心配しています。
仮に、仮称文化施設(せせらぎ館)の建設や今回の条例改正により公園全体の管理が指定管理者になるなど、管理運営方法が変わることにより、今までより良くなるのではなく、悪くなるなら、公園整備や管理運営を変えてはいけないと思います。
朝の犬を連れた散歩、子どもとのボール遊びなど、これまでできたいことを制限すれば、地域住民の生活の快適さにもかかわります。
そこでうかがいます。
整備や管理運営がかわったとしても、区民がこれまで通り、これまで以上に快適に公園が使えるようになりますか。
【4】
【大田区のまちづくりは誰のために進んでいるか】
~行政主導のまちづくりから住民主体・住民参画のまちづくりへ~

住民生活や環境、地域の景観や区民生活・環境、財産価値にまで影響を及ぼすのがまちづくりですが、他の地域のまちづくりをみていても感じるのが、大田区が作り、そこに、住民の意見が反映されていないものが多いということです。行政主導でいいまちづくりはできません。
今回のせせらぎ公園の樹木伐採の問題も、もとをたどれば、田園調布老人憩いの家に地域包括支援センターなどが入り、出張所が移転、それに伴い、富士見会館に出張所が入って、富士見会館の貸館部分が公園内に移転する一連の施設整備の中で起きた問題ですが、この一連の施設整備について、ほとんどの住民は知りませんでした。

先日、田園調布・多摩川まちづくり協議会が発足しましたが、総会設立のための会議にでたら、まちづくり協議会が発足し、地域のまちづくりについて活動を始めることを地域住民には知らされていないことが指摘されていました。
まちづくり協議会は、多摩川駅周辺を重点地区と位置付けています。
今後の議論の進み方によっては、このせせらぎ公園に関係があるかもしれませんし、周辺の道路や交通が変わるかもしれません。
そこでうかがいます。
これまでも大田区はコンサルを派遣するなど、この活動に支援してきました。
まちづくりは、まちづくり条例にもあるように住民参画が基本です。
今後、こうしたまちづくり活動について、地域住民が参画できる環境をつくれるよう大田区としても、「区民のまちづくりへの参画の機会を広げる」「区民によるまちづくり活動を支援」などまちづくり条例にある区の責務を果たしながら進めるべきだと思いますが、大田区の姿勢を確認させていただきます。