まちづくり条例による葬祭場等設置の規制はここまでできる!~練馬区の事例から~

12月21日の活動報告で、大田区が「まちづくり条例」を改正するにも関わらず、目的があいまいで、住民が望む改正になっていないこと。

大田区は、現在の建築基準法では、規制するまちづくり条例改正はできないと説明したが、先進自治体では行っていることなどを報告しました。

報告を読んだ、まちづくりの専門家より、「練馬区のまちづくり条例」 が良い事例だからとアドバイスをいただきましたので、ご紹介します。

*ちなみに練馬区のまちづくり条例は23区の中でも優れた先進的取り組みの施された条例です。

たとえば、先日大田区では陳情において継続審議となっている「土地取引の事前届け出」について、練馬区では、同趣旨の住民の要望をかなえる形で、契約締結後ではありますが、14日以内と義務付け、住民との協議の機会を広げています。

それでも、練馬区民は、満足しておらず、さらなる改正を求めているそうです。

==========================================

条文を読んでも、わかりにくいと思いますので、条文を例示しながら、黒の太字で何をしようとしているのか説明します。


【1】特殊用途の建物を定義づけ、届け出を義務化しています。

・この建物をどう定義づけるかが重要になりますが、ここで葬祭場や遺体安置所を定義づけることで何に対する規制かを明確化します。
・そして、届け出あったとき、事業者に対し、説明会の開催方法や説明が必要な住民の範囲について、63条において規定していますが、さらに区長が「助言」「指導」することができるようにしています。この「助言」にくわえ「指導」とい表現により、一歩踏み込んだ区の権限をいれています。
・また、届け出た内容は、大田区の多くの事例のように、1枚10円をかけて、情報公開請求し、14日以内という時間をかけて入手が可能になるのではなく、いつでも閲覧できるようになっています。

(特定用途建築物に係る届出等)
第61条 第51条第1項の規定による届出を行った事業者のうち、開発区域においてつぎの各号のいずれかに該当する建築等をしようとするものは、当該建築等を行う前に、規則で定めるところにより区長に届け出なければならない。
(1) 集客施設(深夜営業集客施設を除く。)の用に供する部分(駐車場の用に供する部分を除く。)の床面積の合計が500平方メートル以上1,000平方メートル未満の建築物の建築
(2) 葬祭場の用に供する部分(駐車場の用に供する部分を除く。)の床面積の合計が1,000平方メートル未満の建築物の建築
(3) ワンルーム住戸が20戸以上の集合住宅(以下「ワンルーム形式の集合住宅」という。)の建築
(4) 既存建築物のその用途が、集客施設であって、当該施設の用に供する部分の床面積の合計が第1号に定める床面積の合計未満の集客施設(深夜営業集客 施設を除く。)にあっては、その増築により既存の建築物に新たに建築するその用に供する部分の床面積の合計を加えた建築物の床面積の合計が第1号に定める 床面積の合計以上となる建築物の建築
(5) 既存建築物の用途を変更しようとする場合において、当該建築物が第1号または第2号に定める集客施設または葬祭場に該当することとなる場合は、当 該施設の用途を変更する行為。ただし、当該既存建築物が集客施設であって、当該集客施設を規則で定める類似の用途に変更するときは、この限りでない。
2 区長は、前項の規定による届出があったときは、事業者に対して、説明会の開催方法、説明が必要な近隣住民の範囲等必要な助言または指導を行うことができる。
3 区長は、第1項の規定による届出の概要を記載した台帳を整備し、閲覧に供するものとする。
4 事業者は、第1項の規定による届出後に事業計画を廃止するときは、遅滞なく区長に届け出なければならない。

【2】紛争予防のためのお知らせ看板設置や説明会開催しくみについても「期限」「範囲」「住民の権利」が明確です。

・大田区と同様説明会開催等となっていて一部個別説明も認めていますが、住民からの求めがあれば説明しなければならないと定めています。
・また、単に説明すればよいだけでなく、住民、事業者双方に対し、合意が図れるよう努力義務を課しています。

