当然のことですが、自治体と国の財政は密接にかかわっています。

しかし、自治体予算や決算の際に、国の財政状況をふまえた議論は行われません。

自治体では未だに、国が借金で公共サービスをに合っている状況であるにも関わらず、国の補助金をあてにした事業が平然と行われています。

平成23年度大田区決算の認定の際、私は次のような討論を行いました。
現在の、私の大田区財政の問題意識です。

*発言ののち、多くの職員からその通りだと言っていただきました。議員がこうした問題意識を持てずにいることが大変残念です。


*討論中消費税増税後の負担率増加分は3.8%ではなく3.7%の誤り。他数字も連動します。

大田・生活者ネットワークは、第82号議案 平成23年度大田区一般会計歳入歳出決算の認定に対し反対、第83号議案から第85号議案までの決算の認定に対し、賛成の立場から討論いたします。


議会における予算の審議は、「否決」という非常に重い判断を下すことが可能ですが、それに対し、議会は決算については、予算ほどの権限を持ちません。

首長(=区長)は、監査委員の意見のついた決算を議会にかければ、その時点で決算は成立するというのが地方自治法上の解釈で、仮に議会の半数が反対したとしても決算は有効に成立します。「認定」という言葉がそれを表しています。
しかし、例えば、昨今の大田区議会の予算が、その後の補正予算において、当初予算に盛り込むべき内容を加えるなど、必ずしも自治体財政の実態を反映していないように、公の財政を適正に判断すべきは「決算」です。

しかも、これまで、自治体財政を判断する際に、私たち地方議会は、たとえば、大田区なら大田区の財政状況だけをみて判断してきましたが、言うまでもな く、大田区の財政は国や都の歳入無しに成立しうるものではありません。国や東京都の財政について詳細に点検することは国会や都議会にゆだねるとしても、少 なくとも国や都との関係における大田区財政の位置づけを認識したうえで決算を認定すべきであると考えます。


昨年、私は大田区の経常収支比率が23区平均より著しく悪化したことから、その理由が大田区の説明する高齢化と生活保護世帯の増加だけでないことを明らかにした上で効果のあいまいな民間委託やシステム経費の増大、過剰な施設修繕費用などの問題を指摘しました。


これらの問題につきましては、経常収支比率など悪化傾向が止まらないなど依然として問題は改善されていません。


また、財政上の数値としては現れませんが、ここ何年かの統計等から、団塊世代の退職や景況を考えれば増えなければならない国民健康保険の加入者数が減って いることから、生活保護世帯や無保険者が増えているのではないかと言った予測や、国勢調査の結果から、単身世帯化が進んでいること、空家率が増えているこ と、大田区の職住接近の象徴ともいえる地域産業を支えている町工場などの製造業が衰退していまが、それに伴う商業者への影響も少なくないなど統計から読み 取る数値と決算数値を突き合わせた場合の施策の適否など、指摘したいことはつきません。


大田区は莫大な費用を投じ、各種統計を行っていますが、データをとるだけで、それを読み取り政策に活用するなど本来の目的では全く使われていません。


しかし、これらの視点での指摘は別の場に譲り、今年度の決算は、昨年とはまた異なった視点で指摘させていただきたいと思います。


国政においては、戦後、高度経済成長期を通じ構築されてきた政治システム(中央集権・政策軽視利権配分偏重・官僚と政治家による曖昧な責任体制における国 民不在意思決定など)が機能しなくなっているなか、政権交代が行われています。そのような背景でおきた3.11は、機能しなくなっている政治システムをさ らに露呈させる結果となり、多くの国民は改めて政治変革の必要性を実感しています。


しかし、何一つ変わらないまま、消費税増税法は成立し、ここままいけば、平成26年4月から8%、平成27年10月から10%と段階的に引き上げられることになります。


解散総選挙が行われにしてもしないにしても、私たちは戦後政治とそれに続く政権交代に対し新たな判断をしなければならない時をむかえています。


私は、戦後の日本を総括する意味でも、平成23年度決算は非常に重要なターニングポイントの決算であると認識しています。


特に今回、生活者ネットワークは、自治体における国民負担と政策評価という視点から決算の評価を行いました。

「国民負担率」という数字があります。
国民所得に対する税と社会保障の負担割合を意味します。

財務省の資料によれば、平成23年度の実績見込みで国民負担率は40.1%。この数字はアメリカより高いが、ヨーロッパよりは低い政府の言うところの中負担と言っていい位置づけです。


ところが現在の日本は、日本の公共サービスのかなりの部分を国債、つまり将来の世代への借金によってまかなっています。日本の財政は赤字部分を無視して語ることはできません。


