新区長初の補正予算も国・都の補助金頼み 地方分権とは何だったのか 令和5年度一般会計補正予算(第1次)

選挙後初めての、新区長、新区議会議員での臨時議会が終わりました。

総額62億1,447万5千円という大規模な増額補正予算ですが、その巨額な補正予算の割には、明確に、区長の政策的予算と打ち出せなかった印象です。

というのも、国や都の補助金がらみの事業ばかりだからです。

新区長目玉のはずの給食費無償化さえ、地方創生交付金を使っています。

地方分権や消費税増税分は、こういう自治体独自の政策に使うものだと思うのですが、そこにまで、国の補助金を使っています。

地方分権の増収分は、蒲蒲線や公共施設建設や開発に使い、国の補助金を使っているわけです。

2007年に前区長が就任されたときに前区長はこうあいさつしました。

「歳入歳出とも6億1500万円余」「補正後の平成19年度一般会計予算は2153億2900万円余となり、前年度当初予算比4.8%増となりました。」と増額補正予算を大きくアピールしていたのです。

16年が経過し、10倍の補正予算を組み、対当初予算は、4.6%増から6.6%増と大幅な増額ですが、増加割合も出さず、どこが新区長の政策的予算かも曖昧です。

財政課に確認しましたが、あいまいにしてはぐらかされました。

特に、区長独自でもなくて、国・都の補正予算頼みだからではないでしょうか。

地方分権は進んだはずですが、国・都の補助金が多額に投入されている新区長初の補正予算は、本当に区民の望む使途になっているでしょうか。地方分権は、誰のため、何のために進んだのでしょう。

 

私は、こうした問題意識の元、以下の理由から、補正予算にたった一人でしたが、反対しています。

・国都の補助金頼み、企業会計的手法を用い、会計年度独立の原則から大きく逸脱して、区民の税負担に見合った住民福祉を提供できていないこと。

・対症療法となり、根本的な問題解決になっていないこと。

 

以下、

補正予算に反対した理由と補正予算の概要資料を掲載します。

補正予算の各項目についての説明は、後日します。

補正予算の概要資料

以下、討論の原稿です。

これをもとに発言いたしましたが、実際の討論とは一部異なります。

 

 

フェアな民主主義奈須りえです。

第28号議案令和5年度大田区一般会計補正予算(第一次)に反対の立場から討論いたします。

 

今回の補正予算は、総額62億1,447万5千円という大規模な増額補正予算ですが、
財源をみれば、一部使用料などがありますが、3/4の国・都支出金と1/4の財政調整基金で占めていて、国や都支出金に大きく依存しています。

今の大田区の財政的な問題が特徴的に表れている予算だと思います。

住民生活の質の向上を目指し、地方分権一括法が制定されて地方分権が始まり、大田区が自由に使える財源が大幅に増えました。

国の補助金など、ひも付き財源が批判されて始まった地方分権ですが、

今回、62億円の補正予算のほとんどが国や都の補助金を使った事業で、
大田区の独自の事業は、特別出張所管理運営費168万円と予備費2億3千万円の増額に留まります。


私は、規律無く、自由に大田区が財源を使うことを必ずしも良しとしませんが、

区民の税負担が(地方分権で)重くなりながら、批判された国や都の支出金が、分権以前より増えているわけです。

地方分権とはいったい何だったのでしょう。

区民の税負担が重くなった分、区民生活は悪くなったということではないでしょうか。
少なくとも、負担が大きくなった分、あるいはそれ以上に生活の質が向上したという実感を持てている方は多くないと思います。

大田区は、国や都の支出金を活用し区の財源を縮減したというかもしれません。

しかし、事業の多くが、対症療法に税金が使われるばかりで、根本的な問題の解決に取り組まない、考えようとしていないことも問題です。

こどもが家事を担わなければならない背景に親の就労や所得の問題があるにも関わらず、そこを不問にし、ヤングケアラーの調査が行われます。

病児病後児保育送迎事業は、現時点で働く方たちにとって便利で良いと思われるかもしれません。
一方、育児介護法は、病気・けがをした子の看護、予防接種・健康診断を受けさせるために、子供1人年5日、2人以上の場合年10日看護休暇を取得できる権利を担保していますが、制度はあっても取得しにくい状況です。

企業への働きかけや区民への周知など、看護休暇を取得しやすい状況を整備せず、支援が先んじれば、区民はますます看護休暇をとりにくくなり、雇う側の力が強くなるのが心配です。ワークライフバランスは、個人の努力で達成できるものではないと思います。

給与引き下げにつながる政策をやめずに、給食無償化や住民税非課税世帯への現金給付を行なっても、雇用側が、マクロで見ればその分給与や手当などを引き下げるかもしれませんし、物価が上がって帳消しになるかも知れません。

それが、市場経済です。

民営化を見直し、
民間給与の引き下げ合戦のような官民格差是正の考えの元の給与改定をあらため、
安い労働力として歯止めなき外国人労働者の受け入れなどに警鐘を鳴らし、
就学援助費の基準や生活保護基準を引きさげるべきです。


対症療法は、根本的な問題を先送りするため、問題は更に深刻化します。
根本的な問題の改善に取り組むべきです。


連合審査会で、大田区は、

財政健全化法により、世代間の公平性は保たれていると答弁しましたが、

夕張市の財政破綻を契機に浸透した財政健全化法は、今の世代の需要を将来にどれだけ先送りしているか、自治体財政の赤字について評価するしくみで、今の世代が負担し過ぎている問題を評価する法律や指標はありません。

自治財政は、会計年度独立の原則という大原則により、その世代が負担し過ぎることを抑止してきたからです。

ところが、現金主義会計を補完するものとして始まったはずの地方公会計のありかたは、
複式簿記の導入や財務書類の作成の促進など、

自治体財政を、利潤を追求する企業の論理に塗り替えたばかりでなく、

会計年度独立の原則と言う原則を見えにくくしています。

純資産と言う指標が、
・資産を増やし負債を減らして基金に貯め込み、
・公共施設、学校、新空港線及びまちづくりなどに使えるようにしています。

国が財政赤字で国債を発行し続けていることもあり、
多くの私たちは、自治体財政が厳しいものと思っていますが、

地方分権の三位一体改革と相次ぐ増税で、大田区は税金を将来のインフラ需要のために貯めているのが現実です。

住民福祉がその存立の根幹である行政に、利益を上げることが目的の企業会計の手法を取り入れるのは、そもそも理念が違うので、ふさわしくありません。

会計年度独立の原則という原点に立ち返るべきです。

大田区で行われている企業会計的手法が独り歩きし、人口減少、少子高齢化による税収減の肩代わりを今の世代にさせ、過剰なインフラへの税金投入を続けることに警鐘を鳴らし、反対といたします。

たった一人の会派=議員が、この補正予算に反対しました。
賛成討論は無し。

それなのに、大田区議会は一人会派に討論時間を5分しか与えません。

多数意見への十分な反論ができない状況を作っています。
これが、今の大田区議会の民主主義の残念な現実です。