2009年から2020年までで年間費用負担2.2倍になった公共施設建設費、大田区公共施設整備計画は誰のためか

議会質問原稿です。

短い時間の中、かなり政策的な内容に踏み込みましたので、
分かりにくいかもしれません。

区政報告会やメルマガ、このサイトでも、少しづつ、説明していこうと思います。

tまずは、質問原稿をアップします。

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フェアな民主主義 奈須りえです。

老朽化した公共施設整備が大田区の大きな課題の一つになっています。

2009年の大田区公共施設整備計画に始まり、2015年大田区公共施設白書、

2016年大田区公共施設適正配置方針、

2017年大田区公共施設等マネジメント今後の取り組み

現在の2022年大田区公共施設等総合管理計画など、いずれも大田区の公共施設の老朽化の時期が集中しているので、財政負担の平準化や効率的な改築などが課題だと書かれています。
 ところが、2008年に542施設120万平米だった延べ床面積は、2014年に573施設124万平米、2016年には569施設123万平米、2021年には646施設127万平米と、

13年で、施設数104、延べ床面積は7万平米も増えました。

計画当初から少子高齢化や生産年齢人口が減ると予想し、規模の適正化や公共施設の有効活用が指摘されてきましたが7万平米も増えています。
 2016年の適正配置方針では1割程度削減という目標が掲げられましたが、それ以降も、ほぼ横ばいで減っていません。

年間経費の実績値は2009年から2013年までの5年間の平均で年61億円。それが、2016年には年平均で95億円に増え、2021年の過去10年の実績の平均は、年120億円になっていますから計画を策定し当初から、約10年で2倍近く増えたことになります。

投資的経費は211億円から272億円で約1.3倍。

2009年の歳入決算が2311億円で、2021年が3098億円ですから、歳入規模で787億円、1.3倍増えましたが、歳入の伸び以上に公共施設建設費が増えたことがわかります。

計画を策定し、効率的な施設改築になって、建築費の増加を抑制できたかと思ったら、2倍に増えていて大変に驚きました。

将来経費を抑制するために、複合化、多機能化、統合などの手法がとられていますが、複合化すれば、一時に複数の建設を集中させることになりますから、建築経費はさらに増えます。35人学級、ユニバーサルデザイン化、環境負荷低減などで建築コストが嵩むうえに、さらに複合化したから経費が増えてきたのは、過去の実績からも明らかだと思います。

大田区が複合化に取り組み始めたのが2013年。

しかも、公共施設面積の127万平米のうち4万平米は賃借です。大田区が出した公共施設の改築費に加え、私たちは賃料も負担しているということです。区は、例えばラズ大森や羽田ぴお、旧羽田旭町開発など、区の土地を長期で貸し出し、そこに事業者が建設した施設の一部を区が借りる手法が増えています。いずれも、地代は、周辺の地代より安い、営利使用を許しながら公共目的並みの地代で貸し付けているなど問題があります。大田区は、地代が入るから損はしていないというかもしれませんが、事業者が営利目的で使い、区民が使えない区有地が増えているということです。

大田区は民営化=アウトソーシングを進めているのに、執務の場所が本庁舎だけでは足りず、教育総務部はアロマを借りているうえ、教科書展示会は本庁内に場所を確保することもできません。委託等費用に、家賃がどう算定されるかなど、今後、民営化における適正な公共財産使用の在り方も整理すべきです。

しかも、賃料は、経常経費で投資的経費ではありません。127万平米のうちの2%4万平米は、投資的経費から経常経費に変わっているということです。

見えにくくなっているのは賃借だけではありません。120万平米だった延べ床面積は、2014年に124万平米に増えたあと、2016年に123万平米と1万平米減ってから127万平米に増えています。

