大田区の公共の担い手である公務労働はどうあるべきか

地方公務員法、地方公営企業法等の改正に伴う条例改正案などについて、私たちの公共サービスを担う公務員はどうあるべきかという視点で発言し、議案には反対しました。

 

第20号議案大田区人事行政の運営等の状況の公表に関する条例(一部改正)
第21号議案一般職の任期付き職員の採用に関する条例(一部改正)
第22号議案職員の分限に関する条例(一部改正)
第23号議案公益的報尾人等への職員の派遣等に関する条例(一部改正)
第81号議案大田区職員定数条例の一部を改正する条例について反対の立場から討論いたします。

これらは、地方公務員法、地方公営企業法等の改正に伴い、規定を整理、整備するほか、これまで専門職に限っていた任期付き職員の採用可能枠を広げ不足する人材を一時的に確保するために活用できるよう規定を整備したり、旅費や休養制度などを廃止したりするための、条例改正などです。

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公務員と言えば、給料が良く、身分が安定しているというのが多くの区民、市民の理解だと思いますが、2012年の総務省の統計で比較すると、市区町村の正規公務員は約92万人、これに対し非正規公務員の人数は約40万人で、ここには任期6月未満や週勤務時間20時間未満の非正規公務員は含まれていませんから、実際はもっと多く、3人に1人は非正規公務員ではないかと言われています。

民間の雇用の流動化が問題になっていますが、総務省の労働力調査では、民間の労働市場で非正規従業員の割合が全雇用者の4人に1人になったのが1999年。3人に1人になるのが2006年で7年かかっているのに対し、公務員の非正規化状況をみると、市区町村では、2008年が4人に1人で、2012年が3人に1人で、4年しかかかっていません。

大田区においても、非正規職員以外にも、保育や給食などの現業職はじめ、あらゆる分野において、委託や民営化、指定管理者制度の導入、を行ってきており、昨今では、細かな事業ごとの事業者募集も頻繁に行われていて、それに伴い大田区、民間事業者問わず公務労働を様々な事業主体、雇用形態で担うようになっています。大田区の職員定数は2008年が4760人で2015年が4181人。2016年は4135人と職員を減らすことが一つの政治目的のようにさえなっています。

しかし、職員定数が減るからと言って、その分すべて仕事がなくなったり、効率化されたりするわけではありません。その分、非正規職員が増え、委託や民営化などで、株式会社の社員やパート、アルバイト、派遣会社の社員など誰かが代わりに仕事をしています。

公務労働が公務員だけでなく、非正規公務員や低賃金労働、不安定雇用の民間雇用に代わったということです。

それでは果たして、こうした急激な変化は大田区行政や財政にとって良い結果を残しているでしょうか。区民生活にいい影響を及ぼしているでしょうか。私はこの間の急激な変化に大きな危機感をもっています。

そこで、議案上程時に大田区で様々な形態の民間事業者労働者の活用が広がる中、大田区の公務労働についてどう考えるか質疑しました。

大田区は、それに対し、

全体の奉仕者として区民福祉の増進に全力を傾け、職務に専念し区長が目指す魅力的で住み続けたい町にむけて地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担っております。

と答弁し、民営化や民間委託はアウトソーシング指針に区の考えを示していると言っています。

この答弁には、公務労働は、誰がどう担うべきかという基本的な理念は見ず、民営化や民間委託への問題意識も全く感じられません。

アウトソーシング指針の「民間でできることは民間にゆだねるべき」は、一見、合理的で効率的な考え方ですが、

・同種のサービスを民間がしているか。

・民間が運営することで区民サービスの向上がはかれるか。

・民間が主体で採算性が確保できるか。

の3点で検証すれば、民間でダメなものなどほとんどないでしょう。

福祉は採算性のとれない分野で、だから措置で行政が担ってきましたが、補助金や保険などの仕組みが採算性の確保になり、保育や介護を株式会社にゆだねることを可能にしてきています。

このままいけば「利権分配」以外の全ての機能は民間にとってかわられるでしょう。肝心の政策立案機能も、民間の株式会社のシンクタンクにゆだねるようになっていますから、利権分配の方向性もすでに民間にゆだねているかもしれません。

公務員たたきをすれば、国民区民から喝さいを受ける状況はまだ続いています。

今回の条例改正も国の法改正に従ったものが多く、公務員を民間に合わせようというのが大きな流れです。

しかし、この風潮に流され、今のまま公務労働とは何かをしっかりと持たずアウトソーシング指針で民間に公の業務を切り売りすれば、行政サービスは、消費という経済活動にとってかわられます。そして、誰もが無料で、あるいは安く、公平に提供されていた公共サービスの原則が失われ、その提供主体であり、政策立案のかなめになってきた公務労働が形骸化するのは明らかです。

一方で任期付き採用の要件を緩和し、専門性を持たずに期間を限定した職員を採用することができるようにするとともに、職員を公益法人に派遣できるようにするなど矛盾も見られます。

観光こそ、民間のノウハウで行うべきものであり資金的にも人的にも行政だのみになるのは時代に逆行しています。

大田区がなすべき観光は、まちづくりなどで行うことですが、そこは放置れたままです。そこにこそ、人員配置すべきです。
いまこそ、基本に立ち返り、この間何が起きたのか検証するとともにあるべき公共とは何か、公務労働とは何かを考える時ではないでしょうか。国の新自由主義に無批判に従っている大田区の現状に警鐘をならし、反対といたします。