賃金上昇分のための7,162万円は現場で働く方に支払われたか 大田区のスライド条項の課題

大田区議会第一回臨時会で、新馬込橋架替工事に関わり約7162万4,300円の増額の専決処分の報告があがりました。根拠は人件費等が上がった際それを補償するスライド条項です。

人件費上昇のために支払われた7,162万円は、現場で働く方たちに支払われているでしょうか。

専決処分の報告であがった7,162万円ですが、報告はすればよく、議会として賛否を問えないため、下記の通り、報告の上程時に質疑しました。

この質疑により、支払われた7,162万円が、現場で働く方たちに支払われたかどうかを確認するしくみの無いことがわかりました。

大田区は、現場で働く方や事業者に確実に支払われるしくみを作るべきです。

*ちなみに、以下のような分析もあります。

大手ゼネコン(上位24社)の決算見通しは、合計で増収増益、前年度より売上高で4.4%増、営業利益で32.3%増です。
民間工事は選別受注、公共工事は設計変更と設計労務単価引き上げでコスト上昇をカバー。公共・民間共、粗利益率を大幅上昇させ、純利益は2,224億円、前年度より14.2%増です。
私たちの賃金にはそのまま反映せず、株主配当金と内部留保に回されています。

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今回の臨時会で、「新馬込橋架替工事請負契約の専決処分の報告」があがりました。

大田区は「大田区議会の議決に付すべき契約、財産又は公の施設に関する条例」において、必要があると認めたときは、区長はこれを専決処分することができるとしています。

専決処分と言うのは、条例により、区長が議決によらず決められる処分を言います。

大田区議会では、一定額以上の工事や不動産の売買について議決を求めていますが、それらの5%以内の変更について、区長の専決処分を認めています。

議会が区長に専決処分を認めているのは、5%以内の変更なら何でもよいというのではなく、議会と区長との信頼関係が前提にあり、その区長が認める5%以内の契約変更なら適正に執行されているに相違ないからというのがその趣旨です。

今回の専決処分は、新馬込橋架け替え工事における賃金等の上昇に対応するため全体スライド条項、インフレスライド条項を適用したことにより発生した差額7,162万4,300円の支払いです。

国土交通省建設産業局長が平成26年1月に出している「技能労働者への適切な賃金水準の確保について」という文書があります。

ここで、技能労働者に関る適切な賃金水準の確保や社会保険加入の徹底が課題でありながら、下請け取引等実態調査によると賃金を引き上げた企業は36.6%にとどまるなど技能労働者の処遇改善に課題のあることが記されています。

今回の支払いの根拠となる新たな単価での積算は、大田区が国土交通省の示した通りに行ったことはうかがいましたが、国土交通省も指摘する通り、現場で働く方たちの賃金や社会保険加入のために使われているかどうかが課題です。

社会保険庁の社会保険加入の点検が厳しくなっており、上昇分が支払わなければ下請けなど中小企業が負担せざるを得ず、倒産につながる可能性も大きくなっています。

そこでうかがいます。現場で働く方たちや事業者などに上昇した賃金や資材費用が支払われたことを区民が確認することはできるしくみになっているか確認させていただきます。

【答弁】
確認できるしくみはない。