このころ、特養と高齢者在宅サービスセンターが民営化していて、1万6千㎡延べ床面積から減っています。民営化すると公共施設ではなくなるので面積が減るのです。

民営化すると延べ床面積からは除外されますが、施設の改築などに関わる私たちの税や利用料負担が0になるわけではないということです。

昨年4月に大田区は、27の私立民営化園の建物を売却する方針を出しました。相手方もあることですから、必ずしも売却が成立するかはわかりませんが、保育園が民間事業者に売却されると、大田区の公共施設面積は減ることになります。大田区が方針に書いているように、区のメリットは、事業者が国・東京都等から施設整備に関わる補助を受け更新するので、区が改築や長寿命化した場合と比較すると、区の財政負担が少なくなります。区有施設を改築する時に、投資的経費として計上していた費用は、補助金として民間事業者に支給されると福祉費として計上されることになります。大田区は、区の福祉費割合が大きいと言いますが、金額や割合が大きいからと言って区民サービスが充実しているとは言えません。建物の改築費を補助金で支給すると福祉費や教育費に計上されるからです。

賃借や民営化は、費目を見えにくくするだけでなく、これまで区が入札で区内業者に発注していた工事が、民間事業者が発注する工事に変わります。税金を使う工事でありながら、議会が決められなくなるということでもあります。

施設の形態が変われば、お金の流れや決め方が変わり私たちに及ぼす影響は少なくありません。

そこでうかがいます

1.大田区は、区が建設している公共施設費だけでなく、賃借により区民が負担している賃料を示すことができますか。また、特養や保育園など民営化で建物の所有が民間事業者になった施設や今後の方針で所有権を民間にしようとしている施設の、改築などのために区が財政負担する負担をいくらと見込んでいるか示すことができますか。

  およそで良いので、面積や財政負担についてお示しください。

大田区は、直近の公共施設改築費の実績を過去10年の平均なら120億円のところ、計算式を操作し、135億円と多額に計算していておどろきました。何故かと思って良く読んだら、2060年までの経費見込みが、実績値内に収まると書いてありました。実績値より見込みが大幅に増える計画にしたくなかったのかも知れません。

問題は、総合管理計画で大田区が、人口2%減や生産年齢人口8%減、人口ビジョンで付加価値4%減と=企業利益の予測から税収が減ることを予測できるのに、実績値が減らないどころか、120億円から135億円に13%も増える計画を作って、区民サービスは大丈夫か、財源はどうするかということです。

そのうえ、賃借物件も増え、賃料がかかるうえ、民営化で、総面積が減っても、大田区の財務書類から除かれるだけで、施設の改築費負担が0になるわけではなく、補助金や公定価格などで負担したり、国や都が負担することになります。大田区の財務書類から除かれるだけです。民営化の影響など公共施設整備計画に表れている年間負担額では見えないを区民負担の増減が見えないのです。

総務省はじめ、国に聞いたところ、たとえ、国が掲げ推奨している公共施設等総合管理計画等だとしても、技術的助言ですからやるやらないは自治体が決めることで、国の強制ではないそうです。大田区が、区民生活に及ぶ影響を考えて判断しなければならないということです。

そこでうかがいます。

大田区は、区民の収入や仕事、人口や年齢構成、税負担や社会保障サービスの現状と将来の推移を考えて、住民サービスや生活の質を落とすことなく、公共施設整備計画を策定・執行していますか。

2015年の計画から増えた年間当たりの公共施設整備費や、計画からは見えない賃料・民営化に伴う補助金などで建て替えることになる費用などは、どこから捻出するのですか。基金がなくなるまで続けるのですか。

公共施設を借りたり、民営化すると問題なのが、入札でなくなることです。区所有の建物であれば、入札により区内業者を中心に等しく受注の機会が与えられますが、民間の建物になってしまうと、補助金で税金が投入されても入札ではなく、建物所有者が事業者を選びます。

