大田区民住宅条例の一部を改正する条例に反対した理由
33号 大田区民住宅条例の一部を改正する条例
可決
ネット:反対
ネット ×反対
自民 ○賛成
公明 ○賛成
共産 ○賛成
民主 ○賛成
みんなの党 ○賛成
無所属の会 ○賛成
緑の党 ○賛成
たちあがれ日本 ○賛成
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この条例は、区民住宅・大田区立プラムハイツ北糀谷の空き室一戸を、家庭的保育事業を行う施設として活用するにあたり、区民住宅としての用途を廃止するために改正するものです。
■特に対策が望まれる低年齢児待機児対策■
大田区において、待機児解消は急務の課題です。その中でも、年齢別待機児童数をみると、待機児のうち、0歳児と1歳児がほとんどを占めていて、低年齢児の待機児対策が特に急がれることがわかります。
■家庭的保育事業のグループ化とは■
家庭的保育事業は、その名の通り、家庭的な環境の中で、子どもが過ごせるというメリットがあります。
しかし、子育ての経験などを活かし、家庭保育事業に協力したいと願う区民の数は少なくないものの、現実に自宅を提供し保育を行うことが可能な区民を確保することは必ずしも容易でなく、なかなかその数が増えていないのが現状です。
こうした課題を解決できる家庭的保育事業のグループ化は、そのメリットと課題を解決できる、試みであり、結果として、子育て経験などを活かした女性の潜在能力が雇用につながるなど評価できるものです。
また、今回の大田区の公共施設の空き室の有効活用もまた、公有財産の有効活用と言う視点から大いに期待できる施策であるととらえています。
しかし、今回の条例改正により行おうとしているプラムハイツ北糀谷の家庭保育事業のグループ化には、次のような問題があり、賛成しかねます。
■北糀谷家庭的保育事業のグループ化の問題■
区民住宅空き室活用が適当か
まず第一に問題なのが、区民住宅の空き住戸を活用している問題です。はたして、区民住宅の空き住戸活用が適当でしょうか。
確 かに区民住宅は、賃料が相場とかい離してきたため、空き住戸が増えていますが、それでは、区民の公営住宅へのニーズが全くないのかといえばそうではありま せん。借り手側は、少しでも賃料を安い住宅を求めているので、賃料を下げれば、借り手がつくことが予想されます。これは、先日の、都市環境委員会において 「区民住宅賃料を下げる」報告がなされていることからもわかります。生活保護受給世帯が増加していますが、日本の福祉政策の最大の課題は住宅政策であると 言っても過言ではありません。収入に占める住居費の高さが、生活を圧迫し、可処分所得を引き下げています。
子育て支援策が急務の課題であることに変わりはありませんが、住宅政策は住宅政策として取り組むべきで、子育て支援策に優先して取り組むべきかどうかの判断は行われたのでしょうか。
区安全性は確保されているのか
もうひとつの大きな問題が安全性の確保です。
=二方向の避難経路に課題=
グループ保育室は、大田区で2か所目になります。また、この設置の後には古川子どもの家でもグループ保育室が計画されています。グループ保育室は、先ほども申し上げましたように家庭的な保育がその魅力の一つですが、一方で課題になるのが、安全性の確保です。
1か所目の池雪小学校に隣接するグループ保育室や古川子どもの家で予定されているグループ保育室と今回の保育室との違いが、二方向の避難経路確保 の問題です。保育ママは、家庭での保育という原則の中で行っている保育のため、厳密に二方向避難経路確保を求めていませんが、グループ保育室は、保育者が 誰も住んでいない場所で、複数の保育者が保育をする状況になります。特に今回の区民住宅は中階段のメゾネット式で、上階部分は階段を使用するか、ベランダ からでないと外に出られない間取りになっています。
=指導する立場にある大田区が認可基準を守らなくてもよいのか=
大田区は、指定保育室や無認可保育所に対して、認証保育所になるよう指導している立場にあります。それは、何よりも、子どもの環境を整えることをその主眼においているからです。そして、その環境のひとつに、災害時における安全性があることはいうまでもありません。
一方で、事業者に対して安全性を指導していながら、みずからは、家庭的保育事業は二方向避難経路は求められていないので、確保する必要が無いと言う姿勢が、大田区として許されるでしょうか。
=消防に確認せず大丈夫なのか=
しかも、大田区は、それさえ、消防に確認していないため、果たしてグループ保育を前提とした部屋の使用が安全上認められるのか、疑問が残ります。
