「議会改革◆大田区議会の、一部、しかも大会派優遇の議会運営について」

決算委員会の質疑の動画が大田区議会のHPにアップされました。

しかし、公開されているのは一部の審議で、「交渉会派」といわれる3人以上の会派だけ。
大田区議会の場合、自民党・公明党・共産党・民主党の動画しか公開されません。

 

http://www.city.ota.tokyo.jp/gikai/g_chuukei/h_24/24_kessan_chukei.html


【大田区議会において会派に所属するということ】

一人当たりの質問時間は基本的には平等ですが、「交渉会派」に所属している議員とそうでない議員とでは、議会内における「発言権」に大きな違いがあります。

私も、以前は、他の一人会派の議員と会派を組み、議会活動をしてきました。しかし、大田区議会では、会派の意見が一致しなければ、会派を組むべきでないと多くの議員が考えているため、会派を継続する事が困難になりました。
実際、議案における態度が分かれてはいけない=議案についての賛成、反対は会派内で統一すべき。という慣例で、現状も会派に属する議員は、会派の意見と自身の考えが例え異なったとしても「あわせる」あるいは「退席」することで、態度を統一してきています。

会派を構成することで、受けられる利便性と失うもの(発言の自由)を考えれば、議会活動=発言権を拘束される部分のマイナスが大きいと考え、現在は、生活者ネットワークの議員と2人の会派で議会活動しています。

【国政における会派の持つ意味と自治体における会派の位置づけ】

国政における会派は、その最大多数会派から内閣総理大臣をはじめ大臣が選任され、内閣が構成される議院内閣制を採用していますので、地方議会とは根本的にその仕組みが異なります。

地方政府における長は、議員からではなく、有権者から直接選挙によって選ばれているので、与党・野党という仕組みにはなっていません。
しかし、地方議会における議会運営は、ミニ国会と言ってもいい状況で、そのことが更に地方政治を硬直化させています。

【分権時代における地方自治体の役割と現状】

特に、社会変化が著しく、区民生活に大きな影響を及ぼすことがらが多くなっていて、それに対応した政策を速やかに講じなければならない時代に入っています。
国では変えられないことを、せめて住民生活に身近な自治体から代えることで国を動かすことこぞが住民自治・地方分権の本旨であったはずです。

しかし、会派に拘束されることは、国政に拘束される事とほとんど同じですから地方自治体からさえも変えることができなくなってしまうわけです。

しかも、大田区をはじめとしてほとんどの地方議会においては、今でしたら民主党が与党でそれ以外のほとんどが野党という構図ですが、政権交代前も後も、自民党・民主党・公明党は与党で共産党が野党と変わりありません。

結局、会派で意見を統一せよという意味は、区長に対して「与党」でいるか「野党」でいるかを決めてください。是々非々は困ります。ということに他ならないのではないかというのが、10年大田区議会で活動してきた私の実感です。

国政に反対する「野党」と反対しない(自治体政治・首長政策に賛成する)「与党」という、本質の議論が抜け落ちている中で、日本の自治体政治が行われているのだとするなら、非常に不幸な事です。


 

【大田区議会における会派所属の有無による相違】

例えば、次のようなことが大田区議会では行われていて、議会改革といいながら一向に改善されていません。

1.議会運営を審議し決定する「議会運営委員会」に所属できない

・大田区議会の場合(多分多くの議会も同様だと思われる)、議会運営委員会で
審議決定する前に、秘密会である「幹事長会」において、その方向性等を審議する。
ぜひはともかく、その「幹事長会」にも入れない。
・議会運営委員会は、議会においてどのように議論を深めていくのかを決める場です。
場合によっては、全員協議会を立ち上げ、重要事項について審議するといった事も
   可能です。現在、大田区議会で行っている(と言われている=審議に加わっていない
   ため分からない)議会改革の議論にも加わる事ができます。

2.各種審議会・協議会に入れない

・特に、都市計画委員会は都市計画法に議員が入る事が定められている
・私は、基本的な考えとして、各種審議会に議員が加わるべきではないと考えて
います。議員は議会において十分な審議をすべきです。
行政に方向付けられた審議会に入ってしまう事で、答申・あるいは報告を作成
した立場から肯定せざるを得ないと言うのも問題です。

 ・しかし、これら審議会等は、政策や計画に影響を与えうるわけで、これを現状は一部の
会派の議員だけに制限する事は、議員の発言権を侵害しています。
(そもそも、議会での発言と審議会での発言における採用の仕方が恣意的で、会議における
合意形成のルールがないことも問題です。)


3.本会議における代表質問。予算、決算委員会における総括質疑、締めくくり総括質疑を行う事ができない。
   ・代表質問は60分間行う事ができます。ところが、ひとり会派は、一回の議会で20分
    しか質問できません。そもそも、一議会答弁時間含め10分しか質問できないという
    時間配分に大きな問題がありますが、ひとり会派は、1年間の持ち時間40分をまとめ
    て使う事もできません。
   20分間で、現状を説明し、問題点を明らかにし、その解決策について提案した上で
    答弁をもらう。これに20分はかなり厳しいものがあります。
・区議会便りに掲載される場所もスペースも異なります。
一人・二人会派は、決算に対する態度を区議会便りに掲載することができません。
一部の会派だけ「広告・宣伝」の場を優遇しているのが現状で、税金の使いみちと
しても問題があります。

4.議長・副議長・委員長・副委員長・理事になることができない
・議会・委員会の流れを作ることができるのがこれらの役職者です。
   采配により、議会・委員会の議論は活発にもまた形式的にもなります。
担当部署の職員を呼ぶ、呼ばない。資料提供を求める・求めない。


例えば、過去に、大田区にある城南島のスラッジプラントに多摩部の下水汚泥
焼却灰を受け入れることになった際、議会に何ら説明も無く、区長が二つ返事で
了承したことがありました。
私も議会で指摘したところ、その後、東京都下水道局の職員が、突然、私も所属する
大田区の都市・環境委員会に説明にきました。

大田区議会としての対外的な意思表明・要請もまた議長以下、役職者には重要な
役割です。

   *上記委員会所属委員や役職者の多くが、報酬を得てその職についています。

http://www.city.ota.tokyo.jp/gikai/g_chuukei/h_24/24_kessan_chukei.html