広域処理というスキームがなぜ出来たか【当初宮城県はゼネコン一括丸投げ方式を想定】

総量の大幅な見直しにもかかわらず、広域受け入れ希望自治体が未だ手を挙げている状況に違和感を感じている方も少なくないと思います。

一部に、二重取りといった表現も聞かれるようになりましたが、こんな背景を知っていると理解が深まるとともに、今後なすべきことは何かかが見えてくると思います。

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5月1日、2日に行った宮城県、岩手県、仙台市でのヒアリングは、広域処理の理解を深めるうえで、非常に意義深いものとなりました。

特に、宮城県でうかがった「なぜ広域処理になったか」という理由は、知事会見などから、ある程度想像できたものの、現在の日本が持つ、構造的な課題の象徴ともいえる問題であると感じました。

それは、当初、宮城県は、被災地から受託した災害廃棄物処理を「広域ではなく」「一括民間事業者発注」で行おうとしていたということでした。

それは、昨年8月12日の宮城県知事の会見からもわかります。

【平成23年8月12日宮城県知事会見】

がれき処理法案の成立について
◆Q
がれき処理の法案が成立した。今回も災害等廃棄物処理費が盛り込まれているが、非常に遅い対応だったように思う。市町村から国に委託できる法案が、今通ったことに関して、やはり遅いと思うか。

■村井知事
国も一生懸命汗を流してここまで持ってこられたと思っております。宮城県は、もう既に2次仮置き場以降は市町村から県が受託して事業をするということで話を進めておりまして、 業者の選定にもこれから入るという段階に参りましたので、ここでまた国に戻すということになりますと混乱が生じます。従って、宮城県の場合は今までのやり 方をそのまま進めていくということになろうかと思います。恐らく国が今回定めたものは福島県を想定されたものだと思います。

実際、宮城県は、7月25日に石巻ブロックの事業者募集 を始めており、広域処理を想定していなかったことがわかります。

2つのガレキ特措法が成立しているのはその後の8月12日と8月30日であることからもわかります。

http://www.env.go.jp/jishin/attach/law23_99a.pdf
災害廃棄物処理特措法(平成23年8月12日)

http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/law_h23-110b.pdf

放射性物質汚染対策特措法(平成23年8月30日)

http://www.asahi.com/politics/update/0812/TKY201108120170.html

このことが何を意味するかといえば、民間事業者は、宮城県が被災地から受託した瓦礫総量をプロポーザルしている可能性が高いということです。

宮城県の担当者も、ガレキ総量の見積もりまで含め、民間事業者に行わせ、その処理についてもプロポーザルで行わせようとした。

ところが、民間事業者が提案した再委託(廃棄物処理法の環境省政令:平成23年7月5日)により、可能になるはずだった、宮城県外での産廃事業者での処理について、産廃事業者の位置する自治体が「放射能の問題などから」受け入れを拒否してきた。

そのため、当初の、民間事業者提案による、「再委託」での処理が不可能になり、「広域処理」のスキームに変わった。

どこの自治体が受け入れを「拒否」したかは言えない。

ということでした。

仮に、民間事業者が、当初予定のとおり、宮城県受託分災害廃棄物総量を県に提案しているとするなら

当初事業者提案処理量          ⇒ 1089.1万t

再委託分が広域になった後の事業者処理分 ⇒ 785.7万t

ガレキ総量見直し後事業者処理分    ⇒ 591.7万t

へと、事業者が処理する量が、大幅に変化したことがみてとれます。

現在、宮城県では、処理予算の見直しが行われているということですから、この事業者処理量に伴う処理費用の減額をどのように「評価」するのかが、議論されていることと思います。

事業者にとっても、がれき量が減ったとしても、仮設焼却炉は建設してしまっていますし、1/2になったから1/2にしますという具合にならないでしょう。

だとするなら、尚のこと、輸送費のかかる広域処理はやめ、現地で処理することが、現地で受託した事業者にとっても最善の選択ではないでしょうか。

 

また、もう一方で、仮に、再委託ルートではダメで、広域処理ルートなら良しとした自治体があるとしたらその理由は一体何だったのでしょうか。
再委託での打診の有無は確認できていませんので分かりませんが、現在、産廃ルートで受け入れている大田区・江東区長に是非うかがってみたいものです。