その単年度赤字部分を、当年度の税で負担するならどのくらいに割合になるかを示しているのが「潜在的国民負担率」です。

これまで政府は、赤字国債まで含めたこの潜在的国民負担率を、経済活力を低下させるとして50%以内に収めることを目安としてきました。

ところが、平成21年度からこの「潜在的国民負担率」は50%を超え、特に平成23年度は震災のための復興債発行11.6兆円を含め総額97.8兆円の公債を発行したことから決算見込みで50%を大きく超える54.8%になっています。


平成23年度の審議にあたり、消費税が10%になった後の「潜在的国民負担率」がどの程度になるか財務省(主計局統計課)に問い合わせたところ、消費税増 税により赤字国債の発行額が減ることも考えられるが、このまま発行するという前提であれば消費税増税による国民負担率上昇分は3.8%であるという国会答 弁があることを教えていただきました。これをさきほどの平成23年度決算にあてはめると58.6%になります。


2009年のスウェーデンが63.9%ですからわずか5%程度の違いです。しかも、日本は、累積赤字は23年度見込みで664兆円(24年度予算では 709兆円)にもなりますが、国民負担率にはこれら公債の返済分は含まれていません。累積債務は利払いだけで約10兆円になっています。

既に発行している国債も私たちの借金ですから累積分の返済分も加味すれば、さらに潜在的国民負担率はあがります。


私たちは、これらの数字から何を学ぶべきでしょうか。北欧と同程度の負担になっていながら社会保障制度はどうなっているでしょうか。

高負担高福祉の北欧、低負担低福祉のアメリカ、それに対し日本は、中負担中福祉国家を目指そうというのがおおよそのこれまでの政府の説明でした。

しかし、このまま税の使い道を抜本的に転換しない限り、消費税増税となれば国民負担率は3.8%上昇し、私たちは北欧などの高負担国家と等しい、あるいはそれ以上の負担を背負うことになります。 


財務省は、MFは、政府債務が対GDP比で10%多いとGDP成長率を約0.2%押し下げ、政府債務増加が対GDP比で10%多いと、労働者当たり資本の伸率を約0.2-0.5%押し下げる傾向があるという指摘を引用しています。


つまり、借金があるとGDPは思ったように増えていかなくて、成長率の低下の主な要因は、政府の債務によるのだと分析しているのです。


ところが、増税法の附則第18条第2項に、「増税で生まれた余裕を防災や減災などに重点配分する」との一文が加えられたこともあり、さらなる景気対策のための公共事業と言った声も聞こえてきています。


これまで、私たち地方議会は、こうした国の財政の問題について、全くと言っていいほどに自らのこととして関与してきませんでした。


国は公共事業費を抑制してきていますが、地域自主戦略交付金などという名目での支出もみられ、公債比率を引き下げることによる財政健全化が優先順位として必ずしも高くないことがわかります。

国の財政悪化の第一義的な責任は、当然国にありますが、それでは、国の財政悪化に対して私たち地方議会は無関係と言えるでしょうか。

たとえば、第三回定例会の一般質問において、私は、大田区の施設整備計画が破たんしていると指摘しました。


大田区がたてた平成21年から30年までの10年の計画は、大田区の公共建物、道路、公園などすべての施設の適正な維持・更新のための計画ではなく、ちょ うど、区長在任期間にあたる10年間に1,996億円を建設土木工事に投入するという場当たり的な計画でしかなかったということです。しかも、財政の悪化 を理由に、それさえ計画通りできなくなっています。


先日、昨年1年間に補修した区道面積で試算すると区道全体を補修するのに約320年という数字を出しましたが、その後区道総面積で試算しなおしたところ約 530年という気の遠くなる数字がでてきました。大田区が行っている補修がバス道路などに限られていて生活道路は補修の対象にさえなっていないことがそれ を象徴しています。


また、建物整備について小中学校を例に指摘しました。

毎年2校ずつで75年以内に改築できるとした施設整備計画を、今年1校ずつに変えましたが、大田区は学校統廃合の検討をしていませんので、小中学校は87校ありますからこの計算でいくと160年経っても改築できていない学校が出てくることになります。

大田区は、私の指摘に対し、平成25年度1年間かけて施設整備計画を見直し平成26年度からは新たな計画で施設整備すると言っていますが実にのんびりした対応です。

まさか消費税増税分を当て込んでいるはずはないと思いますが、計画の開始年度が消費税増税8%導入と同じ時期なのが気になります。

大田区は、今年5月に未来プランを変更していますが、その時に行った作業はいったい何だったのでしょうか。


しかも、9月に出された「おおた未来プラン10年」に掲げる主な事業の進捗状況
は、そのほとんどが4か5で、「執行に遅れ変更があったが、時年度中に進捗の遅れを取り戻すことができる」は282事業中わずか8事業でした。