池上駅ビル内の図書館内装工事は、5億円を超えていましたから、テナントである大田区が工事を発注すれば入札が必要でしたが、駅ビル事業者が建築業者を決めました。

大田区が公共施設を所有しないということは、税金を使って行う工事でも、入札しないということです。

しかも区が所有すれば、固定資産税はかかりませんが、借りると民間が支払う固定資産税も事業者利益も賃料で大田区が負担することになります。借りるということは、公金投入において競争性が働かないだけでなく、買うより高くつく可能性が高いということです。

公有財産の改築等の手法はPFI、賃借、民営化など多様になり、これまでと同じ目で財政を分析しても、実態を把握することが難しくなっています。

 また、公共施設等活用方針には、活用しない土地は貸し、売り、お金を稼ぎなさいと書かれていますが、自治体は営利企業ではありません。
しかも、土地は区民の財産で、投資用資産ではありません。自治体には固定資産税がかかりませんから、今は使わなくても、長期的に保有し、社会の変化に合わせ、必要な時に使い、使わない時なら、持ち続けるというのも一つの選択だと思います。

少しでも稼ぎ、稼げないなら売却、貸し出し、足しにするというのは、まるで、短期で投資利益を回収する企業のようです。そこに長期に大田区に住み続ける区民は不在です。

この間私は、基金が1267億円も余って貯まっている問題に取り組んでいますが、世代間の公平性に関わる答えがすっきりできなくて、おかしいと思ってきました。

今回、シティマネジメントレポートをあらためて読んで、その理由がわかりました。自治体財政に複式簿記や発生主義会計などが取り入れられるようになり、公会計が守ってきた世代間の負担の公平性や会計年度独立の原則や単年度主義と言った考えが、薄れていったのです。

シティマネジメントレポートには、区債の機能として

1.「財源の年度間調整」公共施設建設など大規模な建設事業の経費を単年度の一般財源で賄うことには限界があります。区債を活用して資金を調達し、後年度にその償還を行っていくというかたちで財政負担を平準化することで、計画的な財政運営が可能となります。

2.「世代間の負担均衡」

学校などの施設は、現在の世代だけでなく将来の世代にも利用されるものです。そのような施設の建設費用建設時の税収等で全額を負担すると、特定の世代(建設時の世代)に大きな負担が偏り、世代間において不公平が生じます。区債を活用して後年度にその償還を順次行っていくことで、世代間の負担の公平性を担保することができます。

とあり、区債を適切に活用することは、財政運営上大変重要なものと書かれています。

これが、財政健全化法に基づき、将来に負担を先送りすることをマイナス評価とする指標が入ったことで、変わってしまったのです。

営利を目的としない行政が、営利企業が採用している企業会計を導入したことで、コストを減らし、基金と言う資産を貯めるようになったとみると説明がつくのではないでしょうか。貯めるほど税金を徴収したこと自体問題ですが、貯めた資産を誰のために使うか、総合計画は誰のためなのかと言う問題意識です。

羽田空港跡地は、土地開発公社を使い区が買い戻すのがこれまでの在り方でしたが、基金で一括購入し得います。

資産を貯め込み、貯め込んだ資産を、公民連携デスクやサウンディング調査で区が事業者と相談しながら、事業者の利益のために使うしくみが目に付くようになりました。区民は税金を払いお金を消費し施設を使うだけの存在でしょうか。
新空港線の都区の費用負担割合が決まると、区長あいさつで真っ先に取り組むと言ったのは新空港線のまちづくりですが、大田区はまちづくりの中で開発事業者、デヴェロッパーが投資利益をあげると言っています。基本構想の議決を急いだのも、10か年計画をつくり、新空港線着工前に鉄道まちづくり構想の具体的な事業を急ぐからでしょう。そこに基金が使われていきますが、区民と丁寧に合意形成しようという姿勢は見えません。

企業会計でわかり易く説明できるはずが、財政分析は複雑になり、公共施設総合計画は、区民からさらにみえにくくなっています。そこでうかがいます。公共施設総合管理計画は、誰のための計画になっていますか。