2020年東京オリンピック開催に思う【3】~市が招致のオリンピックを都が開催する不思議と財源

市が招致するオリンピックを東京都が開催する不思議

札幌市、長野市、過去の開催地をみても、名古屋市、大阪市など招致の実績をみても、市が招致すべきオリンピックですが、なぜ東京都が開催しているのでしょうか。

これは、昭和18年まで東京都が、東京市だった名残りですが、これは、単に、昔市だったから忘れられずに、と言った単純なことではなく、今も、しくみの中に、しっかりと残っているから、手を挙げることができるのです。

その証拠に、オリンピック施設整備のために積み立てた4,000億円は、23区に入るべき財源から捻出されています。

東京都に東京市があると考えると良くわかる

東京都に23区があると考えるより、東京都には23区域をまとめる東京市があると考えると、さまざまな問題が整理できます。そして、このオリンピックも東京市が行っていることだと考えるとすっきりと説明できます。

23区は、特別区と言って、市や町や村と同等の権限を持つ自治体と言われていますが、横浜市や川崎市のような、内部団体に近いと思います。
区長と区議会議員を選挙で選んでいるため、見誤りますが、実態としては、東京都に深く依存した自治体です。

23区から東京都に明細なく流れる財源1兆円/年

たとえば、本来であれば、全て23区のお財布に入るはずの、固定資産税・法人住民税・特別土地保有税総額1兆6519億円の中から、東京都は、毎年、7405億円=1兆6,519億-9,114億もとってしまっています。

(下図参照:左、大きな円筒図の灰色で塗りつぶした下、白部分)

特別区財政調整交付金算定の仕組み

 ↑特別区長会HPより http://www.tokyo23city-kuchokai.jp/seido/gaiyo_7.html

名目は、大都市事務。

23区域は、首都、大都市だから、一体的な事務管理が必要。各区でやるより、東京都がまとめてやった方が良いものができる。というのがその理屈。(他に、23区間の財源のデコボコを調整するという別の役割がありますが、それは別の機会に)

ところが、このオリンピック事業も、大都市事務の中に入っています。

23区のお財布に入るはずなのに、東京都にとられる財源は、これに都市計画税を加えると年間1兆円近くにも及びます。

そもそも、23区固有の財源を東京都と分配する割合45%は、明細もありません。
明確な根拠の無く、23区から東京都には1兆円と言う財源が流れているのです。

都心部に集中する財源とアバウトな使われ方

どれだけ、この都市部には、財源が集中しているか、いかに、その使い道がアバウトかということです。

その証拠に、オリンピック基金は、長期的に平準化されて積み立てられたものではなく、平成18年~平成21年の4年間という短期間に、毎年1,000億円も積み立ててためたものです。

1年間に1,000億円積み立てても大都市事務には、なんら支障もなく、積み立て終わったからと言って、新たに大きな課題に取り組んだという話も聞きません。

だから、東京都は、思いつきのように都市博を行おうとしたり、築地市場移転を土壌汚染による処理費用がいくらかかろうともものともせず進めたり、莫大な費用をかけて東京オリンピック招致活動がきる、ということはないでしょうか。

生活課題を解決すべき23区から東京都に1兆円が流れることの意味
~放置される生活課題~

今、23区では、高齢化や景況の悪化など社会構造の変化に伴い、保育や高齢福祉の需要が増えています。

23区の税金の使い方は、必ずしもほめられたものではありません。しかし、保育園や特別養護老人ホームの待機者が、日本で一番財政が豊かな都心部23区が一番深刻な問題となっているのは、必ずしもその理由と説明されている地価が高いからばかりでは無いと思っています。
地価が高ければ、その分固定資産税の税収が多いからです。
ところが、地価か高くて集まる固定資産税も、その半分は東京都のお財布に入ります。
持っていかれた23区は、財政が日本で一番豊かなのに、保育園も特別養護老人ホームも待機者が一番多いということになっているわけです。

そして、東京都は、23区から生み出された財源を使い、オリンピック費用にするわけです。

東京都は、オリンピック基金を苦もなく4,000億積み立てられる一方で、23区は保育園や特別養護老人ホームに困っています。23区民の我慢の上に成り立っているのが2,020年東京オリンピックとは言えないでしょうか。

しかも、オリンピックにかける費用は、23区からの4,000億円だけではすみません。
その他の周辺インフラの整備は民間資金を活用しますが、出来上がれば、運営費として分割で支払っていくことになります。

もちろん、4,000億円で作ったインフラは、ただでそこにあるだけではなく、作ったそばから維持管理費が発生します。オリンピックが終わっても、長期的に維持管理し、そして、何年かすれば、建て替え費用も考えなければなりません。

これらの費用も、今後、23区から集められる、固定資産税や・法人住民税・特別土地保有税から東京都が持っていく45%で支払うというのでしょうか。


都心部一極集中の意味と国民生活・都民生活への還元

東京一極集中のにより生み出される税収は、地方の格差の上に成り立っているという見方もできますが、地方が放置されるのみならず、都市部の住民にも還元されること無く、流れていきます。

日本の経済のけん引役と言われる東京は、今や、経済のけん引役になることがその目的となり、経済効果の指標としてGDPやそれに類する数値が先行します。

しかし、景気が良くなれば雇用が確保されるのか。確保された雇用による収入が期待できるのか。税収は増えるのか。増えた税収は国民生活に還元されるのか。

そうした議論や検証の無い経済政策がとられています。そして、この東京オリンピックもまた同様です。

ご参考 ttp://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/2653a0e6e12520f159a6ce4062139420