(特定用途建築物に係る標識の設置等)
第62条 事業者は、前条第1項の規定による届出を行ったときは、少なくともつぎの各号に掲げる日のうち最も早い日から第68条第2項の規定による協議終 了の通知が当該事業者に到達する日までの間、当該開発区域内の見やすい場所に、規則で定めるところにより標識を設置しなければならない。
(1) 練馬区中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例第5条第1項の規定による標識の設置の30日前
(2) 東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例第5条第1項の規定による標識の設置の30日前
(3) 建築基準法第6条第1項の規定による確認の申請または同法第6条の2第1項の規定による確認を受けるための書類の提出の60日前
(4) 建築等の工事の着手または当該施設の設置の60日前
(5) 練馬区中規模小売店舗の立地調整に関する条例第4条第1項に規定する新設に該当する集客施設については、同条例第6条第1項の規定による説明会の開催の前
2 事業者は、前項の規定により標識を設置したときは、当該標識を設置した日から起算して5日以内に、区長に届け出なければならない。

(特定用途建築物に係る説明会の開催等)
第63条 事業者(第61条第1項第3号に規定する建築をしようとする事業者に限る。)は、前条第1項の規定により標識を設置した日から起算して15日以 内に、開発区域の境界線からの水平距離で当該建築物の高さの2倍の範囲の近隣住民に対して、説明会の開催等必要な措置を講じ、規則で定めるところにより当 該建築等の計画および工事について説明しなければならない。
2 事業者(第61条第1項第1号、第4号および第5号に規定する建築等(葬祭場に用途を変更する場合を除く。)をしようとする事業者に限る。)は、前条 第1項の規定により標識を設置した日の翌日から起算して7日以内に、つぎに定める範囲の近隣住民から説明を求められたときは、説明会の開催等必要な措置を 講じ、規則で定めるところにより当該建築等の計画および工事について説明しなければならない。
(1) 開発区域の境界線からの水平距離で100メートルの範囲内に第1種低層住居専用地域が存する場合 当該開発区域の境界線からの水平距離で100メートルの範囲
(2) 開発区域の境界線からの水平距離で100メートルの範囲内に第1種低層住居専用地域が存しない場合 当該開発区域の境界線からの水平距離で当該建築物の高さの2倍の範囲
3 事業者(第61条第1項第2号に規定する建築および同項第5号に規定する用途の変更(葬祭場に用途を変更する場合に限る。)をしようとする事業者に限 る。)は、前条第1項の規定により標識を設置した日から起算して15日以内に、前項各号で定める範囲の近隣住民に対し、説明会の開催等必要な措置を講じ、 規則で定めるところにより当該建築等の計画および工事について説明しなければならない。
4 前項の規定による説明を近隣住民への個別説明により行った場合において、当該近隣住民から前条第1項の規定により標識を設置した日から起算して15日以内に求めがあったときは、事業者は説明会を開催しなければならない。
5 事業者は、前各項の規定により説明会を開催するときは、当該説明会の開催の日の7日前までに、規則で定めるところにより区長および近隣住民に通知しなければならない。
6 事業者は、第1項から第4項までの規定により説明を行ったときは、当該説明の内容について、第1項または第2項各号で定める範囲の近隣住民と協議を行い、当該近隣住民の合意を得るように誠意をもって対応するとともに、当該近隣住民は、事業者の立場を尊重し、相互に合意が図れるよう努めなければならない。


【3】しかも、区との協議や住民への説明について、書面により区長への申請を義務付けていて、その協議事項も明確です。

(特定用途建築物に係る協議等)
第64条 事業者は、第62条第1項の規定により標識を設置した日の翌日から起算して7日を経過した後、または前条第1項から第4項までの規定により説明 を行ったときは、同条第6項の協議を行った後、つぎに定める事項を記載した書面により区長に申請し、建築等について協議しなければならない。
(1) 近隣住民への説明に関する事項
(2) 事業計画案の概要に関する事項
(3) 地域環境に関する事項
(4) 緑化計画に関する事項
(5) その他区長が必要と認める事項
2 区長は、前項の規定により協議の申請があったときは、当該申請の日から起算して3日以内に申請の概要を公表しなければならない。