小中学校改築2校ずつが1校に変更になりましたが、評価は4「計画通りの進捗となっている」で、明らかに実態と異なります。


これに対し、大田区は。評価直前に計画を変更したので、変更後の計画で評価すれば4になると言いますが、計画通りに執行されなくなれば計画を変え、良い評価で区民に示すのであれば、計画も内部評価も必要ありません。

区民に対する背信行為と言っていいこの行為に対しては区長には猛省を求めたいと思います。


そもそも、大田区は、資産管理台帳があり、議会の指摘を受けるまでもなく、自ら施設の老朽化と更新の需要については知りうる立場にあるにもかかわらず、それを計画に反映できていません。


OTAシティマネジメントレポートによれば、大田区の施設老朽化比率は平成21年度44%から22年度には45.3%で、今年度末には、目安としている平 均の上限50%に届く計算です。「施設の老朽化による経費の増加が見込まれる」と書かれていることからも、大田区が施設全体の老朽化の程度を把握していた ことがわかります。


同じくシティーマネジメントレポートより加えて引用するなら、介護サービスなどの公営企業会計や国民健康保険事業など公営事業、清掃一組や競馬組合、臨海 斎場など一部事務組合や広域連合、土地開発公社、及び三セクである文化振興協会・産業振興協会・体育協会・蒲田開発など外郭団体も含めた連結決算により負 債が大きくなることも指摘されていて、これも大きな財政の圧迫要因です。


常日頃ごみ量に対して過剰設備投資になっていると指摘している清掃工場ですが、これもまた大田区財政の圧迫要因になるということを大田区自ら明らかにしたわけです。


老朽化比率は、単に資産総額を減価償却費用で割ったものにすぎず、そこに財政見通しを加味して初めて施設の適正な維持更新のための計画になります。

一旦立てた施設整備計画を変更するという非常に重い判断をしたにもかかわらず、計画変更の理由もあいまいです。財政 悪化が理由であれば財政悪化要因、施設整備計画だけを変更する理由および施設整備計画見直し方針を明確にしたうえで、今後の財政見通しをふまえた計画を策 定すべきです。


その際には、前提としての入札改革、施設の合築などによる複合化や多目的化、都市計画公園としてではなく空き地として整備するなどの取り組みが必要で、建て替えるたび仮施設を建設し壊すのでは税収がいくらあっても足りません。

ところが、現有インフラの適正な維持管理計画さえ財政見通しがたっていないにも関わらず、大田区は、空港跡地の整備 計画に着手し、蒲田・大森グランドデザインなど各種の公共インフラに関わる計画を策定しています。施設整備計画変更とこれら計画の整合性はどうつけるので しょうか。

第三回定例会において基金条例を可決した蒲蒲線の整備も同様です。

しかも、こうした事業は、大田区だけでできるものではなく、国や東京都の財政だのみです。


空港跡地の開発について、東京都を通じアジアヘッドクオーター特区に申請し国や東京都の支援を受けようとしていることもそれを示しています。


国についていえば、財政は赤字です。

確かに、東京都は不交付団体で、ふんだんな財源を持っているのかも知れません。


しかし、アジアヘッドクオーター特区の提案者が大田区以外大手デベロッパーであることからもわかるとおり、税金投入こそされないものの、固定資産税減免と利子優遇策による建設工事振興政策です。


財政調整制度により大田区にも影響がありますが、都と国の税金優遇策を上回る法人税等の税収の見込みはあるのでしょうか。


地方分権と言われていますが、蒲蒲線は合意がとれていないと言っていましたが、他の大田区発意の事業は、国・都の財政負担についての必要機関との合意形成がとれた上で着手している事業なのでしょうか。


厳密な発意がどこにあるのかはブラックボックスですが、大田区のように地方自治体が着手することにより結果として国の財政負担を求めることになる。これが、財政赤字を減らすことのできない要因の一つになっています。

自治体からの公共事業需要が国の財政負担を招くこの構図を断ち切ることが、いま、大田区に求められているのではないでしょうか。


国土交通省でさえ、国の財源の1/2がすでに建設国債・赤字国債が財源になっているにもかかわらず、平成21年度の交通白書において、2037年まで新た な公共インフラ整備していくのだといった切迫感の無いのんびりとした見通しを行っているのですから仕方のないことかもしれません。


