特区民泊、民泊新法、旅館業法の適用除外地域となったら、守ることができない安心安全

大田区は、特区民泊を、大田区が条例で規制して環境を守ってきた良い民泊と位置づけ、国が新たに作ったAirbnb(エアービアンドビー)を規制するための法律=民泊新法による民泊のままでは環境を守れないとして、条例案を提出しました。

しかし、特区民泊も民泊新法も、これまで規制してきた旅館業法を守らず、お金をとって宿泊させることを可能にするしくみです。環境を守ってきた規制を緩和しながら、実効力のない規制をかけて環境を守ることはできません。

法令を遵守すべき行政が、実行力のない規制をあたかも環境が守れるかのように区民に説明していることは、行政としてあってはならないことだと考え、条例には反対しました。

✖第79号議案 大田区住宅宿泊事業法施行条例
✖第80号議案 大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例の一部を改正する条例
に反対の立場から討論いたします。
そもそも、民泊は、二つの問題がほぼ同時に起きています。
一つが旅館業法の規制緩和で、
一つが、空き家を仲介したホテル事業です。
旅館業法の規制緩和は、特区民泊と呼ばれる事業になり、
空き家を仲介するホテル事業は、民泊新法による民泊です。
これまで、お金を受け取ってホテル業を行う場合には、人のいるフロントの設置やゴミ出しなどの衛生基準、宿泊施設の面積など厳しい規制をかけ、宿泊者の安全や衛生と住環境を守ってきました。
ところが、大田区が国家戦略特区の民泊事業を始めるころに前後して、民泊についてある種のイメージを植え付けるような報道やテレビドラマなどが増えてきます。
大田区は、大きなトラブルは発生していないと言っています。確かに、人命にかかわるような事件や事故が起きているわけではありませんが、大田区において、民泊にかかわる苦情はものすごい勢いで増えています。
旅館業法の規制緩和による特区民泊も、
空き家を仲介した新たなホテル事業を認めた民泊新法も、
これまで、法が規制してきたホテル旅館の規制を守らなくても、お金をとって宿泊業を合法に営めるようにしています。
このことによって、厳しい規制を守って営業してきたホテルや旅館と同じ地域に、規制を守らなくてもよいホテルや旅館が日常的に営業している状況を作ってしまいました。
今回、民泊新法に基づく条例案も、ホテルや旅館並みの安全基準衛生基準を守らなくても、住宅専用地域以外なら行えるようにしているのです。
大田区は、特区民泊は、大田区が条例で厳しい安全規制をかけているといった論調で、特区民泊をいいものと広報宣伝していますが、そもそも旅館業法の規制をとりはずし、ガイドラインでとりはずした規制のほんの一部をガイドラインで保管しているだけですから実効力には限界があります。
にもかかわらず、民泊新法に基づく民泊に条例で特区民泊程度の規制をかけても、かけないよりは、良いものの、区民の期待する実行力は得られません。
それでも、行政の努力を評価すべきかもしれませんが、大田区の場合、区長自らが国家戦略特区と特区民泊に手を上げ、ホテル並みに規制を守らない宿泊業を積極的に進めています。
そもそもあった、安全・衛生基準を区長自らが取り払うよう国に求めて、大田区を旅館業法の無法地帯にして区民生活を乱しておきながら、特区民泊なみの安心安全と言うのは、制度を知らないのでしょうか。それとも知っているのに、責任逃れをしているのでしょうか。
いずれにしても、法令を遵守する執行機関の長である区長自らが、法令の縛りを外してほしいと国にいって秩序をなくしながら、その責任を自覚せず、無秩序状態を他人ごとにしているのでは、大田区の住環境はよくなりません。
安全や安心は規制でしか守ることができません。
いったん、旅館業法の適用除外地域となってしまった大田区が、安全安心を守れると誇ったところで、限界がありますし国が法改正してしまえば、大田区の条例やガイドラインにも限界があります。
特区民泊は、まだお試しで、全国一律の制度になっていません。言ってみれば、現在は、法の下の平等という点で、大田区民は環境や安全で不利益を被っており大きな問題があります。特区である大田区は国に憲法95条の規定に基づき住民投票せよというべきではないかというべきではないでしょうか。
全国一律に旅館業法が改正される前に、大田区は、特区の所管である内閣府に対して、特区民泊が招いている区民生活への課題について、指摘すべきであることを申し添え反対といたします。