進む株式会社への指定 大田区の指定管理者制度のいま 144施設の中の50の施設について 

第四回定例会は、翌年の3月期間終了を控えた指定管理者の指定が行われることが多い議会です。

2016年度第四回定例会でも、指定管理者指定議案9の議案が上程されました。

区営住宅は32団地を一つの議案、区民住宅は9団地を一つの議案、公園水泳場は3つの公園のプールを一つの議案で議決しました。
また、区営住宅32団地と区民住宅9団地は一つの事業者が指定されましたから、厳密に言えば、今回の9議案で、50の建物の管理運営を、10の事業者に管理運営させることの是非が問われたということです。

大田区の公の144の施設がすでに指定管理者制度を導入していますが、そのうちの1/3以上にあたる50施設の指定という非常に影響の大きい、重要な議案が上程されました。
議案はすべて可決されましたが、奈須りえは、指定管理者制度により区民の財産である公の施設の管理運営が必ずしも最良ではないと考え、反対しました。
既に報告している反対討論は以下のリンクで読むことができます。http://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/515aded26a692734fef298ab987a7803

以下が指定された事業者です。
第131号議案 大田区区民活動支援施設大森の指定管理者の指定
特定非営利活動法人おおもりコラボレーション
第132号議案 大田区洗足区民センターの指定管理者の指定
アクティオ株式会社
第133号議案 大田区総合体育館の指定管理者の指定
住友不動産エスフォルタ・NTTファシリティーズグループ
代表法人
住友不動産エスフォルタ株式会社
構成法人
株式会社NTTファシリティーズ
第134号議案 大田区産業プラザの指定管理者の指定
公益財団法人大田区産業振興協会
第135号議案 大田区大森南4丁目工場アパートの指定管理者の指定
野村不動産パートナーズ株式会社
第137号議案 大田区立はぎなか園の指定管理者の指定
社会福祉法人知恵の光会
第140号議案 大田区営住宅の指定管理者の指定 32団地
日本管財株式会社
第141号議案 大田区民住宅の指定管理者の指定  9団地
日本管財株式会社
第142号議案 大田区立公園水泳場の指定管理者の指定
平和島   株式会社オーエンス
萩中    株式会社協栄
東調布公園 フクシ・ハリマ水泳場管理JV
平成15年6月に行われた地方自治法改正で、区の施設の中の区民が利用する施設(公の施設と言いま
す=区役所や出張所など事務を行う以外の施設)の管理について民間の参入が可能になりました。

公の施設の管理運営は、それまでは自治体が2分の1以上出資する法人や社会福祉協議会などの団体にしか許されていませんでしたが、指定管理者制度の導入により、民間の事業者、NPO法人、ボランティア団体なども含めた多様な主体が公の施設運営にかかわれるようになりました。

今回指定された50の施設のうち、
NPOに指定されたのは、大田区区民活動支援施設大森ひとつだけ。社会福祉法人もはぎなか園だけ。
残りの48施設は、株式会社に指定されています。

今回、施設の在り方を検討するという理由で指定期間を3年にした大田区区民活動支援施設大森の指定がNPO。今年3月に指定された男女平等推進センターもNPOが指定され、期間が3年でその理由が「指定管理者制度に限定せず、区が率先して政策に関与することを前提に、より効率的・効果的である最適な運営手法を検討し、できる限り短い期間で結論を出すべく、3年とした」

当初、NPOも指定されていた図書館も、今はすべて株式会社になっています。

現在、株式会社以外で運営されているのは、
社会福祉法人が障害者施設、特養、高齢者センターなど福祉施設と
大田区と人的にも財政的にも密な関係にある、
公益財団法人大田区産業振興協会が、産業プラザの貸館部分
公益財団法人大田区文化振興協会が、アプリコ、文化の森、区民プラザ、
公益財団法人大田区体育協会が、大森スポーツセンター、大田スタジアム
などだけ。

かつては、区営住宅は東京都住宅供給公社、大田体育館の指定は体育協会でしたが、今は、指定からはずれ、それぞれ、株式会社が指定されています。大森スポーツセンター、大田スタジアムも大田区体育協会と株式会社のグループ指定となっています。
私は、東京都住宅供給公社のアスベストに対する意識や実際の施工に問題があったなど、必ずしも住宅供給公社や体育協会に戻せばよくなる、という立場にはありません。
しかし、株式会社という営利事業者が公の施設を管理運営させることの意味を認識したうえで、大田区が指定を行っているのか、といえば、そうではないところに大きな危機感を持っています。
営利企業だってすべてが悪いわけではない、といった一見もっともらしい論調は、営利目的の弊害を想定せず白紙委任につながる恐れがあり問題です。

すでに、営利活動を自主事業に制限しないため、大田総合体育館で区民の土日利用が制約されるなど、問題も起きています。

こうしたなか、大田区が期間を例外的に3年にしているのは、指定されている事業者のうちNPOという非営利団体で、それを効率的にしようと言っているのですから、今後の検討判断に注目したいと思います。

これまで、自治体が1/2以上を出資する法人に限っていたのは、自治体の統治(ガバナンス)がきくからではなかったでしょうか。

大田区で指定管理者制度を導入している施設一覧