政府が、日本の水道をすべて民営化しようとしているのはご存知でしょうか。

さすがに、最近では、公務員たたくだけで行政が良くなると思っている方はいらっしゃらないと思いますが、水道民営化については、制度が変わることで、水道事業がどうなるのか、きちんと点検していただきたいと思います。

水道民営化がいよいよ具体的になりそうだからです。

たしかに、大阪市では水道民営化条例案が議論されていますが、多くの事業者・専門家は、「今のままではリスクが大きく受ける事業者はいない。」と評価しています。
しかし、水道法改正を視野に入れているのではないかと思われる「水道事業の維持・向上に関する専門委員会 報告書」を読んでみると、それらの言葉をしっかり受け止め水道法改正を提案しています。事業者がリスクをとらず、行政と住民(国民)がリスクを分担する、つまりは付けは住民にというかたちになっています。

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民営化のメリットは、市場原理=自由競争による価格の低下とサービス向上と言われてきました。
水道のような地域独占事業に競争性は働かないうえ、いったん民営化するとその期間は長く、公が事業ノウハウを失います。
大田区のように、いったん事業者がもったノウハウを「企業の特許」のように扱うと情報公開もされない恐れがあり、再公営化が難しくなります。

水道は基礎自治体の事業で大田区が担うべきところ、23区(大田区)では、特別区制度の下、東京都が水道事業を担っています。

都区財政調整制度でも、23区域の固定資産税、法人住民税の45%=東京都分は、上下水道、消防などに使われるとされれています。

こうした理由から、私は水道事業は、東京都に任せきりにするのではなく、23区はもっと水道事業に関与すべきであると考えています。特に水道民営化が言われるようになっているいまこそ、各区は、東京都の水道事業に対してチェックをしていくべきです。

そうした目で、以下の報告書を読んでみました。

水道事業の維持・向上に関する専門委員会 報告書

国民生活を支える水道事業の基盤強化等に向けて講ずべき施策についてhttp://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000143843.html
課題と改善策のポイントは以下の通りです。

課題
【1】人口減少社会に伴う水需要減少
・40年後に人口8600万人水需要4割減少
・直接料金収入の減少 小規模水道事業者の経営状況の悪化

【2】老朽化 水道管路の老朽化率上昇
・現状の更新率のまま推移するとすべての管路更新に約130年
⇒ちなみに、大田区の区道はある年で試算したら530年!

【3】耐震化率・耐震適合率低い

【4】技術の維持継承
・人員削減、団塊世代退職で職員3割減

【5】給水原価 > 供給単価
・更新費用等を水道料金原価に見積もっていない?
・老朽化・耐震化費用増大・水需要減少⇒将来急激な水道料金引き上げ
改善策
①適切な資産管理→資産台帳の義務付け
維持修繕義務付け(方法・頻度)
計画的施設更新する努力の義務付け
②水道料金→総括原価方式にして総括原価に法人税・配当金を可能にする
行政からの補助金を民間事業者に可能にする
水道料金の
③事業統合で経営・管理の一本化→都道府県に広域連携の責務を負わす
④官民連携→官のノウハウを民に
⑤国際展開の推進

【1】~【5】の課題は①~⑤で解決できるでしょうか。

40年後に人口8600万人水需要4割減少など、人口減少に伴い、水需要が減少していくことは明らかです。
このことは、直接料金収入の減少や小規模水道事業者の経営状況の悪化を招くとしています。

しかし、人口減少に伴う水需要の減少に対し、私たちがしなければならないのは、減少に伴う一人当たりのコストアップをどう最小限にしながら、安全な水を飲み使い続けるかということであり、水需要を増やすことではありません。
ところが、「水道事業の維持・向上に関する専門委員会 報告書」では、方法や頻度まで含め、維持修繕を義務付け や 計画的施設更新する努力の義務付け にまで言及しています。
これにより、過剰な維持修繕費の計上につながりはしないでしょうか。

しかも、ご丁寧に、(それに伴って負担が増すであろう)財源確保の必要性についてのわかりやすい説明まで義務付けようとしています。
それどころか、一度も給水していない区域を縮小したり、給水人口と給水量とかい離へ対応まで行おうとしています。これは、人が済まなくなった地域への給水をストップしてしまう。人口が少なくてあまり水需要のない地域=経済活動が小さな過疎化しているところへは給水しないという風に読めないでしょうか。