しかしその後の震災による被災地の膨大なインフラ再構築需要を加味すれば、大田区における新たな公共事業着手は財政的側面から控えるべきです。

23区は、日本のなかでも最も豊かな財源のある地域です。現在の日本の政策は、東京、中でも23区に人・物・金を集中させ、東京都をけん引役として、日本を引っ張っていこうとするものだと私は理解しています。


ところがけん引役である、その23区のひとつ大田区においてでさえ、公共インフラの適正な維持管理計画をたてられず国だのみになっているにもかかわらず、国が言う投資が可能であるという根拠は、私の知見を大きく超えるものがあります。


大田区はよく、国の補助・交付を受けられる事業だからということを理由に議会に同意を求め様々な事業に着手しますが、区民から見れば同じ税金です。国が出せば、その分大田区の負担は減りますが、国が発行する赤字国債は、私たちの子どもの世代が負担します。


社会保障費の増大が少子化高齢化経済状況を背景に財政を圧迫していることは誰ものが認めるところですが、そこだけを財政圧迫要因としていたのでは財政の好転は望めません。

奇しくも昨日IMF・政界銀行年次総会が終了しました。13日に日銀白川総裁が「グローバル金融危機の教訓」として、自国経済の安定を確保することは、各 国が持続的な成長を達成するための必要条件ですと発言されています。私たちは、IMFの指摘する借金している中で行う公共事業=インフラの投資こそが財政 のブレーキとなっていることを直視し、グローバル金融危機に対処するための必要条件をまず確保しなければなりません。


日本の基幹産業が、実は、自動車でも、ITでもなく、この公共事業頼みの土木・建設業とみなされていることが、変革をはばんでいます。本来であれば、民営化・民間委託を期に、産業構造の転換を自治体公共事業から行うべきでした。

 

日本の中では財政的にまだ豊かな23区に住む私たちは、日本で一番すぐれた公共サービスを基盤にした物心ともに豊か な暮らしを確保されているでしょうか。地価が高く人が多いことを理由になんと多くの我慢を私たち区民はさせられていることでしょう。にも関わらず東京をけ ん引役にするという。このことばに矛盾はないのでしょうか。


待機児400名、労働人口減少・経済状況悪化に伴う就労支援・子育て支援は喫緊の課題ですが、4月に待機児は400人。生活者ネットワークが指摘している 保育年齢ごとの定員見直しと、予約制度、加えて認証保育所との差額補てん、および幼稚園の活用は現状におけるもっとも効果的で効率的な待機児対策ですが、 未だに大田区は着手できていません。結果として、ひとり親家庭などへの支援も滞り、生活保護予備軍は放置されたままです。


区営住宅需要1,000~1,500人。公営住宅法に基づく住宅政策も今後の老朽化により、さらなる負担を増大させるとともに救済できる区民の数は減って いくでしょう。民間住戸の空き家は増えますが、政策的な誘導がないため、民間住戸の障害者・高齢者に対応したバリアフリーや通報システムなど質の向上は望 めません。


人口が多く密集していることによる防災力の低下。生活環境の劣化。高い地価。孤世帯化による地域コミュニティーの分断と金銭によるサービス提供にしかたよれない地域。特養待機者1800人。

一見よさそうに見えるバラマキを続け、ばらまく資金をねん出するために、福祉費用が切り捨てられ、子育て支援策、高齢者政策、住宅政策、障がい者雇用など喫緊の課題が放置されれば、不公平がまん延し、生活保護は増え、その後の財政を悪化させるばかりです。

 

 税の機能は国税庁のHPにあるように、まず、私たちが健康で文化的な生活を送るため、国や地方公共団体による多くの公共サービスが存在していて、その公共サービスの費用をまかなうためにあります。


そして、その手段として経済対策があり、税の再配分があるはずです。

しかし、今や、税の機能は、お仕事を分配することになり下がり、そこに政策的位置づけは希薄です。


既に、日本の税の負担率は最初に申し上げた通り、債務・それも累積債務まで含めれば北欧にも引けを取らない「高負担」であることに間違いはありません。

税金の投入における判断は、単なるその事業の善し悪しではなく、全体を見通したうえでの優先順位にありますが、優先順位無き総花的なばらまき事業執行は常態化しています。


日本は今すぐに変わらなければなりませんが、そのためにまず変わらなければならないのは国ではなく、自治体です。


現在の大田区の状況は、大田区だけの責任ではなく、それを認めてきた議会の責任でもあります。

国民にいちばん身近な自治体である大田区が区民に現在の区政及び財政状況を示したうえで、政策選択の一つ一つを転換するための理解を得ていくという地道な作業の向こうにしか変革はあり得ません。

 そのためにいま区議会として行うべきは、この一般会計決算を認定せず、新たな発想での政策選択と予算編成であることを主張し、反対の討論とさせていただきます。