介護保険改正に伴う報酬単価引き下げによる大田区介護保険特別会計減額補正予算の課題

平成27年度大田区介護保険特別会計補正予算(第一次)において、国の介護保険改正に伴う報酬単価引き下げによる減額補正予算が計上されました。

報酬単価引き下げは、事業者にとって死活問題ですが、大田区は、事業者に対し、配置基準緩和で対応せよといっているようです。
配置基準緩和は、現場職員の努力頼み、しかも、ケアの質低下を招くことにつながり問題があります。

結果として、小規模の事業者の経営に、事業の存続にもかかわる大きな影響を与える改定になっています。

【道筋の見えない大田区の地域包括ケアシステム】

報酬単価引き下げとともに、地域包括ケアシステムをどう構築するのかが、今回の改正の重要なポイントですが、大田区は一年先送りしたものの、どうなるのかの道筋は現在のところ全くない状況です。

【事業者の大規模化へ誘導の流れ】

いま、この介護や医療をはじめ、全ての分野において、小規模事業者の集約による事業者の大規模化、事業者の淘汰が政策的に始まっています。

事業規模の拡大は、経営の効率化につながる「良いこと」であるというのがその背景に有るのかもしれませんが、果たして、「大規模事業者によるケアなど公共サービスの提供」と「質の高いサービス」とはイコールでしょうか。

【大規模化は地域経済から見て好ましいか】

地域の社会保障の担い手としての小規模社会福祉法人やNPO、地域密着型小規模事業者をなくし、大資本による社会保障サービス提供の一本化、あるいは限りなく一本化に近い状況に向かって進むことが、公共サービスの在り方として好ましいと言えるでしょうか。

いま、社会全体がグローバル化に進んでいく中、私たちは、これまで以上に、地域内循環経済について真剣に考えるときに来ていると考えます。

地域内の小規模社会福祉法人やNPO、地域密着型小規模事業者に利用料金や介護保険報酬など公金が投入されることは、雇用や消費により、より地域以内で経済が循環することを意味します。

これが、大規模事業者による経営に変われば、仮に雇用や消費が地域内であったとしても、投資利益として、地域からおカネが流出し、場合によっては、それが、国内にとどまることなく、海外へ移転することになります。

【小規模事業者と大規模事業者の不公平】

介護保険従事者の処遇が低いことが課題になっているにも関わらず、更なる処遇の低下を招く改定は問題ですが、それに伴う影響に対し、区が小規模事業者に対する方針や方策さえ講じていないところに大きな危機感を持っており賛成しかねます。

しかも、処遇改善のための補助金を申請する際に、小規模事業者は多大な負担をしなければなりません。

一方で、先日報告の有った新馬込橋架け替え工事に際したスライド条項に基づく増額では、大田区が事業者のために計算しその根拠書類を作ってあげて7000万円を超える支払いをしながら、現場で働く方たちにそれが支払われたかどうかの確認していないにもかかわらず、処遇改善費用を申請する介護保険事業者にはキャリアパス計画を提出させるなど多大な負担をおねがいしているこの不公平な現状の違いに疑問を禁じえません。

中小企業のまち大田区として、小規模事業者が地域経済に与える効果を明確に位置付けるとともに、公平な対応が必要であり、たくさんの課題を抱えています。