【4】住民・事業者双方の意見交換の明文化

・住民は、当該建物の建築等についての意見書を公に事業者に提出できるようになっていて、その写しを区長に送付するので、区長も住民の意見を「公に」知ることになります。
・また、受け取った区長は、第64条第1項に規定するまちづくりの計画ならびに第11節および第12節に規定する基準等に照らし、区の意見を事業者に書面で提示し守っていなければ「指導」します。
 さらに、この意見に対して、事業者は、見解書を提出することを義務付けていて、ただ言ったとか受け取ったという形式的なものではなく、住民、事業者双方が、責任ある立場で、公式にやり取りをするしくみになっています。

(特定用途建築物の建築等に係る意見書の提出)
第65条 近隣住民は、前条第2項の規定による公表の日から起算して7日以内に、申請の概要について意見書を事業者に提出することができる。
2 近隣住民は、前項の場合において、意見書の写しを区長に送付するものとする

(特定用途建築物の建築等に係る協議における指導)
第66条 区長は、第64条第2項の規定による公表の日から起算して10日以内に、事業者に対して第64条第1項に規定するまちづくりの計画ならびに第11節および第12節に規定する基準等に照らし、必要に応じて建築等に係る区の意見を当該事業者に書面で提示するものとする。

(特定用途建築物の建築等に係る意見書に対する見解書等)
第67条 事業者は、第65条第1項の規定による意見書の提出および前条の規定による区の意見の提示があったときは、これらの意見について、見解書を近隣住民および区長にそれぞれ提出しなければならない。
2 事業者は、前項の規定により近隣住民に見解書を提出したときは、その写しを区長に送付するものとする。
3 区長は、第1項の区の意見に対する見解書および前項の近隣住民に対する見解書の写しを公表するものとする。


【5】協定締結と公表の義務化

・区と事業者の協定書締結を義務付けるとともにこれを公表することも義務付けています。

(特定用途建築物の建築等に係る協定の締結等)
第68条 区長および事業者は、第64条第1項の規定による協議が整ったときは、当該協議の内容を記載した書面を作成し、協定を締結しなければならない。ただし、規則で定める場合については、この限りでない。
2 区長は、第64条第1項の規定による協議が終了したときは、協議終了通知書を作成し、事業者に通知するとともに、これを公表しなければならない。
3 事業者は、建築基準法、練馬区中高層建築物等の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例、東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例その他開発事業に関する法令または条例に基づく申請、届出等を行う前に協議終了通知書の交付を受けなければならない。


【6】申請後から協議終了までの間に計画変更がある場合に、区長への届け出を義務付けています。

(特定用途建築物の事業計画変更の申請等)
第69条 事業者は、第64条第1項の規定による申請後から前条第2項の規定による協議終了の通知を受けるまでの間に、事業計画を変更しようとするときは、遅滞なくその旨を区長に届け出なければならない。
2 事業者は、前条第2項の規定による協議終了の通知を受けた後に事業計画を変更しようとするときは、変更の内容等を記載した書面により区長に申請し、協議しなければならない。
3 区長は、前2項に規定する場合において、必要があると認めるときは、事業者に近隣住民に対する説明会の開催を命じることができる。ただし、規則で定める軽易な変更については、この限りでない。
4 区長および事業者は、第2項の規定による協議が整ったときは、当該協議の内容を記載した書面を作成し、協定を締結しなければならない。ただし、規則で定める場合については、この限りでない。
5 区長は、第2項の規定による協議が終了したときは、変更協議終了通知書を作成し、事業者に通知するとともに、これを公表しなければならない。