また、「現状の更新率のまま推移するとすべての管路更新に約130年」かかるといった記述がみられることから、管路更新を早めようとしているのではないでしょうか。
確かに、インフラの適正な維持管理として130年はどうかと思います。
しかし、一方で、たとえば大田区を例にすれば、高度経済成長期に作った公の施設が一気に老朽化し更新の時期を迎えているとして、公共施設整備に莫大な税金を投入しようとしています。
私は大田区の区道の更新に530年かかるという試算をしたことがあります。
水道の管路だけでなく、私たちの公共インフラは、私たちがいま支払っている税金だけでは維持管理できないほどの規模になっているということです。

問題にすべきは、130年も更新にかかることだけでなく、なぜ、インフラ整備と費用負担について、私たちは知らずに今日まで来てしまったのかということでしょう。

「便利」や「快適」にはコストがかかるということです。
私たちがしなければならないのは、いったいいくらでどの程度の水質や水供給の安全(防災・耐震など)を必要とするかということでしょう。
この部分の住民との合意形成もなく、民営化し、行政と事業者だけで決めてよいのかということだと思います。

そのうえ、水道料金に法人税・株主配当金をコストとして参入することを可能にしようとしています。にもかかわらず、行政から民間事業者に補助金を可能にしようとしています。
支払わなくてよい株主配当や法人税分水道料金負担が増えるだけでなく、その分を税金で補助するので、さらに税負担も大きくなります。

公で運営している事業には、原則税金がかかりません。
当然、水道も公が運営していれば、法人税もかかりませんし、株式会社ではありませんから、配当金も支払いません。

民営化すると、公には無い配当金や法人税、固定資産税などを支払わなければならず、その分利用料金負担が大きくなります。
民営化はこうした余計なコスト負担を負わなければなりません。

民営化は、自由競争の中でサービスが向上し、コストが下がるといわれてきました。

しかし、市場経済にゆだねればサービス向上とコスト削減が可能かといえば、必ずしもそうはなりません。
市場が寡占・独占されれば、価格競争は行われません。

地域独占事業に競争は生まれませんし、私たちはサービスを選択することもできません。
それが水となれば、選ばないこと=水を飲まず、水を使わないこともできないのです。

多くの公が担ってきた事業は、生きていくうえで欠かせない、経済競争に馴染まないものです。

これを営利企業にそのままゆだねても、営利企業は「もうける」ことができません。

だから、
配当や税金も料金に含める。
補助金をもらう。

といった「優遇」をしてもらわなければなりません。

行われるといわれている水道法改正は、ここを可能にしようとしているのではないでしょうか。

そのうえ、公の持っているノウハウさえ持っていないから、官民連携で、「私たち」のノウハウを得ようとしています。

そういえば、今年の4月から民間委託する大田区の可燃ごみ収集事業は、大田区が作る第三セクター大田区環境公社が担いますが、大田区議会第一回定例会で、大田区の職員の派遣を可能にする条例改正をしようとしています。

「なんだ。仕事のできない民間に、わざわざ職員派遣してまで任せるなら、民間委託する必要ないじゃない。」

そう思うのは私だけでしょうか。

ところが、いったん民間に行ってしまったノウハウは、民間のもので、再公営化しようとしても、ノウハウが失われてしまうことになるのではないかと心配です。
大田区の指定管理者のプロポーザルの内容は、情報公開すると黒塗りで出てきます。
大田区で行っていることは出すが、他自治体で行って得たノウハウは出さないといいますが、他自治体の議員が情報公開すれば出てくるものを大田区では出さないというのもおかしな話です。

民営化は私たちの財産だった公のノウハウを民間に切り売りしてきているといえないでしょうか。

民で安くなると思っているのは、公務員の賃金が民間に比べて高いからですが、仮にコストが下がるとするなら、配当や各種税金分に加え、さらに、賃金が下がるということになりますが、それでいいのでしょうか。

私は大田区の民営化や民間委託の事例を検証してきましたが、保育園では民営化や民間委託で経費が削減されているという結果は得られませんでした。
他自治体ですが、図書館では経費削減になったという事例もありますが、図書館司書の資格を持つ方たちが最低賃金に近い賃金で働いているといった問題も起きています。

しかも、民営化・民間委託がはじまってから、自治体の総予算が減った、あるいは、経費削減効果で住民サービスが向上し、自治体の社会保障が充実したといった話は聞いたことがありません。

それどころか、社会保障サービスは経費削減のターゲットとなり、減らされるばかりで、予算は、土木、建設、そして、物、加えてイベントに投入されるばかりです。

本国会で提案されるといわれている水道法改正案。

政治は、私たちの飲む水まで「誰かの商売のタネ」にするために法改正しようとしています。