水道民営化 大阪市がひっそりパブコメ中。 その3◆水道事業は投資対象か

大阪市が水道事業を民営化するためのパブリックコメントを募集している。 (5月30日まで)

水道事業は、多くの課題を抱えている。大阪市だけの問題ではなく、全国の水道事業が抱える問題でもある。

課題を表面化させてこなかった(=見えなくしてきた)行政や、チェックできなかった議会の責任は大きいが、それを容認してしまった住民にも責任が無いとは言えない。

だから、課題解決の方策として提示されている民営化が課題解決になるかどうか、今度こそ、きちんと検証しなければならない。

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その2で水道事業の現状について記した。
大阪市が民営化にあたり、分析している現状だが、全国の水道事業の現状でもある。

以下、1~7は大阪市の現状分析。

1.高齢化や人口減少で、⽔需要(収⼊源)が減る需要増が見込めない。
2.需要に対し、施設規模が過剰になっている。事業エリアが市域に限定されるため、成⻑が⾒込めない。
3.水道管が古くなっているし耐震化しなければならない から、更新に多額の費用が必要 *自治体財政状況から債権を発行できない?)
4.人が多くて生産性・効率性が低い
5.これまで施設を借金で作ってきたので企業債残高が多い
6.国内水道事業は市町村単位で規模が小さいと技術者が不⾜等で、事業を持続することが難しい。

7.海外では、新興国を中心に水インフラの整備に関する需要が増大(市場規模87兆円)(*水ビジネス

現状の課題と言えるのは青字の部分だろう。
この現状分析をみて気になるのは、赤字の部分だ

水事業は、公営企業で、独立採算制を求められ、原則、企業会計を採用しているが「企業」では無い。
「企業」では無いというのは、つまり、「営利でない=儲けなくてよい」ということだ。

ところが、「公」である大阪市が出した現状分析は、まるで、株式会社の経営分析のようだ

人口が減り、生産拠点は海外に出て国内産業は空洞化し、節水型機器が普及し、水需要は少なくなるのに、水道事業で需要増を見込んだり、成長を見込むことが求められていると誰が決めたのだろうか。

しかも、さらりと耐震化しなければならないと書き込まれているが、震度2や3の地震で配管が切れてしまうのは問題だが、それでは、どの程度の強度がこの「耐震化」なのかわからない。
東日本大震災以降、防災とか耐震化と言えば否定できない空気を醸し出していて、予算を通すときの大義名分になってきている感が有る。どの程度の防災や耐震 化なのか、税金を支払う側が真剣に考えないと、地震で壊れないインフラは残ったものの、子どもを安心して産み育て、健康で(医療)文化的な(教育)生活を 営み安心して年をとる(介護)こともおぼつかないなどということになりかねない。

本来、水道事業で解決しなければならない青字部分だけでなく、まるで水道事業が企業の投資対象になっているかのような、赤字の課題をいつの間にか誰かが加えて、それを解決しようとしているのが、水道事業の民営化ではないだろうか。

【公共施設にアセットマネジメント=投資という概念】

アセットマネジメントという言葉が、公共施設の管理に使われるようになってきている。
最初に使われたのが2003年ころ。小泉構造改革のころだ。
「道路構造物の今後の管理・更新等の在り方提言」

これは水道にも表れている。
「水道事業におけるアセット・マネジメント(資産管理)に関する手引きについて」

アセットマネジメント

資産管理(Asset Management)の方法。道路管理においては、橋梁、トンネル、舗装等を道路資産ととらえ、その損傷・劣化等を将来にわたり把握することにより、最も費用対効果の高い維持管理を行うための方法。

公共施設を投資対象と見ているとは言えないか。
この概念は、北川正恭元三重県知事のHP「公共事業におけるアセットマネジメント」 が分かりやすく説明している。

つまり、公共事業における投資決定に始まり、これらの投資の配分と執行管理をより優れたものとするために、エンジニアリング、財務、経済及び実務の最適遂行手法を組み合わせることと言えます。

「水道行政の最近の動向について」(厚生労働省)p5には、「水道施設の試算を、これまでの投資額の蓄積として評価すると約40兆円以上(平成17年度末)」 と書かれている。

リーマンショックで金融規制が厳しくなり、投資対象を探す投資家たちにとって、格好の投資対象ということか。

水道事業民営化は、課題解決のための民営化の是非に加え、投資の対象という文脈を踏まえたうえで、私たちのライフラインである水事業の今後を考えたい。

パブリックコメントは5月30日まで

水道事業民営化基本方針(案)」(水道料金の見直し案を含む)について

*なかなか本題の民営化案の評価までたどり着けず、すみません。