過去に相談を受けた無認可保育所の中には、二階部分の安全性に問題があるため。消防の許可がおりず、1階部分のみで保育を行っていた事業者もありました。
3つめは、区民住宅の中でも、なぜこの場所だけなのかという問題です。空き住戸は、他の地域にも存在し、大田区はそれらの地域においても、低年齢児の待機者を数多く抱えています。
■課題の残る区民住宅での家庭的保育事業■
他地域や他の公共施設は確認したのか。
大田区は公有財産有効活用の観点から、他の施設についても検討したと言いますが、検討結果として報告を受けたのは職員住宅のみでした。他の施設は、なぜ検討していないのでしょうか。しかも、検討した仲池上と西馬込の教職員住宅は1020㎡と1059㎡の職員住宅を廃止して現在、使用していない状況にあります。地域別に報告を受けた待機児童数は、今回の糀谷・羽田が37名になのに対し、調布地域では87名、大森地域では93名にものぼります。
区 は、糀谷地域において低年齢児の待機児が著しく増えていることや、この地域において施設設置されていないことを以て、北糀谷を選定したと説明しています が、議会を表面的に納得させるのではなく、そこまで分析しているのであれば、その根拠である詳細な出張所別、或いは、学校区別待機児童数を示し、説明する べきです。
旧教職員住宅などの未活用の公有財産を活用せず、区民住宅を廃止する理由の説明がつきません。
一方で、今回の条例は、この区民住宅1戸を、区民住宅の設置条例の中から、はずし、グループ保育室という公共用目的で活用します。
法的根拠が適当か
この場合、地方自治法上、次のような問題が生じるのではないでしょうか。
地方自治法は、第238条 において、公用、または公共用に供し、又は供することを決定した財産を行政財産としていますので、今回グループ保育室となった施設は公共用財産に相当しま す。特に今回の場合には、住宅施策のために使われていた区民住宅を廃止してまで取り組む事業ですから当然に公共目的であり行政財産と言えるでしょう。
同じく地方自治法第244条2第1項は「普通地方公共団体は、法律またはこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない」としています。
こうしたことを考えれば、今回の住戸は区民住宅条例からは外れますが、公共用目的で活用されることは明らかであり、新たに施設設置条例を設置することが必要ではないでしょうか。
一方で、同じく地方自治法はその第237条第2項で、普通地方公共団体の財産は、条例または議会の議決による場合でなければ、適正な対価なくしてこれを貸し付けてはならないと定めています。
大田区は、グルー保育室に関する規定を「大田区グループ保育室設置運営要綱」で定めています。
建物使用料及び光熱水費を無償として貸し付けるものとしていて、運営費補助でないことを考えても、また、施設設置・運営に係る規定を設けていることからしても、要綱ではなく、条例により設置すべきではないでしょうか。
要 綱では複数の家庭福祉員と大田区が個々に建物賃貸借契約を締結し、使用料及び光熱水費を無償とする一方で、施設利用を希望する家庭福祉員が区長の承認を受 けるなど大田区と家庭福祉員との関係性が契約関係なのか行政処分に基づくのか不明確なうえに、区立施設なのか違うのか位置づけもあいまいです。また、何ら かの問題が生じた場合に、どこまでが大田区でどこからが家庭福祉員なのか事業主体や責任範囲などについて曖昧です。
いずれにしても、見切り発信といった感は否めず、政策的選択においても、また、安全性確保の点からも、そして、法的位置づけにおいても整理されておらず到底賛成することはできません。
同時に区民住宅賃料が引き下げになるが、見直しが一部だけで良いのか
また、今回の空き室活用に伴い、大田区は、区民住宅条例12条の規定により区民住宅条例施行規則に示されている区民住宅の賃料の引き下げを行うと都市環境委員会に報告しています。
ところが、都市環境委員会では賃料引き下げを報告されたのは、全ての区民住宅ではなく一部の区民住宅だけでした。
契 約書の中には、物価の変動などに伴い、賃料を変更することができるとされています。区民住宅は、ほぼ同時期に建てられ賃料設定されていますので、経済状況 の影響による家賃の下落は、全ての区民住宅においておきているはずであり、一部住戸だけ家賃を引き下げるのは問題です。
区民住宅条例に伴う規則の変更は、議決事項ではないため賛否を表明することができませんが、賃料引き下げを行うのであれば、等しく、不動産鑑定結果に基づき全ての区民住宅の賃料を見直すべきであることも申し添えておきます。
以上の理由で反対いたします。